家に帰ると推しがいます。

11.初夜

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　ミナミに言い当てられた時から、数日前に時間は遡る。

　以前より距離が近くなった二人は、キスまでは進んだ。しかし、そこから先には進めていない。
　総司もイオも進みたいと言う気持ちはあったが、それが言い出せず、悶々とした日々を送っていた。



　総司は改札を抜けると、辺りをきょろきょろと見まわした。そして、すぐに目的の人物を見つける。人の波の中でも、一際総司の目を惹きつける相手はイオだ。バイト終わりのイオは白のTシャツとグレーのジョガーパンツというシンプルな服装だ。総司は仕事終わりでスーツ姿だ。

「イオくん」

　総司は愛おしい人の名前を呼ぶ。イオはぱっと表情を明るくした。

「遅くなってごめんね。待った？」
「全然、俺も今来たところです」

　イオがにこりと微笑むと、総司は仕事での疲れが一気に浄化された。それはイオも同じで、今朝以来に見る総司に、うっとりと見惚れていた。
　互いが互いに見惚れて、二人の周囲だけ、ぽやぽやという効果音がつきそうな、幸せな空気に包まれる。

「あっ、行こうか」

　我に返った総司は、イオを連れ、居酒屋へと向かう。基本的に食事はイオが作っているが、帰宅時間が近い時や、食事を作る時間がない時など、二人で飲みに行くことがあった。



　駅から歩くこと徒歩数分、居酒屋へと到着する。店内は混雑しており、騒がしい。二人はカウンターへと案内された。カウンターの中では店員が慌ただしく働いている。焼き鳥を売りにした居酒屋のため、炭火の煙があがり、いい匂いが漂う。
　ビールで乾杯をした後、焼き鳥に舌鼓を打っていた総司だが、ふと気づく。

「あれ？あんまり食べてない？」

　いつもよりイオの食事のペースが遅く、食べる量が少ない。イオは細身な見た目に反して、よく食べるのだ。

「もしかして体調悪かった？」

　イオは総司の質問に曖昧に頷く。その反応に、総司はイオの顔を覗きこんだ。イオの表情は、少し緊張しているが、その瞳は熱く潤んでいる。総司はそれを見て、背筋がぞくりとする。

「この後、このまま帰りますか………？」