家に帰ると推しがいます。

えつこ

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10.後日

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 その後、三人は楽しい時間を過ごした。酒が入ると陽気になる七海、そこまで変わらない総司、ふわふわするイオ。三者三様を呈し、時間はあっという間に過ぎ去った。
 会計は、総司と七海の割り勘となった。イオは支払いを申し出たが、トップオタ二人は断固として譲らなかった。

「今日は本当にありがとう」

 居酒屋の前で、七海は総司とイオにお礼を言った。酔った七海の頬は、うっすらとあからんでいる。

「イオくん、これ」

 おもむろに財布を取り出した七海は、財布に入っていたお札を、イオに突き出した。
 突然のことに驚いたイオだが、首を横に振る。総司にしろ七海にしろ、なぜオタクは金で解決しようとするのだろうと、イオは不思議に思った。

「困ります、七海さん」
「ほんの気持ちだから!」
「いりません!」

 七海がぐいぐいくるため、イオは総司に助けを求め、視線で縋る。

(わかる。イオくんにはお金を払いたくなる)

 総司は七海の行動に共感しかできなかったが、イオが困っている様子に、仲裁に入った。

「まぁまぁ、落ち着いてください、七海さん」
「じゃあ、ソウジくんに渡すから、イオくんのために使って」
「えぇ……?!」

 矛先が変わったことに、総司は戸惑う。
 その後、総司とイオは、どうにかこうにか七海を説得し、お札を財布に戻してもらった。

「イオくん、もしソウジくんに嫌なことされたり変なことされたら、遠慮なく殴りなさいね」

 七海はそう言うと、総司の背中をバシバシと叩いた。「痛いですって」と総司は顔を顰め、イオは苦笑した。

「ソウジくんは、イオくんのこと大事にしなさいよ。イオくんのこと泣かせたら、私が許さないから」

 七海はもう一度総司の背中をバシッと叩くと、「じゃあ」と軽く手を振って、先に帰って行った。残された総司とイオは、顔を見合わせる。

「帰ろうか」
「そうですね」

 七海という嵐を見送ってから、二人は帰路に着いた。




 総司の部屋に二人は帰ってきた。湿気を含んだ暑さに、総司は帰路の途中からスーツの上着を脱いでいた。すっかり汗ばんでしまい、早くシャワーを浴びたいと感じていた。

「お風呂入れるね」

 総司はそう言いながら、廊下を進む。しかし、背中にトンッと衝撃を受けた。振り返ると、イオが総司の背中にくっついていた。

「イオくん?どうしたの?大丈夫?気持ち悪い?」

 唐突なイオの行動に、総司は慌てる。酒に酔って気持ち悪いのかもしれないと心配になったが、振り返ってもイオの表情は見えない。

「七海さんと……」
「え?」
「七海さんと仲が良いから、ちょっと羨ましく思っちゃいました」

 背中から聞こえてきたイオの言葉に、総司は思わず頬が緩んだ。
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