家に帰ると推しがいます。

えつこ

文字の大きさ
上 下
51 / 71
9.再会

5

しおりを挟む


 総司の告白に、イオの目が大きく見開かれ、すぐに潤む。そして、イオはまばたきを一つした後、涙をこぼした。その涙の一粒が、総司の手に落ちる。

「え、わっ、イオくん?!」
 
 総司は慌ててイオの頬を流れる涙を手で拭う。しかし、涙はとめどなく流れる。

(涙を止めないと、ちゃんと言葉にしないと……)

 イオはそう思うが、涙は止まらない。頬に触れる総司の手に温かさに、余計に涙が零れる。
 しかし、総司はその涙を拒否からくるものだと思い、イオの頬と手に触れていた手を引く。

「ごめん、急に好きとか言われても困るよね」

 嫌われてしまったかもしれない、気持ち悪がられてしまったかもしれない。総司は自責の念に苛まれ、表情を暗くさせる。

「っ、違います…!そうじゃなくて!」

 イオは首を横に振り、離れていく総司の手に縋った。今度はイオの方から、総司の手を握る。イオの涙は止まっていた。

「俺も、俺も総司さんのことが好きです、好きなんです!」

 慌てるあまり、イオの声は力強く、部屋にイオの声が響いた。余韻が残るうちに、イオはかぁと頬を赤くした。

「あの、ごめんなさい。俺、必死になっちゃって……」
「え、いや、大丈夫。全然大丈夫だから……」

 総司はイオを宥めるが、二人の間に沈黙がおとずれる。互いに気持ちは同じだというのに、告白してしまったことで、気まずい雰囲気になってしまった。このままでは埒が明かないと、先に口を開いたのは総司だった。

「えっと、じゃあ、俺とイオくんは、両想いってことで、いいのかな……?」

 確認するような質問に、イオはゆっくりと頷く。頷いたことで、またイオの顔が熱くなる。そして、総司の手を握ったままだったことに気づき、慌てて手を離した。総司を目の前にして、イオの視線は泳ぐ。恥ずかしさと驚きあまり、総司を直視できなかった。

(総司さんが俺のことが好きで、俺も総司さんが好きで……。両想い?本当に?そんなことある?夢じゃないよね?)

「イオくん」
「っえ、あ、はい!」

 イオが我に返った時、総司はイオの目の前にはおらず、イオの隣に腰かけていた。二人分の体重に、ベッドのマットレスが沈む。二人の肩が触れ合う。先ほどよりも近い距離に、イオは逃げたくなったが、いつの間にか総司の手が腰に回されていた。近くなった総司の体温に、イオの鼓動は急激に速くなる。

「総司、さん……?」
「イオくん、今度は俺から、キスさせて……」
「え?」

(待って、キス?総司さんから?待って、待って!)

 先日、イオから総司へのキスは、半ばやけくそだった。最後に思い出としてキスをしたイオだが、その晩は大層後悔した。なのに、総司とのキスはずっと忘れられなかった。イオはキスを思い出し、背筋がぞくりとする。本能は期待していた。

「いいかな?」

 イオに嫌な想いをさせたくないため、総司は確認したが、逆にイオは羞恥が倍増した。イオの鼓動は速いままで、頬はずっと熱い。イオの濡れた瞳が総司を見つめる。その眼差しは了承したのと同意だ。そんなイオの視線を受け止めた総司も、鼓動は速く、頬が熱くなった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

処理中です...