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9.再会
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しおりを挟む総司の告白に、イオの目が大きく見開かれ、すぐに潤む。そして、イオはまばたきを一つした後、涙をこぼした。その涙の一粒が、総司の手に落ちる。
「え、わっ、イオくん?!」
総司は慌ててイオの頬を流れる涙を手で拭う。しかし、涙はとめどなく流れる。
(涙を止めないと、ちゃんと言葉にしないと……)
イオはそう思うが、涙は止まらない。頬に触れる総司の手に温かさに、余計に涙が零れる。
しかし、総司はその涙を拒否からくるものだと思い、イオの頬と手に触れていた手を引く。
「ごめん、急に好きとか言われても困るよね」
嫌われてしまったかもしれない、気持ち悪がられてしまったかもしれない。総司は自責の念に苛まれ、表情を暗くさせる。
「っ、違います…!そうじゃなくて!」
イオは首を横に振り、離れていく総司の手に縋った。今度はイオの方から、総司の手を握る。イオの涙は止まっていた。
「俺も、俺も総司さんのことが好きです、好きなんです!」
慌てるあまり、イオの声は力強く、部屋にイオの声が響いた。余韻が残るうちに、イオはかぁと頬を赤くした。
「あの、ごめんなさい。俺、必死になっちゃって……」
「え、いや、大丈夫。全然大丈夫だから……」
総司はイオを宥めるが、二人の間に沈黙がおとずれる。互いに気持ちは同じだというのに、告白してしまったことで、気まずい雰囲気になってしまった。このままでは埒が明かないと、先に口を開いたのは総司だった。
「えっと、じゃあ、俺とイオくんは、両想いってことで、いいのかな……?」
確認するような質問に、イオはゆっくりと頷く。頷いたことで、またイオの顔が熱くなる。そして、総司の手を握ったままだったことに気づき、慌てて手を離した。総司を目の前にして、イオの視線は泳ぐ。恥ずかしさと驚きあまり、総司を直視できなかった。
(総司さんが俺のことが好きで、俺も総司さんが好きで……。両想い?本当に?そんなことある?夢じゃないよね?)
「イオくん」
「っえ、あ、はい!」
イオが我に返った時、総司はイオの目の前にはおらず、イオの隣に腰かけていた。二人分の体重に、ベッドのマットレスが沈む。二人の肩が触れ合う。先ほどよりも近い距離に、イオは逃げたくなったが、いつの間にか総司の手が腰に回されていた。近くなった総司の体温に、イオの鼓動は急激に速くなる。
「総司、さん……?」
「イオくん、今度は俺から、キスさせて……」
「え?」
(待って、キス?総司さんから?待って、待って!)
先日、イオから総司へのキスは、半ばやけくそだった。最後に思い出としてキスをしたイオだが、その晩は大層後悔した。なのに、総司とのキスはずっと忘れられなかった。イオはキスを思い出し、背筋がぞくりとする。本能は期待していた。
「いいかな?」
イオに嫌な想いをさせたくないため、総司は確認したが、逆にイオは羞恥が倍増した。イオの鼓動は速いままで、頬はずっと熱い。イオの濡れた瞳が総司を見つめる。その眼差しは了承したのと同意だ。そんなイオの視線を受け止めた総司も、鼓動は速く、頬が熱くなった。
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