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9.再会
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しおりを挟む「なんで七海さん……?」
「え、だって、付き合ってるんじゃ……」
「え?誰が?」
「総司さんと七海さんは、付き合ってるんですよね?」
「え?」
総司とイオは顔を見合わせ、互いに不思議そうな表情をした。そして、二人とも勘違いに気づく。
「あ、あぁ、そういうことか……。もしかして、俺の電話のせいで……?」
総司は腑に落ちた。七海と一緒にいるということが、誤解を招いた原因だと辿り着く。
「違うんですか?」
「違う違う。七海さんとはそういう関係じゃなくて、単なる友達、というか、同担仲間というか……」
「じゃあ、俺の勘違い、ですか……?」
「そういうことになるね」
総司は苦笑したが、イオは恥ずかしさのあまり、一気に顔が熱くなり、俯いた。
(一人で勘違いして、一人で嫉妬したってこと?うわ、恥ずかしい……)
「イオくん」
総司の気配が近づく。イオは顔が上げられず、「すみません。俺、勝手に勘違いして……」と言うのが精一杯だ。
すると、総司はイオの目の前にしゃがみ込み、膝をついた。自然と下からイオの顔を見上げる体勢になる。総司とイオの視線が交わる。イオはますます居た堪れなくなった。
「総司さん、ごめんなさい」
「違うよ、俺は謝罪なんていらない」
「でも」
「俺、自惚れてもいいかな」
「え?」
「もしかして、嫉妬してくれた?」
核心をつくような質問に、イオは息を飲んだ。一瞬泳いだ視線は、最終的には総司へと向けられる。総司は優しい表情で、イオの答えを待っている。
(あぁ、この人には敵わない……)
イオは降参した。勝ち負けではないが、総司には嘘をつくことができないと思った。いつだって総司はイオに対して真摯だからだ。総司のことを裏切ることはできないし、裏切りたくなかった。
「…………はい」
認めてしまうと、イオの心は楽になったが、顔がさらに熱くなる。
(恥ずかしい、今すぐここから消えてしまいたい……)
イオは願うが、瞬間移動の能力があるわけでもなく、ただ縮こまるしかなかった。
そんなイオを見ながら、総司は腹を決めていた。再会できたのは偶然だが、この機会を逃すと、もうイオに会えない可能性もある。自覚した気持ちを伝えようと思っていた。断られれば、それで終わり。今日でイオとはお別れで、もうイオに会わないだけだ。
「イオくん」
総司は緊張しながらも、努めて優しい声を出す。総司の手が、イオの手に触れ、そっとその手を掬い取る。さながら王子に傅く騎士のようだ。
「俺の気持ちを伝えてもいい?」
「待って、待ってください」
慌てて首を横に振るイオだが、総司はそれを制するように、イオの手をぎゅっと握った。イオの肩が揺れる。総司の視線はまっすぐ、そして熱っぽくイオに届く。
「イオくん、俺はイオくんのことが好きです」
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