家に帰ると推しがいます。

えつこ

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9.再会

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「イオくん……」
「え、なんで……」

 久しぶりに見る総司は、いつも通りのスーツ姿で、懐かしささえ感じた。

(総司さん……?本物?どうしてミナミの家に……?)

 イオの頭の上にははてなマークがいくつも浮かぶ。それらが処理される前に、目の前に総司が近づいてきた。

「無事でよかった」

 総司が安堵のため息をついたかと思うと、イオに近づく。そして、その勢いのままイオを抱きしめた。突然のことで、イオは再び固まってしまう。

「イオくんが無事でよかった。すごく心配したんだよ」

 総司にぎゅうと抱きしめられ、イオは息苦しく感じた。
 と同時に、総司の腕の中は温かく、安心を覚える。総司に抱きしめられるのは二度目だが、イオは心地よさに、思わず総司へすり寄った。しかし、急に引きはがされる。

「ちゃんと食べてた?ミナミに嫌なことされてない?いじめられてない?大丈夫?元気だった?怪我してない?」

 イオは総司の質問に答える間もなく、頭のてっぺんから、足先まで、総司に観察される。そして、もう一度抱きしめられた。

「もう絶対にイオくんのこと離したくないし、離さないから」

 またぎゅうと力強く抱きしめられ、イオはされるがままだった。驚いたのは初めだけで、イオは冷静になってくる。

「総司さん、落ち着いてください」
「落ち着いてられないよ。だってイオくんに会えたんだから」

 子供が駄々をこねるように、総司はイオを抱きしめたまま、いやいやと首を横に振った。イオに関わることには頑固になることはわかっているため、イオはしばらく腕の中で大人しくしていることにした。

(俺のこと心配してくれてたのは、やっぱり嬉しくなっちゃう。例えそれが、総司さんの優しさだとしても……)

 イオの心中は、嬉しさと悲しさが半分ずつだ。イオはしばらくは総司の優しさに甘えて、腕の中を堪能することにした。しかし、その時間は長くは続かなかった。

「お二人さん、部屋で話せば?」

 突如聞こえたのは、ミナミの声だった。いつの間にか、ミナミとミナミの母親が、キッチンにやってきていた。総司は慌ててイオを解放する。

「お料理は後は私がやっておくから、大丈夫よ」

 ミナミの母親にも促され、総司とイオは、二階に間借りしているイオの部屋へと移動した。


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