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9.再会
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しおりを挟む「イオくん、本当に料理が上手ね」
「俺なんか、全然ですよ」
「南は全く料理しないから、出ていく前に教えないとね」
ミナミの母親にウィンクをされて、イオは苦笑いをした。引き続き、肉じゃがの灰汁を掬う。
(掃除と洗濯、節約に仕方、片付け方も教えたほうがいいですよ、なんて言えるわけがない……)
イオはミナミの実家に居候させてもらっていた。その代わり、家事の手伝いを申し出た。
今はミナミの母親と、キッチンで夕食の準備をしているところだ。
総司の部屋から飛びだした後、その晩はネットカフェで過ごした。翌日、不動産屋に行き、適当な部屋を借りようとしたが、保証人が必要と言われてしまった。もちろん、イオにはそんな人はいない。
困ったあげく、軽い気持ちでミナミに連絡をしてみた。解散した後から連絡は取っていない。拒否されていると思ったが、あっさり連絡が繋がり、あれよあれよという間に、居候させてもらうこととなった。ミナミの実家は無駄に広く、部屋が余っていたのだ。
正直、ミナミに対して怒る気持ちはあったが、解散から一ヶ月以上経ち、イオの頭はすっかり冷えていた。金目のもので、売られたものは返ってこなかったが、それ以外の金品は返してもらえた。 それに、熱心に赤ちゃんの世話をするミナミを見ると、怒る気すらならなかった。
「ただいまー」
玄関からミナミの声が聞こえ、イオとミナミの母親は顔を見合わせた。
「後は俺が作っておきます」
「ありがとう」
ミナミの母親は嬉しそうに、玄関へと歩いて行った。イオはその背中を優しく見守る。
(でき婚でも、やっぱりお孫さんは可愛いんだろうな)
灰汁を取りながら、イオは自らの家族のことを思い出していた。家を飛び出してからは一度も会ってないし、連絡も取ってない。
(もし、家に帰れば、両親は歓迎してくれるかな……。でも、帰ったところで、周囲がそっとしておいてくれるはずない……)
過去に経験した、嫌ほど向けられた奇異な視線やあちこちで交わされる噂話を思い出し、帰るなんて以ての外だとイオは思った。
「よし、あとは弱火にして……」
粗方灰汁を掬い終え、イオは鍋に蓋をして、火を弱火にした。材料に火が通るのを待つことになる。
(味付けは甘めにしよう。今のうちに、洗い物を済ませて、おひたしを作って……)
イオは頭の中で、段取りを考えていたが、ふと人の気配を感じた。
そちらへ顔を向ければ、立っていたのは総司だ。イオは驚きのあまり、固まってしまう。
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