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7.齟齬
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しおりを挟むイオは時間を気にしながら、荷物をまとめていた。思い出すのは、先ほどの総司からの電話だ。
『七海さんに会ってもらうことって、できたりする?』
そう尋ねられて、イオは了承できなかった。
七海も、総司と同様に、アイドル時代にかなり世話になったため、会えるものなら会って礼を言いたかった。しかし、その前に、胸中に広がったのは嫉妬だった。
(総司さんと七海さんって、もしかして……)
TwinMeteor時代に、仲良く話している二人をイオは見かけていた。二人とも社会人で、普通にしてれば美男美女だ。推し活を通じて付き合ったとしても変ではない。イオはそう考えた。
(総司さんだって、友達とか彼女とかいるんだから、俺がいつまでもいたら、邪魔になっちゃう……)
全ての荷物をカバンに詰めて、イオは部屋を見まわす。忘れ物がないことを確認した。
(これでいいんだ。俺はここにいないほうがいい。今度、ちゃんとお礼しに来よう)
イオが玄関へと歩み出した。ちょうどその時、かちゃりと鍵が開く音が響いた。ドアが開くと、部屋の主である総司が立っていた。
「あれ、今日バイトはなかったんじゃ……」
総司が言いかけて、イオの大荷物に気づき、怪訝な表情をした。イオは荷物を隠そうと身を引くが、意味を成さない。二人の間に気まずい雰囲気が流れる。
「急なんですけど、出ていこうと思いまして……」
先に言葉を発したのはイオだった。イオの言葉に総司は驚く。時刻は二十二時に近い。
「え、今から?夜遅いし……、っていうか、部屋は見つかったの?」
「まぁ……はい……」
「その感じだと、見つかってないよね……?」
総司に指摘されたイオは、視線が泳ぐ。総司は靴を脱ぎ、部屋に上がり、そっとイオに近づく。イオは総司が近づくと、後ずさった。
「イオくん、一旦落ち着いて。座って話そうよ」
優しい総司の言葉に、イオは心が揺れる。
(駄目だ。総司さんに甘えてばっかりじゃ……。出ていくって決めたんだから……)
「部屋は見つかってないですけど、バイトの給料が入ったので、大丈夫です」
「大丈夫って……。すぐに部屋が見つかるわけじゃないし、前にも言ったけど、イオくんが落ち着くまで、ここに居て構わないから」
「それは本当にありがたいです。でも、俺がずっといたら、総司さんは部屋に友達とか、その……彼女とか、呼べないじゃないですか」
「え?ちょっと待って、何の話?」
総司に友人はいるが、部屋に呼ぼうと思ったことはない。さらに、彼女はいない。イオの言っていることに疑問しか湧かなかった。
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