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4.同棲
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しおりを挟む久しぶりに寝室に足を踏み入れる。寝室の電気をつけると、そこにはほとんど変わらない寝室があった。
壁際のイオの祭壇は変わらず賑やかで、少し乱れたベッドはイオが使った名残がある。部屋の隅に置かれたイオの荷物は綺麗にまとめられていた。もともと物が少ないが、以前より整理整頓されたように見えた。
ただ、一つだけ変化があった。匂いだ。
(イオくんの匂いがする……)
主が変わった寝室は、イオの匂いで満ちていた。
(シャンプーか、香水……?あ、ワックスかも?同じ洗剤使ってるし……)
悪いと思いながらも、総司はくんくんと匂いを嗅いで、根源を想像する。あまりにも夢中になっていたせいで、足元の意識は薄れていた。
「う、わっ」
総司の足がベッドの縁にぶつかり、バランスを取り損ねた総司は、勢いよくベッドに倒れ込んだ。柔らかいマットレスが総司の体重を受け止める。そして、シーツや枕に染みついたイオの匂いが、ぶわりと総司を包みこんだ。
(イオくんの匂いが、する……)
胸いっぱいに吸い込んで堪能した後、総司は弾かれたように身体を起こした。
「ごめんなさいごめんなさい!もうしません!」
誰も聞く相手はいないが、罪悪感からとりあえず謝罪した。
(こんなの駄目だ!ファン失格!イオくんに見捨てられる!ごめんなさい!)
総司はベッドの上で、あたふた、おろおろとする。しかし、それは一瞬で、欲望に抗えず、またベッドへと倒れたこんだ。
(イオくんの匂い、いい匂い……)
シーツに顔を埋めて、匂いを堪能する。はたから見れば、鼻息荒く匂いを嗅いでいるという滑稽な姿だ。変態と罵られても仕方ない。
総司はしばし幸せな気分に浸っていた。ただ単純にそれで終われば良かったが、身体は正直だ。
(やばい、これ……)
下半身、特に性器が徐々に熱を帯びてくる。それに気付いた総司は、ベッドから起き上がり、急いでベッドから離れた。
という想像をしただけで、実際の総司の身体は、ベッドに沈んだままだった。一度顔を覗かせた性欲に、ブレーキは効かない。もともと総司の性欲は人並みで、自慰をすることは当たり前にあった。ただし、イオが来てからは、後ろめたさを感じて、できていなかった。
(駄目だ、こんなこと……)
思考では抵抗しているが、身体は自然と動く。スウェットのウエスト部分から手を入れ、下着の中に手を滑り込ませた。性器はゆるりと勃ちあがっており、匂いだけでこうなってしまったことに、総司は羞恥を感じる。しかし、その羞恥は、性欲を前して、すぐに消え去った。
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