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4-2.ある寒い日の夜(番外編)
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しおりを挟む翌朝、先に目を覚ましたのは遼だった。視線を下ろし、自分の体に抱きついて眠る王輝を見つけ、自然と頬が緩む。部屋の壁掛け時計で時間を確認して、まだ時間は大丈夫であることを確認した。遮光カーテンの向こうは、まだ暗く、夜は明けていない。
王輝を起こさないように、遼はそっと腕を移動させ、王輝の頭に添える。昨夜二人でシャワーを浴び、乾かすのもそこそこに眠りについたため、王輝の髪には寝癖がついていた。それを可愛らしく思いながら、遼は王輝の頭を撫でる。
「王輝」
遼は王輝の名前を呼んだ。その声色には優しさが滲む。もちろん起こすつもりはなく、ただ呼んだだけだ。
恋人になってから、王輝のことが好きな気持ちが日に日に大きくなっていく。最近はこうして一緒に眠る日が増え、ますます気持ちに歯止めがかからない遼だった。
遼の手は王輝の頬に移動する。柔らかく温かい皮膚に触れると、遼の身体の奥底からゾクゾクとした何かが湧いてくる。それはお世辞にも綺麗とは言い難いものだ。
好き、愛してる、ずっと一緒にいたい、抱きしめたい、セックスしたい、めちゃくちゃにしたい、大事にしたい、名前を呼んでほしい、触れたい、誰にも渡したくない、笑って欲しい、泣かせたい、独り占めしたい、どこにも行けないように閉じ込めたい。
このまま一緒にいれば、王輝のことをどうにかしてしまいそうだ。昨夜のセックスも、欲望をぶつけてしまったと遼は反省していた。今までに抱いたことのない感情に、遼は戸惑いを感じ、顔を顰めた。
その時、ゆっくりと王輝が目を開けた。寝ぼけ眼で遼を見つめる。
「りょう……?」
「ごめん、起こした?」
「ん……」
まだ微睡みの中にいる王輝は、遼にすり寄ってから、もう一度目を瞑った。しかし、すぐに目を開ける。遼の表情に違和感を覚えたからだ。
「怖い夢でも見た?」
王輝が尋ねると、遼は曖昧に頷き、力なく微笑んだ。何かある時の表情だと王輝はわかったが、遼が答えないため、結局何もわからなかった。
王輝はこのまま眠るわけにはいかないと思ったが、睡魔には勝てない。溜まりに溜まった仕事の疲労と昨晩のセックスの余韻のせいだった。
「大丈夫、そばにいるから」
眠りに落ちる寸前に、王輝はそれだけ口にした。すぐに瞼を閉じて、規則正しい呼吸音を立て始める。
王輝の言葉に、遼は驚きつつ、胸が温かくなる。
「ありがとう」
眠る王輝に、遼は優しく伝えた。そして、王輝をそっと抱き寄せ、目を閉じる。胸の中にわだかまりのように残った感情に、遼は気づかない振りをした。
突発短編でした。読んでいただきありがとうございました。寒い日が続きますね。
暑がり カズ>遼>須川>岸>漠>タスク>王輝 寒がり
こんな感じかと。岸さんや漠あたりが普通くらいです。
少し余韻を残しつつ、お話は続く、かも……?
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次の更新、楽しみにしています♪
素敵なお話ありがとうございます!
ちか様
読んでいただきありがとうございます!
次の更新がいつになるかわかりませんが、また読んでいただければ嬉しいです😌
番外編、ありがとうございます!!これからも、気長に更新を待つ所存であります( ̄ ᗜ  ̄)ゞ
王輝も遼も割と相変わらずで嬉しかったです。多分、にやにやしながら読んでいましたw
ちか様
感想ありがとうございます。
王輝と遼以外にも、お馴染みの人たちが登場予定ですので、楽しみにしていただけたらと思います。
コメントありがとうございます。励みになります…!更新頑張ります!😌
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ちか様
はじめまして。
たくさんのお話のなかから、見つけていただき、また長編にも関わらず、最後まで読んでいただきありがとうございます。また、嬉しいお言葉ばかりで、大変嬉しいです☺️
お話の続きですが、今番外編を書いているところなので、更新をお待ちいただければと思います。
カズとタスクや、他の登場人物にも愛着があるので、今後もお話を更新する気持ちはあります…!気長に待っていただきたく思います😌