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3-3.二人のこれから
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ライブの開演時刻が徐々に近づいてくる。王輝は先日遼から受けとったライブグッズのタオルとペンライトをカバンにいれた。もちろん遼の担当カラーである黄色がベースとなったグッズだ。
ライブ会場へ着き、関係者入口から会場内へ入る。メインステージには電飾で彩られたセット、そして、花道やセンターステージが設置されていた。開演前の場内はざわついており、ファンの熱気に包まれている。今まで映像でしか見たことがなかったライブ会場が目の前にあり、王輝は胸が高鳴った。
関係者席はメインステージの対面の二階席だった。会場全体が見渡せる席で、座っているのはBloomDreamのファン層とは雰囲気が違うスーツ姿の人たちが多い。他に、王輝が顔を知っているプロデューサーやディレクター、また女優や俳優もちらほら座っていた。
席は指定されていなかったので、どこへ座ろうかと王輝が悩んでいると、「王輝さん」と不意に名前を呼ばれた。数段下の座席に漠が座っており、にこにこと笑いながら王輝を手招きしていた。
「矢内、なんで…」
王輝は漠の存在に十分驚いたが、さらに漠が黄色のグッズを身につけていることにも驚いた。漠の近くに座りたくない気持ちはあったが、周囲の視線が気になったので、王輝はおとなしく漠の隣に座った。
「王輝さん、来るなら教えて下さいよ」
「矢内が来るって知らなかったから」
「俺メッセージ送りましたけど」
「そうだっけ?」
以前漠と連絡先を交換してから、漠から脈絡のないメッセージが送られてくることがあった。王輝はそれを無視することのほうが多かったので、ライブの件については心当たりがなかった。
「謹慎中に時間あったから、妹が持ってるBloomDreamのライブDVD見て、そこから急にハマっちゃったんですよね。一般でチケット取るにも抽選終わってて、関係者席お願いしちゃいました。こういうとき芸能人でよかった~って感じ。妹はファンクラブ先行でチケット取ってるんで、会場のどこかにいますよ」
漠が勢いよく話すのを王輝は圧倒されながら聞いていた。妹と言われ、王輝はあのカラオケで会った少女を思い出していた。そして、ライブグッズであるTシャツやタオル、遼のうちわを完全装備している漠の姿に合点がいく。そんな漠の隣に座るのは気恥ずかしさがあったが、今更移動するのも変なので、王輝は諦めた。
「王輝さん、グッズは?っていうか、俺はリョウ担なんですけど、王輝さんは?ちなみに妹はタスク担なんですよ」
「いや、別に、担当とか…」
王輝はカバンからタオルとペンライトを取り出す。BloomDream自体が好きなので、誰が一番という気持ちは王輝にはなかったが、遼から渡されたのは遼のグッズだった。何も考えずに受け取り、今手元にあるが、恋人を応援すると考えるとかなり恥ずかしい。王輝は顔が熱くなった。
「グッズ持ってるじゃないですか。あ、記念撮影しましょうよ」
漠は王輝の手からタオルを奪うと、勝手に王輝の首にかけた。そしてスマホを取り出した漠は、インカメラにして二人が画面におさまるように調整する。王輝が抵抗する間もなくシャッターが切られ、王輝は慌てて表情を作った。
「やっぱり王輝さんとのツーショットって映えますね。あとで送っておきます」
いつもに増してテンションが高い漠に、王輝はライブが始まってもいないのに、疲労感を覚えた。今からでも座席を移動しても遅くないと考えていると、注意事項のアナウンスが場内に流れた。
「あ、始まるんじゃないですか。王輝さん、ペンライト準備しなきゃ」
漠に促され、王輝はペンライトの電源を入れた。ペンライトはまばゆい黄色い光を放つ。アナウンスが終わると、客席側の照明が落とされ、場内は闇に包まれた。
会場を見渡すと、客席ではメンバーカラーである黄、赤、青のペンライトが揺れていた。目の前の景色に、王輝は純粋に綺麗だと感動していた。
一瞬の静寂の後、ステージの照明が一気に灯ると同時に、大音量で音楽が流れる。メインステージに三人が登場すると、歓声は一層大きくなり、場内の熱量は一気に高まった。
「BloomDreamのカウントダウンライブへようこそ!俺たちとみなさんで、素敵な夜にしましょう!」
遼が客席に向けて声をかけ、ライブがスタートした。
ライブ中、王輝はただただ圧倒された。映像で見ていたライブとは違うことを肌で感じとり、ペンライトを振るのも忘れ、じっと三人のパフォーマンスを見つめた。
感情を乗せて歌いあげ、激しいダンスを踊りきり、ファンへの笑顔は絶やさない。王輝は何度も鳥肌がたったり、ふいに涙腺が緩んだり、感情がせわしなく動いた。ドラマや映画とは違うエンターテイメントの形を目の当たりにした王輝は、終始心を揺さぶられていた。
ライブ会場へ着き、関係者入口から会場内へ入る。メインステージには電飾で彩られたセット、そして、花道やセンターステージが設置されていた。開演前の場内はざわついており、ファンの熱気に包まれている。今まで映像でしか見たことがなかったライブ会場が目の前にあり、王輝は胸が高鳴った。
関係者席はメインステージの対面の二階席だった。会場全体が見渡せる席で、座っているのはBloomDreamのファン層とは雰囲気が違うスーツ姿の人たちが多い。他に、王輝が顔を知っているプロデューサーやディレクター、また女優や俳優もちらほら座っていた。
席は指定されていなかったので、どこへ座ろうかと王輝が悩んでいると、「王輝さん」と不意に名前を呼ばれた。数段下の座席に漠が座っており、にこにこと笑いながら王輝を手招きしていた。
「矢内、なんで…」
王輝は漠の存在に十分驚いたが、さらに漠が黄色のグッズを身につけていることにも驚いた。漠の近くに座りたくない気持ちはあったが、周囲の視線が気になったので、王輝はおとなしく漠の隣に座った。
「王輝さん、来るなら教えて下さいよ」
「矢内が来るって知らなかったから」
「俺メッセージ送りましたけど」
「そうだっけ?」
以前漠と連絡先を交換してから、漠から脈絡のないメッセージが送られてくることがあった。王輝はそれを無視することのほうが多かったので、ライブの件については心当たりがなかった。
「謹慎中に時間あったから、妹が持ってるBloomDreamのライブDVD見て、そこから急にハマっちゃったんですよね。一般でチケット取るにも抽選終わってて、関係者席お願いしちゃいました。こういうとき芸能人でよかった~って感じ。妹はファンクラブ先行でチケット取ってるんで、会場のどこかにいますよ」
漠が勢いよく話すのを王輝は圧倒されながら聞いていた。妹と言われ、王輝はあのカラオケで会った少女を思い出していた。そして、ライブグッズであるTシャツやタオル、遼のうちわを完全装備している漠の姿に合点がいく。そんな漠の隣に座るのは気恥ずかしさがあったが、今更移動するのも変なので、王輝は諦めた。
「王輝さん、グッズは?っていうか、俺はリョウ担なんですけど、王輝さんは?ちなみに妹はタスク担なんですよ」
「いや、別に、担当とか…」
王輝はカバンからタオルとペンライトを取り出す。BloomDream自体が好きなので、誰が一番という気持ちは王輝にはなかったが、遼から渡されたのは遼のグッズだった。何も考えずに受け取り、今手元にあるが、恋人を応援すると考えるとかなり恥ずかしい。王輝は顔が熱くなった。
「グッズ持ってるじゃないですか。あ、記念撮影しましょうよ」
漠は王輝の手からタオルを奪うと、勝手に王輝の首にかけた。そしてスマホを取り出した漠は、インカメラにして二人が画面におさまるように調整する。王輝が抵抗する間もなくシャッターが切られ、王輝は慌てて表情を作った。
「やっぱり王輝さんとのツーショットって映えますね。あとで送っておきます」
いつもに増してテンションが高い漠に、王輝はライブが始まってもいないのに、疲労感を覚えた。今からでも座席を移動しても遅くないと考えていると、注意事項のアナウンスが場内に流れた。
「あ、始まるんじゃないですか。王輝さん、ペンライト準備しなきゃ」
漠に促され、王輝はペンライトの電源を入れた。ペンライトはまばゆい黄色い光を放つ。アナウンスが終わると、客席側の照明が落とされ、場内は闇に包まれた。
会場を見渡すと、客席ではメンバーカラーである黄、赤、青のペンライトが揺れていた。目の前の景色に、王輝は純粋に綺麗だと感動していた。
一瞬の静寂の後、ステージの照明が一気に灯ると同時に、大音量で音楽が流れる。メインステージに三人が登場すると、歓声は一層大きくなり、場内の熱量は一気に高まった。
「BloomDreamのカウントダウンライブへようこそ!俺たちとみなさんで、素敵な夜にしましょう!」
遼が客席に向けて声をかけ、ライブがスタートした。
ライブ中、王輝はただただ圧倒された。映像で見ていたライブとは違うことを肌で感じとり、ペンライトを振るのも忘れ、じっと三人のパフォーマンスを見つめた。
感情を乗せて歌いあげ、激しいダンスを踊りきり、ファンへの笑顔は絶やさない。王輝は何度も鳥肌がたったり、ふいに涙腺が緩んだり、感情がせわしなく動いた。ドラマや映画とは違うエンターテイメントの形を目の当たりにした王輝は、終始心を揺さぶられていた。
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