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2-3.湯煙る二人

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「これってアザ?」
「ん?あ、撮影でちょっと…」
「誰にやられた?」
 怒気を孕んだ遼の口調に、王輝は慌てて説明する。
「違う違う。俺が受け身取り損ねただけ。俺が悪いだけだから」
 王輝は半分嘘をついた。喧嘩シーンで手順を間違えて、防御し損ねたのが本当だった。それを伝えたら、遼が怒り狂いそうだと判断したための嘘だった。
 遼は「痛そう」と顔を顰めながら、慈しむようにアザにキスを落とした。そしてアザをふにふにと舌で押す。王輝は痛いような、くすぐったいような、変な感覚になる。それに合わせて、前立腺を刺激されて、気持ちよさが加わる。ぞわぞわと皮膚が粟立ち、遼を睨みつけた。
「わざとやってる?」
 遼はいたずらを怒られた子供のように笑って「ごめん」と言って、腹から舌を離し、なだめるように王輝の唇にキスをした。王輝は遼の表情を可愛いと思ってしまい、絆されてると感じつつキスを受け入れる。遼はキスをしながら、後孔を広げる指を三本に増やした。円を描くように指を動かし、縁や内壁を広げると、王輝は腰を揺らした。抵抗感を示していた中は、今は遼の指を逃がさないとでもいうように、うねうねと引き込むような動きをしている。
「佐季、っはやく、挿れて…」
 キスの合間に王輝はねだる。奥が疼いて、早く中に欲しくて堪らなかった。
 遼も我慢の限界だった。遼自身は先ほどから下着の中で窮屈そうにしていて、早く王輝の中に入りたくて仕方なかった。理性は欲望にあっけなく負けて、下着を脱いで、勃起している自身にコンドームを被せた。そして、解した王輝の後孔に宛がう。
「今ヶ瀬、挿れるぞ」
 王輝が頷いたことを確認し、遼はゆっくりと亀頭を沈めていく。
「っ、あっ…っ…」
「力抜いて」
 苦しそうに息を吐く王輝に、遼は優しく声をかける。もう少し解せばよかったと思いながら、遼は亀頭を王輝の中へ突き入れる。カリの部分がぐぽっと入ると、竿は比較的スムーズに飲みこまれていく。王輝の中はひどく熱くて柔らかくて、遼は射精感が高まるのをぐっと我慢して、先端を奥まで挿れ込んだ。
「なか、…入って、大きっ…」
 王輝は呼吸を繰り返し、身体の力を抜こうとするが、うまくできなかった。中を締めつけてしまい、どくどくと脈打つ遼自身の存在を感じる。繋がった部分から全身に熱が広がっていく。苦しさはまだあるものの、快感が欲しくて、遼にねだる。
「動いて、っ、早く…」
「まだキツいだろ」
「佐季の、中で感じたいから、お願いっ…」
 見下ろす遼の瞳が揺れた。遼の葛藤が垣間見え、王輝はその優しさを嬉しく思いつつ、中を意識的に締め付けた。びくりと腰を揺らした遼に、王輝はにやりと笑う。煽られているとわかりながら、遼は息を吐いてから腰を動かし始めた。
 慣れきっていない中は、引き抜く感覚も、挿れる感覚も、はっきりと感じ取れて、王輝は遼とセックスしていることを実感していた。遼の腰の動きは、最初は焦らすようにゆっくりとしていたが、王輝の中が柔らかくなってくると、徐々に速くなる。王輝の口からは甘い声が飛びだす。
「あ、っあ、いいっ…」
「苦しくない?」
「大丈夫、だからっ、もっとほし、っい」
 王輝の望み通り、遼は腰の動きを速める。二人とも余裕がなく、目の前の快感を貪欲に求めていた。遼は肉壁をかき分けるように奥へ突き入れ、前立腺を重点的に押しつぶす。同時に、先走りを流して今にも達しそうな王輝自身を扱く。
「だめっ、いい、あ、あっ、あっ…」
 王輝は与えられる快感に、びくびくと身体を震わせ、勢いよく射精した。王輝の中の締めつけで、遼もゴムの中へと射精する。二人は荒い息をしながら、どちらともなくキスを交わした。遼は王輝を繋がったまま抱き起こし、お互いの存在を確かめるように、抱きしめあった。王輝は遼の乱れた浴衣を脱がせ、熱い肌に直接触れた。王輝の白い肌が、日に焼けた遼の肌の上を滑る。中からも外からも遼の鼓動を感じ、王輝は満たされた気分になり、ふふっと笑いがもれた。
「どうした?」
 嬉しそうな表情の王輝に、遼は不思議そうに首を傾げた。
「ん?佐季とするセックス、好きだと思って」
 一瞬「好き」という言葉に引っ掛かりを覚えた遼だったが、「セックスが好き」ならいいのだろうと判断した。アウトに近いと思いながらも、遼も同じように言葉を返す。
「俺も、今ヶ瀬とするセックスが好きだ」
 返ってきた言葉に、王輝は嬉しくなるものの、どこか寂しさを覚え「ずるい言い方」とぼやく。
「今ヶ瀬が言ったんだろ」
 二人は顔を見合わせて笑い、再びキスをした。背徳感を抱えながらも、身体の熱はまだまだ冷めない。

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