上 下
51 / 116
2-2.溢れる気持ち

5 *

しおりを挟む
 
 遼はゴムを付けた自身を、ゆっくりと王輝の唇へ近づける。王輝は大きく口を開け、遼自身を向かい入れた。熱い口内に遼の身体がびくっと震える。少しずつ喉の方へと腰を進めていくと、亀頭が喉に当たった。
 王輝は歯を立てないように気をつけ、口内を緩ませる。ゴムをしていてもわかる雄臭さに、王輝は妙に興奮していた。口内の異物に反応して唾液が分泌される。早く動いて欲しくて、王輝は舌で遼の裏筋をなぞった。
 それが合図だったように、遼はゆっくりと腰を動かし始めた。後孔とは違う口内の感触、そして王輝を屈服させているような体勢に、否応なく昂ってしまう。遼は王輝の肩と頭を支え、自身を出し入れする。短いストロークを繰り返していくと、王輝の唾液が絡んで滑りがよくなってきた。亀頭で上顎を擦ったり、喉奥を優しく突いたりすると、王輝の喉がきゅっと締まった。最初は苦しそうな表情をしていたが、王輝の表情は徐々にうっとりとしてくる。その表情の変化に遼は安心を覚えた。
 王輝は後孔の疼きを感じながら、自身を上下に扱いていた。口からは唾液が、性器からは精液混じりの先走りが、だらだらと零れ落ちていく。傍から見れば目も当てられない格好だ。遼の腰の動きに合わせ、意識的に喉を締めると、遼は気持ち良さそうに声を上げた。
「今ヶ瀬、それっ…やばい…」
 遼はたまらずに腰を動かし続ける。喉奥を突き上げたい欲望を抑え、あくまでも優しく挿入に徹した。
 王輝は遼の優しさを感じつつ、できるだけ口内を緩め、そして奥を締めあげる。ちゅこ、ちゅこ、と出し入れする音が耳に近く、王輝の羞恥を煽り、自身を扱く手が速まる。
「っあ、ごめん、…イくっ…」
 遼はびくびくと身体を震わせ、王輝の口内で、ゴムの中に射精をした。口内で跳ねる遼自身が愛おしくて、王輝は喉の最奥を開くようにして、がっぽりと咥えこむ。一瞬息ができなくなるが、それすら気持ちよく感じた。
 喉奥できゅうっと亀頭を絞りとられ、遼は思わず腰を引いた。反動で王輝は床に座り込んでしまう。遼が慌てて王輝の顔をのぞきこむと、瞳には涙が滲み、口の周りは唾液で濡れ、肩で大きく息をしていた。
「無理するなよ」
 王輝が求めたことだが、今後はやりたくないと遼は強く思った。遼は王輝の背中を優しく擦りながら、ふと王輝の下半身を見る。王輝自身は達しておらず、寂し気に主張していた。
「ごめん、イケなくて…」
 王輝は先ほどまで大胆に求めていたのが嘘みたいに、可愛らしく恥じらった。冷静になった遼と、まだ身体が熱い自分との差に、王輝は羞恥で顔を赤く染める。
 最後くらいは気持ちよくさせてやらなければと、遼の心に妙な責任感が湧いた。王輝の身体を引き寄せ、王輝自身に手を伸ばす。
「佐季、待って」
 王輝は逃げるように身体を捩ったが、遼に動きを封じられるようにキスをされると、大人しく遼の腕の中に収まった。先ほどまで性器の質量を受け入れ、顎が疲れていた王輝は、遼の舌に口内を翻弄される。王輝は舌を吸い上げられ、鼻にかかった嬌声をだした。
 遼は王輝の口内を味わいながら、王輝自身を優しく扱く。指で作った輪っかで陰茎を上下に扱き、裏筋をそっと撫でると、先走りがこぷりと溢れた。敏感な亀頭を指の腹で刺激すると、王輝は身体をびくつかせた。
 思考も身体も熱くなってき、王輝はどんどん蕩けていく。遼に与えられる全てが優しく、幸福感が胸に広がった。遼への感情を押しとどめていた理性が崩れていくのに、時間はかからなかった。
「っんぅ、…さ、きっ…」
 キスの合間に遼を呼ぶ。遼は王輝の唇から離れた。
「…佐季、…っ…」
 王輝の頭の中で、やめろ!言うな!と自制する声が聞こえる。
「…っ、俺……」
 何か伝えようとする王輝に、遼は王輝自身に触れていた手の動きを止めた。じっと王輝の言葉を待つ遼の眼差しは優しく、堰き止めていた気持ちが溢れた。
「佐季、っ……好き…」
 王輝は言葉と同時に、精液を吐き出して達した。射精後の脱力感に揺蕩っている間もなく、自らが発した言葉を思い出し、さっと血の気が引く。慌てて遼の表情を伺うと、ぽかんと呆気にとられた表情をしていた。
「俺、あの…っ…」
 何を言っても取り返しがつかない状況に、王輝は軽くパニックになる。とにかくこの場から、遼から離れたかった。ずり下がっていた下着とデニムパンツを履き、慌てて靴を履いた。口の周りと下半身が濡れて気持ち悪かったが、気にしていられなかった。
「ごめん」
 王輝はそれだけ言い放ち、隣の自分の部屋へと急ぐ。慌てすぎてうまく鍵が開けれなかった。どうにか開錠し、後手に扉を閉めると、真っ暗な玄関に座りこんだ。大きなため息が玄関に響いた。どうしようと考えようとしたが、考えがまとまらない。今から戻って訂正するのは間抜けだし、訂正すればするほど本気だと捉えかねられない。聞き間違いと思ってくれたほうがまだマシだ。しばらく座り込んでいた王輝は、八方塞がりの状況に、何もかも無駄だと察した。思考を放棄し、シャワーを浴びるために浴室へと向かった。
 王輝の背中を見送った遼は、玄関にぽつんと残されていた。確かに王輝の口から「好き」と聞いたが、思い返すと空耳だったかもしれないと不安になる。以前セックスの時になりきって言い合った「好き」とは違う「好き」に、遼の心臓はドキドキと鼓動を速めた。しかし、すぐに気づいたのは、セフレ関係には「好き」はタブーだということ。聞き間違いだったのかもしれないと遼は大きなため息をついた。急激に襲ってきた疲労感と眠気に、遼は重たい身体に鞭を打って、立ちあがる。散らかった玄関を片付けなければならないが、先にシャワーを浴びようと思った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

R-18♡BL短編集♡

ぽんちょ♂
BL
頭をカラにして読む短編BL集(R18)です。 pixivもやってるので見てくださいませ✨ ♡喘ぎや特殊性癖などなどバンバン出てきます。苦手な方はお気をつけくださいね。感想待ってます😊 リクエストも待ってます!

【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】

NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生 SNSを開設すれば即10万人フォロワー。 町を歩けばスカウトの嵐。 超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。 そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。 愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。

えっちな美形男子〇校生が出会い系ではじめてあった男の人に疑似孕ませっくすされて雌墜ちしてしまう回

朝井染両
BL
タイトルのままです。 男子高校生(16)が欲望のまま大学生と偽り、出会い系に登録してそのまま疑似孕ませっくるする話です。 続き御座います。 『ぞくぞく!えっち祭り』という短編集の二番目に載せてありますので、よろしければそちらもどうぞ。 本作はガバガバスター制度をとっております。別作品と同じ名前の登場人物がおりますが、別人としてお楽しみ下さい。 前回は様々な人に読んで頂けて驚きました。稚拙な文ではありますが、感想、次のシチュのリクエストなど頂けると嬉しいです。

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

ゆるふわメスお兄さんを寝ている間に俺のチンポに完全屈服させる話

さくた
BL
攻め:浩介(こうすけ) 奏音とは大学の先輩後輩関係 受け:奏音(かなと) 同性と付き合うのは浩介が初めて いつも以上に孕むだのなんだの言いまくってるし攻めのセリフにも♡がつく

処理中です...