お隣さんはセックスフレンド

えつこ

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1-4.我慢できない

2 *

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「今ヶ瀬、どこ行くんだよ」
 須川が走り去ると、王輝は何も言わずに遼の腕を掴み、廊下をずんずんと歩き始めた。先ほどまではよそよそしい態度だったのに、意味がわからない。遼は混乱していた。
 楽屋が並ぶフロアへと移動し、廊下の奥へと進んでいく。テレビ局は二十四時間人がいて賑わっているのに、なぜか人気がなく薄気味悪い場所がある。ホラーが苦手な遼は、極力そういうところには近づかないようにしているが、王輝が進む先はまさにそういう雰囲気が漂う場所だった。
 廊下の一番奥の楽屋。扉横のプレートに名前は貼られていないので、今は使われていないことが分かる。扉の鍵を王輝は開け、楽屋に入っていく。遼は怯えながら王輝の後に続いた。
 電気をつけると、中は意外と綺麗で、遼がいつも使っている楽屋と遜色ない。洗面所、机と椅子、メイク用の鏡、着替えスペース。よくある楽屋と構造は同じだ。
 カチャと音が鳴ったと思ったら、王輝が扉の鍵をかけていた。そして遼のほうへとゆっくり近づいていく。目をギラギラと輝かせ異様な雰囲気の王輝に、遼は後ずさりをするが、狭い楽屋のためすぐに背中が壁に当たる。逃げ場所がなく、王輝にいわゆる壁ドンをされてしまう。
「今ヶ瀬……?」
「今すぐセックスしたい」
「は?」
「セックスしよう」
 王輝はそう言うと、遼にキスをした。あっけにとられている遼の口内へ、王輝は舌を入れる。同時に遼自身をズボンの上からなぞる。最初は抵抗していた遼だったが、王輝の舌と手の動きに翻弄される。
 久しぶりのキスに夢中になる二人ば、お互いの舌を吸って、口内を蹂躙し合う。荒い息と唾液が奏でる水音が、二人の気分を盛り上げるように響き渡った。
 遼は流されそうになる思考をどうにか堰き止め、唇を離した。頭の中の疑問を一気に王輝にぶつける。
「ここ何?ここでセックスするのか?この後収録だろ?」
「ここは秘密の楽屋で、ここでセックスする、収録あるから一時間以内で終わらせる」
 単語だけで返ってきた答えに、さらに疑問が湧く。
「秘密の楽屋ってなに?」
「ここの鍵持ってるの俺だけだから。元々は大道具のおじさんが勝手に使ってた部屋なんだけど、俺のこと気に入ってくれて、自由に使っていいって鍵くれた。ちなみにおじさんはもう引退したし、鍵は俺が勝手に付け替えたから、本当に俺しか入れない。隠しカメラもないことは確認している」
 もういい?と言うように、王輝は遼のズボンのチャックを下ろそうとした。遼はそれを慌てて止める。
「誰か来るかもしれないだろ?」
「誰も来ないよ。この辺りの楽屋使うこと少ないし」
「一時間以内なんて無茶だ。今ヶ瀬に負担がかかる」
「多分ほぐさなくても入る。昨日バイブ入れたから」
「バイブ?!」
 思わぬ言葉に遼のほうが照れてしまう。バイブを入れている王輝の姿を想像してしまい、遼自身がずくんと疼いた。
「もういいから、早く…」
 王輝は濡れた唇をなめて、遼を見つめた。ねだるような表情に遼は流されまいと最後の意志を振り絞った。
「俺は同意してないから、このセックスはなしだ。お互いの同意が必要だろ?」
「こんなになってるんだから、同意してるのと一緒じゃん」
 遼自身は勃ちあがり始めていて、ズボンの前がキツいのは本当だった。セックスせずに溜まっているのは遼も一緒だ。正直セックスはしたい。この後は本当に帰るだけだったので、遼は時間の余裕はある。こんなところでセックスすることに背徳感を覚えつつも、今を逃したらまたしばらくセックスはできない。誰かにバレたらどうする?鍵をかけているから安心だ。もし誰かに姿を見られていたら?人気がなかったから大丈夫だ。遼の頭の中で賛否の意見が飛び交うが、本能には抗えなかった。
「わかった。セックスしよう」
 熟考の結果、遼はセックスすることを選んだ。身体の熱が治まりそうにない。「ただし、ここでやるのは今回だけだからな」と条件を付け加えた。
「わかってる。俺だって本当はこんなところでやりたくないけど…」
 王輝は遼の意見に同意した。リスクを考えたらこんなところでセックスするなんてありえない。この部屋に入ったところを誰かに見られていたら大変なことになる。一応ここに入る際に人がいないことは確認した。しかしテレビ局内には防犯カメラが設置されているし、そこに二人の姿が映ってないとは言えない。リスクが大きいが、王輝は背に腹は代えられなかった。
「今はもう我慢できない」
 王輝の切なげな声が合図だったように、遼は噛みつくように口づけた。
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