流されノンケサラリーマンが年下大学生にとろとろにされる話

えつこ

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8.Happy Birthday

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 それから一ヶ月後、麻琴は指定された時間に、マンション前で待っていた。三月に入ったものの、まだ寒い日が続いている。麻琴の手には一泊分の荷物が入ったカバン。幸世から詳細は知らされず、一泊二日の旅行とだけ聞いている。
 付き合ってからというもの、デートもセックスも何度もしたし、ラブホテルで一泊することも多々あった。しかし、改めて旅行というものはしたことがなく、麻琴も単純に楽しみだった。
 麻琴が待っていると、黒のワンボックスカーがスッと目の前で止まった。助手席側の窓が開き、「麻琴」と呼ばれる。麻琴が車の中を見ると、運転席に幸世が座っている。

「お待たせ。早く乗って」
「え、車?」
「友達に借りた」
「免許持ってたん?」
「まぁね。荷物は後ろに置いて」

 幸世に言われるがまま、後部座席に荷物を置き、助手席に座る。麻琴がシートベルトをしたことを確認すると、幸世は車を発進させた。
 車が多い都内の道路を、幸世は難なく運転し、車はスムーズに進む。麻琴はその様子を横目で見て、ドキドキしていた。運転する姿がかっこいいと世の女性がよく言っていたが、今それを実感する麻琴だった。

「なに?」
「え?」
「俺のこと見てたから」
「見てへんし。っていうか、どこ行くん?」

 気恥ずかしさに話題を変えるが、単純に行先は気になっていた。

「鎌倉あたりまで行って、別荘でのんびりしようと思って」
「え?別荘?!」
「もちろん貸別荘だから」
「そやなくて、そうやけど、別荘で?泊まるん?」

 全てが想像以上で、麻琴は混乱していた。

「だって、最近麻琴は仕事忙しそうだったし、ゆっくりデートもできなかったから」

 下半期の決算が近く、麻琴は確かに忙しかった。ここ二週間は会えていない。週末は家で寝ていることが多く、仕事以外の外出も久しぶりだ。

「だからって別荘って……。俺の家でもゆっくりできるやん」
「それだと味気ないから。それに……」

 ちょうど車は赤信号で止まる。幸世は麻琴の頬を撫でて、極上の笑みを見せる。

「別荘だから、ずっと二人っきりだし、うるさくしても文句言われないし。思う存分セックスしようね」
「っ、幸世……」

 麻琴の鼓動は一気に速くなった。幸世が触れた肌が熱い。セックスがご無沙汰の身体は、内側からじわりと熱が湧く。

「そんな欲しがるような顔しないでよ」

 幸世は困ったように笑ったが、瞳の奥は熱が宿っている。二人はじっと見つめ合っていると、後ろからクラクションが鳴った。いつの間にか信号は青になっており、幸世は麻琴から手を離すと、車を発進させた。
 セックスするために別荘に泊まるなんて、と麻琴は思ったが、何でもしてあげると言った手前、拒むことはできない。それに、期待してしまっている自分もいて、麻琴は熱い息を吐いた。



 車は順調に海沿いの道を走る。海面がキラキラと光を反射させて、幸世の横顔を浮き上がらせた。麻琴はそれに見惚れてしまう。
 先ほど、買い物に立ち寄ったのはスーパーで、食糧や飲み物を調達した。
 それから一時間程度車は走り、着いたのは海に面した別荘。別荘の目の前は海が広がり、裏側には木々が生い茂っている。隠れ家のような場所だ。
 建物脇の駐車スペースに車を停め、早速別荘の中へと足を踏み入れる。
 古民家をフルリノベーションした建物は平屋建てで、玄関から廊下が続き、その先にリビング、キッチン、ダイニング、寝室がある。廊下の途中にはトイレと浴室。浴槽はジェットバス付きで、広々としている。
 家具はシンプルなもので統一され、元が古民家だとは思えない綺麗さだ。リビングと寝室は海に面していて、窓は通常より大きく備えられており、開放感を感じられるようになっている。
 一通り部屋を確認した後、麻琴は「めっちゃえぇ感じやん」と嬉しそうな顔をしたが、すぐに表情を曇らせる。

「こんなええとこ、高いんちゃうん?」

 そもそも、今回の旅行に関して、麻琴はお金を出していない。幸世の誕生日のはずなのに、全て奢られているのが、居心地悪かった。

「大した金額じゃないよ。俺がしたいことをしてるだけだから、麻琴は気にしないで」

 大学が春休みのため、幸世は朝から晩までバイトに励んでいた。全ては麻琴と過ごすためだ。

「でも……」
「俺は麻琴と一緒に過ごせるだけで嬉しいから」
「ほんなら、俺の誕生日の時は、俺が奢るから」
「それはだめ」
「なんでやねん」
「そんなことより、荷物運んじゃって、ゆっくりしよ」

 幸世にまるめ込まれた麻琴は、不貞腐れたが、心中は嬉しかった。
 今だに幸世との関係が続いていることが、麻琴にとっては驚きで、いつ幸世に飽きられるかはわからないからだ。好意という目に見えないものが、今回の旅行で具現化されたようで、改めて幸世の気持ちを知ることができた気がした。




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