57 / 77
7.Halloween Night
15
しおりを挟む翌朝、先に目を覚ましたのは麻琴だ。麻琴の身体は幸世の手によって綺麗に拭かれており、下着だけを身に着けた状態になっていた。
麻琴が目を開けると、目の前には幸世の整った顔。眼福とばかりに、規則的に寝息を立てている幸世を見つめ、しばらく幸せな気分にひたった。そして、幸世を起こさないように、静かに上半身を起こした。
「っ、痛っ……」
麻琴は身体の痛みに、顔を顰めた。特に腰が痛く、後孔には違和感が残っている。昨夜の記憶を辿り、最後は意識を飛ばしてしまったことを麻琴は思い出した。久しぶりのセックスは激しく、思い出すだけで快感の余波がぞくりと全身を走る。すっかり強烈な快感の虜になっていた。
『愛してる』
遅れて思い出したのは、幸世の甘い言葉。麻琴はかぁと顔を赤くする。意識がなくなる寸前だったが、確かに幸世はそう言ったのだ。『好き』は何度も言われてきたが、『愛してる』という言葉は初めてだ。
「どうしよ……」
熱い頬は自然に緩む。麻琴は嬉しくて仕方なかった。飛び跳ねてしまいたい気持ちを抑えながら、静かにベッドから降りようとするが、幸世が身じろぎ、ゆっくり目を開けた。
「まこと……?」
幸世は麻琴の名前を呼び、何度かまばたきをした。幸世も麻琴と同じように、下着だけ身に着けていた。
「幸世、おはよう」
麻琴が声をかけると、幸世は身体を起こす。二人はベッドの上で向かい合った。幸世は徐々に覚醒し、昨夜のことを思い出すと、表情を曇らせる。
「俺……、昨日、ごめん。麻琴に無茶させたかも……」
「えぇよ、毎回は困るけど、たまには」
麻琴は苦笑すると、幸世はぱっと表情を変え、にやりと笑った。
「たまには、いいんだ?」
「よくはない。あ、なんか企んでるやろ」
「次はナースとか制服とか、どう?」
「そういうの、好きなんやな」
「麻琴だって好きなくせに」
幸世は楽しげに笑ったが、麻琴は罰の悪そうな顔をした。いつもと違う状況でのセックスは確かに気持ちよかったと麻琴は思っていたが、認めたら負けだとも思っていた。
「でも、やるならホテル行きたいわ」
「そうだね、俺も麻琴の声聞きたいし」
「隣の人と会ったら、気まずいの、知らんやろ。めっちゃ俺のこと見てくるねん。ほんま嫌やわ」
麻琴が大袈裟に顔を顰めたため、幸世は笑いを吹き出した。
「笑いごとちゃうで」
麻琴は幸世の肩を軽く小突く。「ごめんごめん」と幸世は笑いを押し殺すが、結局笑ってしまう。それにつられ、麻琴もじわじわと笑いがこみあげ、最後は幸世と一緒になって笑う。
「麻琴、笑わないでよ」
「幸世こそ、笑うんやめてや」
二人は笑いあい、ようやく笑いがおさまった時には、息が上がっていたほどだ。二人は息を整えながら、視線が交わるたびにくすくすと笑い合った。
「ほんま、幸世とおると退屈せぇへんわ」
「俺も、麻琴といると楽しい」
幸世は優しく微笑み、麻琴を抱き寄せる。熱い肌が触れ合い、鼓動が近くなる。互いの存在を確かめるように身体を寄せ合った。
「なぁ、幸世、一緒に住まへん?」
麻琴は以前から考えていたことを伝えた。それは今の関係から、さらに深い関係になることを意味し、なかなか言い出せなかったことだ。しかし、幸世からの『愛してる』という言葉に後押しされた。
「一緒に、住む……?」
幸世は復唱して、ぱちぱちとまばたきをした。思わぬ提案に驚きが大きかったが、じわじわと嬉しい気持ちが膨らんでくる。幸世が黙ったまま幸せを嚙みしめていたため、麻琴は不安になり、言葉を付け加えた。
「嫌やったら、全然断ってくれてえぇから。急な話やし、ちょっと思っただけやし」
「全然、嫌じゃない。すごく嬉しい」
幸世は食い気味に返し、さらに続けた。
「いつから一緒に住む?新しい部屋見つけないとね。えっと、場所はどこがいい?部屋にこだわりある?」
「ちょお待ってや、幸世、落ち着いて」
どんどん話を進めていく幸世に、麻琴は制止をかける。
「その前に、ちゃんと言って欲しいこと、あるんやけど」
「え?」
「ほら、昨日言ってたやん……」
麻琴はねだっておきながら恥ずかしくなり、頬を赤く染める。幸世はその反応に、麻琴が望んでいる言葉に思い当たった。幸世は居住まいを正し、麻琴をまっすぐ見つめ、言葉を紡ぐ。
「麻琴、愛してる」
改めて告げられた麻琴は、耳まで赤くし、恥ずかしさのあまり目を伏せた。幸世が麻琴の反応を可愛いと思いながら見ていると、視線を上げた麻琴を目が合う。
「俺も、幸世のこと、愛してる」
麻琴からの不意打ちの告白に、幸世は胸を打ち抜かれた。ぶわりと昂った気持ちを表すように、幸世は麻琴にちゅっとキスをして、抱きしめる力をぎゅっと強くする。
「麻琴、好き、愛してる」
「俺も」
「ちゃんと言って欲しい」
「何回言わせんねん」
「だって、何回でも聞きたい」
幸世の甘えたお願いに、麻琴は面倒くさそうにため息を吐くが、その頬は緩んでいる。
「幸世、愛してる」
「もう一回」
「愛してるで、幸世」
「俺も、愛してる、麻琴」
二人は幸せに微笑みながら見つめ合い、唇を重ねた。角度を変え、何度もキスをし、お互い抱きしめ合う。昨夜あれほど愛し合ったというのに、二人とも身体の熱が高まっていく。
「麻琴、したくなってきた?いい?」
「えぇよ、俺もしたい」
幸世は麻琴をベッドに押し倒すと、ベッドがぎしりと軋んだ。二人の幸せな時間は、まだまだ続いていく。
短編のつもりが、がっつり書いてしまいました。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
セックスしかしてないように見えるけど、ちゃんとデートもしてる麻琴と幸世です。最近は一緒に映画を観に行きました。でも結局最後はセックスする……。
まさかの同棲編に続く、かもしれません。
87
お気に入りに追加
507
あなたにおすすめの小説


イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる