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6.ろっかいめ
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しおりを挟む「乾杯」
キヨと麻琴は、手に持った缶ビールをこつんと当てあった後、ぐいっと勢いよく飲んだ。先ほどまでセックスという運動をして、汗をかいたせいで、二人ともビールを殊更美味しく感じた。
ホテルから移動し、場所は麻琴のマンションの部屋。浴室で意識を飛ばした麻琴は、目を覚ますとキヨに介抱されていた。
「無理させてごめん」
しおらしく謝るキヨに、麻琴は「気にせんといて」と返す。キヨにより、身体の汚れは綺麗にされ、後孔の後処理も終わっており、麻琴としてはすっきりした目覚めだった。性欲は満たされた麻琴だが、次に感じたのは空腹だった。
「この後どうする?飯でも行く?」
「それなら、麻琴の部屋に行きたい」
「俺の?」
「うん、部屋飲みしようよ」
キヨの提案に、麻琴は喉の渇きを思い出す。のんびり部屋で飲むのもいいと麻琴は頷き、麻琴の部屋での部屋飲みが決まった。
夕暮れで空は赤橙色に染まり、窓からは西日が差し込む。二人はローテーブルを前に、横並びで座り、ぼんやりテレビを見ていた。テーブルの上にはコンビニで買ってきた酒やつまみが並ぶ。
「めっちゃふしだらな一日やわ」
「ふしだらって」
キヨはふふっと笑いながら、楽しげに目を細めた。昼間からセックスをして、まだ日も落ちていないのに酒を飲む。麻琴にとっては最高な一日だが、榛が聞いたら呆れ返るだろう。
「これだけで足りる?なんか作ろか?」
唐揚げやスナック菓子では腹は満たされない。麻琴はそう思ったが、キヨは首を横に振った。
「俺少食だから」
「若いんやからちゃんと食べなあかんで。あ、そういえば、この前部屋掃除した時、コンビニのゴミばっかりやったけど、自炊してる?」
この前というのは、キヨの看病をした時のことだ。部屋を片付けていると、自然とゴミの中身が目についた。おにぎりやパンの空袋、惣菜やカップ麺のゴミばかりで、自炊している様子はなく、麻琴は心配していた。
「してない、……最近は」
キヨの視線が泳ぐのを麻琴は見逃さない。
「嘘や、ずっとしてないやろ」
「……だって、忙しくて。作る時間考えたら買った方が早いから」
「やっぱり」
麻琴はため息をつき、ぐいっとビールを煽り、タンッと缶をテーブルに置く。
「わかった、俺が作ったるわ。アレルギーとかないやろ?」
「え、いいの?」
「あるもんで適当に作るから期待せんといてや」
「麻琴が作るものなら、どんな料理でも嬉しいよ」
キヨはにこにこして、機嫌の良さが現れていた。その笑顔の可愛さを噛み締めつつ、麻琴はキッチンに移動した。
出来上がったのはチャーハンだ。具材はキャベツとウィンナー、卵というシンプルのものだったが、キヨは「すごい」と目を輝かせ「美味しい」と何度も褒めた。麻琴は照れながらも、内心嬉しく、ついつい酒が進む。
「ごちそうさまでした。本当に美味しかった」
「そんな褒めても、何もないで」
二人はチャーハンは完食し、机の上のつまみは残り少ない。先ほど日は落ち、外はすっかり暗い。この後キヨはどうする気だろうと、麻琴は隣に座るキヨを横目に、チューハイを飲む。
「良く飲むね」
「え?あぁ、こんなん全然飲んでるうちに入らんわ」
麻琴は今でビール二本、チューハイ一本を開けていた。思考はふわふわしているが、意識はしっかりしている。麻琴にとっては酔ってる状態ではない。
「榛の、えっと、友達のバーやったら、ぐだぐたになるまで飲んでるからな」
「でも、ちょっと顔赤いよ。大丈夫?」
キヨはそう言い、麻琴の頬を撫でる。火照った頬に触れたキヨの指は冷たく、麻琴はふるりと肩を震わせた。その反応が可愛く、キヨは麻琴の唇にキスをする。
「急に何やねん」
言葉とは裏腹に、麻琴はかぁと頬を赤らめ、瞳は欲しがるように揺れる。キヨはくすりと笑い、もう一度キスをした。酒に酔った麻琴は、目がとろんとして、目尻のほくろが色気を漂わせる。それに麻琴は気づいておらず、キヨは心配だった。
キヨはちゅ、ちゅと音を立ててキスを重ね、頬を撫でていた手で、首や耳に触る。麻琴はキスの合間に熱い息を漏らした。
「あんまり外で飲まないでね」
キヨの言葉の真意をわかっていない麻琴は、首を傾げた。それすら可愛く、キヨはもう一度唇を重ねる。
何度も与えられるキスで、身体の熱が再燃しそうになり、麻琴はキヨから顔を逸らした。
「そや、聞きたいことあってん」
キスを中断されたことで、キヨは少しムッとしながらも「なに?」と返す。
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