流されノンケサラリーマンが年下大学生にとろとろにされる話

えつこ

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5.ごかいめ

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「麻琴?」
 キヨが目を開けると、先ほどまで傍に座っていた麻琴の姿がない。麻琴と繋いでいた手は、空虚を掴む。慌ててベッドから起き上がると、額に乗せていたタオルが布団の上に落ちた。タオルはすっかり温くなっている。キヨが狭い部屋を見渡しても麻琴の姿は見えず、不安で鼓動が速くなる。麻琴を探すために、キヨはベッドから降りて立ち上がった。
「キヨ、起きた?」
 キヨが振り向くと、麻琴がベランダから室内に戻ってきたところだった。手には空の洗濯かごを持っていて、ベランダには洗濯物が揺れている。状況を理解したキヨは安堵し、身体の力が抜け、ベッドに腰かけた。
「まだ寝といたほうがいいんちゃう」
 麻琴は慌ててキヨに駆け寄り、キヨの隣に座る。二人分の体重で、ベッドが沈んだ。
「いなくなったかと思った」
 キヨは早くなった鼓動を落ち着けるために、深呼吸をする。そして、麻琴の存在を感じるために、麻琴の手に自らの手を重ねた。麻琴はそれを愛おしく思いながら、指を絡めるように手を繋ぎ直す。外の空気を纏う麻琴は冷たいが、キヨは心が温かくなった。
「ごめん、洗濯物干してて」
「うん、わかってる」
「ごめんって。不貞腐れんといてや」
 麻琴はキヨの頬を撫で、優しく微笑んだ。
 キヨは麻琴の笑みに、きゅっと胸が締め付けられる。溢れ出す感情に耐え切れなくなり、キヨはついに口を開いた。
「あんまり俺に優しくしないで」
「なんで?」
「……好きになっちゃうから」
「え?」
 麻琴は一瞬聞き間違えたと思った。それくらいキヨの声は消えてしまいそうで小さかった。しかし、キヨがかぁっと頬を赤らめているのを見て、自分の耳は正常だと麻琴は確信する。キヨの反応が可愛くて、麻琴は自然と頬が緩んだ。
「好きになったらあかんの?」
「っ、……わかんない……」
「俺はキヨのこと、好きやで」
 麻琴の突然の告白に、キヨはぱっと視線を上げた。そこには優しい表情で、キヨの言葉を待つ麻琴がいた。
「キヨは?」
「なに、が……?」
「俺のこと、好き?」
「その聞き方、ずるいよ」
「俺結構ずるい男やねん」
 麻琴はふふっと笑いを零した。キヨもつられて笑いをこぼず。すっかり麻琴の虜になっているキヨは観念して気持ちを伝える。
「好き」
「ちゃんと言ってや」
「麻琴が好き、です」
「なんで敬語やねん」
 キヨは照れ隠しで「うるさい」と返す。しかし、心情を吐露することが、これほどまでに恥ずかしいとは想像もしておらず、キヨは耳まで赤くした。
「ってか、ほんまに、え?キヨが俺のこと?好き?」
 ワンテンポ遅れて、今度は麻琴が混乱する。キヨがまさか自分を好きだなんて思いもよらなかった。両想いである実感が、じわじわと湧いてきて、麻琴はにやにやとした笑みをこぼす。
「え、うそ、めっちゃ嬉しい。キスしていい?」
「風邪うつるからだめ」
「あほは風邪ひかへんねん」
「それは迷信、っ……」
 麻琴はキヨの言葉を遮ってキスをした。いきなりのキスに、キヨは肩を跳ねさせ、絡んだ指にきゅっと力が入る。
「キヨ、なんか今日は可愛らしいな」
「そんなことない」
 主導権を握られたキヨはむすっとした。仕返しとばかりに、今度はキヨから麻琴にキスをする。キヨは麻琴の唇を貪りながら、空いた手で麻琴の身体を引きつけ、腰や背中を撫でた。唇を離すときに、ぺろりと麻琴の唇を舐め上げる。熱も相まって、キヨの身体は熱さを増す。ふーっと落ち着けるように息を吐き、欲情をまとった瞳で麻琴を見つめた。
「麻琴、好き」
「俺も、キヨが好き」
 ちゅ、ちゅっと触れるだけのキスを交わしながら、二人は熱い息を吐いた。キスだけでは物足りないとばかりに、指を絡ませ、身体を密着させる。お互いの鼓動が近くなり、呼応するように速くなる。
「元気だったら今すぐ押し倒してセックスしてる」
「キヨが元気になるの、楽しみにしてるわ」
 麻琴は軽口で返すが、腹の奥はきゅんと疼いた。二人はしばらく見つめ合い、気持ちを確かめ合うように、キスを繰り返した。
「ほんなら俺帰るわ。終電なくなるし、明日も仕事やし」
 麻琴は名残惜しいが、繋いだ手を離し、立ち上がる。早く帰らなければ、ずっとここにいてしまいそうで、セックスになだれ込みそうだった。床に置いていたジャケットとコートを着て、麻琴はそそくさと退散の準備を進めた。
「さっきのお粥の残りは冷蔵庫入れてるから。あとゼリーもあるから、お腹空いたら食べ」
「わかった。ありがとう」
「そんな寂しそうな顔せんといてや」
 ベッドに座ったまま、見上げるキヨの頭を撫でる。弱っているキヨが見せる甘えた態度が可愛くて、麻琴はキュンとした。最後に麻琴はキヨの額にキスを落とす。キヨは幸せそうに目を細めた。
「鍵はドアポストに入れとくから、無理したらあかんで。ゆっくり寝ときや」
 麻琴は先ほど掃除をした時に見つけた部屋の鍵を片手に、玄関へと足を向ける。
「麻琴、ありがとう。元気になったら連絡するから」
「待ってるわ。おやすみ」
 会話を交わし、麻琴はキヨの部屋を出た。鍵を閉めた後、ポストに鍵を入れると、麻琴はその場でしゃがみこんだ。はぁと大きくため息をつき、両想いである嬉しさを噛みしめていた。キスで火照った身体に落ち着けと言い聞かせ、立ち上がる。終電を逃せば大変だと、麻琴は駆け足でマンションを後にした。
 部屋に一人残されたキヨは、ベッドに倒れこんだ。先ほどまでの目まぐるしい出来事がフラッシュバックして、顔も身体も熱くなる。風邪を引いていることが恨めしい。晴れて両想いとなったのだから、早く体調を万全にして、麻琴とセックスしたい。キヨは布団に潜りこみ、瞼を閉じた。

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