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1.はじめて
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キヨは沸々と湧く興奮に、熱い息を吐いた。そして、麻琴の両足を解放し、麻琴の左足だけを肩に担ぐ体制に変える。
「ごめん、麻琴がエロ過ぎて止まんない」
切羽詰まったキヨの声に、麻琴はきゅんとしたのは束の間で、抽挿が再開されると、また快楽に飲まれていった。
「あっ、あ、そこっ、あ、いいっ」
角度が変わり、先ほどとは違う場所をがつがつと突かれ、麻琴は身体を震わせた。浅く出し入れされ、奥に深く入れられ、キヨのテクニックに麻琴は翻弄されるしかなかった。
「麻琴、ここは?」
「っあ、いいっ、きもち、いいっ、あっ」
「奥とどっちが好き?」
「どっちも、好き、好きやから…、もっと、してぇ…!」
麻琴の嬌声に煽られるように、キヨは腰の動きを速める。キヨもそろそろ限界が近かった。麻琴の中の締めつけに、キヨは小さく喘ぐ。
「またイく、あっ、あかん、っあ、あっ、あっ」
「イって、麻琴」
「俺ばっかり、イッてるからぁ、あ、っあ、キヨはっ……?」
息も絶え絶えに気遣う麻琴に、キヨは愛おしさが湧く。
「俺も、イくから、一緒に」
キヨの答えに、麻琴は満足気に頷いた。
「あ、っ…いいっ、イく、ああっ…」
「麻琴っ…」
「あぁっ、キヨ、あ、あ、イく、ああっ、ああああああ!」
麻琴は前と後ろの同時で達し、悲鳴のような声を上げた。同時に、キヨもゴムの中に放ち、その解放感に浸る。二人の荒い息が部屋に響いた。
キヨは麻琴から自身を抜き、精液が溜まったゴムを外す。ゴムを括り、ゴミ箱へと放り投げた後、ベッドへと倒れこんだ。全身が汗やローションや精液でべたべたして気持ち悪さもあったが、麻琴とのセックスの満足感が勝り、キヨは機嫌がよかった。
「ね、麻琴、気持ちよかった?」
目を閉じて余韻に浸っている麻琴は、ゆっくりと瞼を開け、キヨを見つめる。
「うん」
幸せそうに笑った麻琴は、再び目を閉じ、そのまま眠りに落ちた。キヨはふふっと笑いながら、しばらく麻琴の寝顔を見つめていた。
「身体が重いだるい吐きそう頭痛い」
麻琴は机に突っ伏して、呪詛のように文句を吐いた。
ラブホテル近くのファストフード店、二人は朝ご飯を食べにやってきたところだった。土曜日の朝の店内は盛況で、座席は九割ほど埋まっている。
麻琴と向かい合って座っているキヨの目の前には、ハンバーガーとハッシュドポテト、オレンジジュースが並んでいた。できたてのそれらをキヨはおいしそうに頬張る。
「朝からよう食べれるわ」
顔を上げた麻琴は、ホットコーヒーを一口飲んだ。熱くて苦い液体が喉を通り、胃に流れ込む。それだけで少し目が覚める気がした。
麻琴は朝ご飯を食べる気分ではなかったが、キヨがどうしてもと言うのでついてきたのだ。二日酔いとセックスのおかげで、麻琴のコンディションは最高に不調だった。
「運動したからお腹すいちゃって」
「運動って…」
「セックスだって運動でしょ」
あっけらかんと言い放ったキヨの言葉は、騒がしい店内では誰の耳にも届かなかった。麻琴は辺りをきょろきょろして、気づかれなかったことに胸を撫でおろす。
にこにことしながら、ハンバーガーにかぶりつくキヨを麻琴は観察する。昨晩は酔っていたが、今明るい店内で確認しても、麻琴はイケメンだった。この目の前のイケメンに、昨夜死ぬほど喘がされたことを思い出し、麻琴はかぁっと頬が赤くなる。キヨは宣言通り、麻琴を気持ちよくさせてくれたのだ。おかげで彼女に振られたこともすっかり吹っ切れ、むしろ気持ちいい体験ができてラッキーくらいの気分だった。
「あ、そうだ。朝までコースだったし、五万ね」
食事を終え、オレンジジュースを飲んでいたキヨは麻琴に料金を提示した。
学費のためにバイトをしているキヨだが、どうしてものときはセックスをしてお金をもらう。世の中には老若男女問わず、抱かれたい人は大勢いる。値段は拘束時間で決めていた。
麻琴に関しては、正直お金は要らなかった。ストレス発散で声をかけたとき、最初は地味なサラリーマンだという印象だった。しかし、終わってみれば、麻琴は可愛かったし、最高に気持ちいいセックスができたし、キヨは大満足だった。お金を請求したのは、キヨの一種の照れ隠しでもあった。キヨは断られると思ったが、意外にも麻琴は素直に財布を出し、中身を確認した。
「うわ、ごめん。現金全然入ってないわ。コンビニでおろしてくる」
麻琴は座席から立ち上がろうと腰を浮かす。キヨは思わず麻琴の手を掴み、引き留めた。急なキヨの行動に、麻琴は驚きながら座り直す。
「なに?」
「だって、お金とか高いとか、文句言わないんだ」
「え?あ、まぁ高いけど、風俗行ってもこれくらいするし、気持ちよかったし、よく眠れたし……」
麻琴は言っておきながら恥ずかしくなり、「ごめん、なんもない」と否定した。しかし、人肌に触れて眠るのは、心地よかったのは確かだ。誤魔化すように、コーヒーを一口飲んだ麻琴は、話を変えた。
「大学生やんな?学費とかサークルとかお金いるやん。俺も大学のとき、バイトしてお金使って、そんなんばっかりやったわ」
学生時代を思い出しながら、麻琴は財布から出した一万円札一枚を机に置いた。それはかろうじて入っていた万札だった。
「危ないことに使いなや。あ、クスリはほんまにあかんで」
念押しするような麻琴の忠告に、キヨはぽかんとする。出身地の違いか、麻琴の性格か、ずいぶんお人好しだと感心すらした。今ここでキヨが変な壺を売りつけても、麻琴は買ってしまうかもしれない。社会人である麻琴が心配になった。
「残りのお金どうしよ。振りこみとか?」
キヨの心配をよそに、麻琴は真剣に考えていた。
「次でいいよ」
麻琴は突然の提案が理解できず、首を傾げた。提案したキヨも、口走った言葉に自分で驚く。一晩だけの相手のつもりだったが、麻琴ともう少し関わっていたかった。こういう気持ちになることが少ないキヨは、心がざわつく。
「次って……。そんなん悪いし、今からコンビニ行っておろしてくるで」
「だから、次でいいって」
麻琴はキヨの提案が腑に落ちなかったが、キヨが言うならと承諾する。それに、あの快感をもう一度味わえる可能性を考えて、背筋がぞくりとした。
二人はスマホを取り出し、連絡先を交換した。混雑してきた店内に、二人は慌てて席を立ち、店を出た。
「ほんまに連絡してや。あと四万払わなあかんから」
「払うほうが言うことじゃないよ」
「ほんまやな」
麻琴は笑い、キヨもつられて笑った。
「またな。気をつけて帰れよ」
「うん」
二人は店の前で別れた。
キヨは麻琴の気遣いに、くすぐったさを感じた。次に会えるのはいつだろうと久しぶりにわくわくとしていた。
眩しい朝の光に、麻琴は目を細める。振り返ればキヨの背中は人混みに消えていた。今日は寝て過ごそうと思いながら、麻琴は駅へと向かった。
1.はじめて 終
「ごめん、麻琴がエロ過ぎて止まんない」
切羽詰まったキヨの声に、麻琴はきゅんとしたのは束の間で、抽挿が再開されると、また快楽に飲まれていった。
「あっ、あ、そこっ、あ、いいっ」
角度が変わり、先ほどとは違う場所をがつがつと突かれ、麻琴は身体を震わせた。浅く出し入れされ、奥に深く入れられ、キヨのテクニックに麻琴は翻弄されるしかなかった。
「麻琴、ここは?」
「っあ、いいっ、きもち、いいっ、あっ」
「奥とどっちが好き?」
「どっちも、好き、好きやから…、もっと、してぇ…!」
麻琴の嬌声に煽られるように、キヨは腰の動きを速める。キヨもそろそろ限界が近かった。麻琴の中の締めつけに、キヨは小さく喘ぐ。
「またイく、あっ、あかん、っあ、あっ、あっ」
「イって、麻琴」
「俺ばっかり、イッてるからぁ、あ、っあ、キヨはっ……?」
息も絶え絶えに気遣う麻琴に、キヨは愛おしさが湧く。
「俺も、イくから、一緒に」
キヨの答えに、麻琴は満足気に頷いた。
「あ、っ…いいっ、イく、ああっ…」
「麻琴っ…」
「あぁっ、キヨ、あ、あ、イく、ああっ、ああああああ!」
麻琴は前と後ろの同時で達し、悲鳴のような声を上げた。同時に、キヨもゴムの中に放ち、その解放感に浸る。二人の荒い息が部屋に響いた。
キヨは麻琴から自身を抜き、精液が溜まったゴムを外す。ゴムを括り、ゴミ箱へと放り投げた後、ベッドへと倒れこんだ。全身が汗やローションや精液でべたべたして気持ち悪さもあったが、麻琴とのセックスの満足感が勝り、キヨは機嫌がよかった。
「ね、麻琴、気持ちよかった?」
目を閉じて余韻に浸っている麻琴は、ゆっくりと瞼を開け、キヨを見つめる。
「うん」
幸せそうに笑った麻琴は、再び目を閉じ、そのまま眠りに落ちた。キヨはふふっと笑いながら、しばらく麻琴の寝顔を見つめていた。
「身体が重いだるい吐きそう頭痛い」
麻琴は机に突っ伏して、呪詛のように文句を吐いた。
ラブホテル近くのファストフード店、二人は朝ご飯を食べにやってきたところだった。土曜日の朝の店内は盛況で、座席は九割ほど埋まっている。
麻琴と向かい合って座っているキヨの目の前には、ハンバーガーとハッシュドポテト、オレンジジュースが並んでいた。できたてのそれらをキヨはおいしそうに頬張る。
「朝からよう食べれるわ」
顔を上げた麻琴は、ホットコーヒーを一口飲んだ。熱くて苦い液体が喉を通り、胃に流れ込む。それだけで少し目が覚める気がした。
麻琴は朝ご飯を食べる気分ではなかったが、キヨがどうしてもと言うのでついてきたのだ。二日酔いとセックスのおかげで、麻琴のコンディションは最高に不調だった。
「運動したからお腹すいちゃって」
「運動って…」
「セックスだって運動でしょ」
あっけらかんと言い放ったキヨの言葉は、騒がしい店内では誰の耳にも届かなかった。麻琴は辺りをきょろきょろして、気づかれなかったことに胸を撫でおろす。
にこにことしながら、ハンバーガーにかぶりつくキヨを麻琴は観察する。昨晩は酔っていたが、今明るい店内で確認しても、麻琴はイケメンだった。この目の前のイケメンに、昨夜死ぬほど喘がされたことを思い出し、麻琴はかぁっと頬が赤くなる。キヨは宣言通り、麻琴を気持ちよくさせてくれたのだ。おかげで彼女に振られたこともすっかり吹っ切れ、むしろ気持ちいい体験ができてラッキーくらいの気分だった。
「あ、そうだ。朝までコースだったし、五万ね」
食事を終え、オレンジジュースを飲んでいたキヨは麻琴に料金を提示した。
学費のためにバイトをしているキヨだが、どうしてものときはセックスをしてお金をもらう。世の中には老若男女問わず、抱かれたい人は大勢いる。値段は拘束時間で決めていた。
麻琴に関しては、正直お金は要らなかった。ストレス発散で声をかけたとき、最初は地味なサラリーマンだという印象だった。しかし、終わってみれば、麻琴は可愛かったし、最高に気持ちいいセックスができたし、キヨは大満足だった。お金を請求したのは、キヨの一種の照れ隠しでもあった。キヨは断られると思ったが、意外にも麻琴は素直に財布を出し、中身を確認した。
「うわ、ごめん。現金全然入ってないわ。コンビニでおろしてくる」
麻琴は座席から立ち上がろうと腰を浮かす。キヨは思わず麻琴の手を掴み、引き留めた。急なキヨの行動に、麻琴は驚きながら座り直す。
「なに?」
「だって、お金とか高いとか、文句言わないんだ」
「え?あ、まぁ高いけど、風俗行ってもこれくらいするし、気持ちよかったし、よく眠れたし……」
麻琴は言っておきながら恥ずかしくなり、「ごめん、なんもない」と否定した。しかし、人肌に触れて眠るのは、心地よかったのは確かだ。誤魔化すように、コーヒーを一口飲んだ麻琴は、話を変えた。
「大学生やんな?学費とかサークルとかお金いるやん。俺も大学のとき、バイトしてお金使って、そんなんばっかりやったわ」
学生時代を思い出しながら、麻琴は財布から出した一万円札一枚を机に置いた。それはかろうじて入っていた万札だった。
「危ないことに使いなや。あ、クスリはほんまにあかんで」
念押しするような麻琴の忠告に、キヨはぽかんとする。出身地の違いか、麻琴の性格か、ずいぶんお人好しだと感心すらした。今ここでキヨが変な壺を売りつけても、麻琴は買ってしまうかもしれない。社会人である麻琴が心配になった。
「残りのお金どうしよ。振りこみとか?」
キヨの心配をよそに、麻琴は真剣に考えていた。
「次でいいよ」
麻琴は突然の提案が理解できず、首を傾げた。提案したキヨも、口走った言葉に自分で驚く。一晩だけの相手のつもりだったが、麻琴ともう少し関わっていたかった。こういう気持ちになることが少ないキヨは、心がざわつく。
「次って……。そんなん悪いし、今からコンビニ行っておろしてくるで」
「だから、次でいいって」
麻琴はキヨの提案が腑に落ちなかったが、キヨが言うならと承諾する。それに、あの快感をもう一度味わえる可能性を考えて、背筋がぞくりとした。
二人はスマホを取り出し、連絡先を交換した。混雑してきた店内に、二人は慌てて席を立ち、店を出た。
「ほんまに連絡してや。あと四万払わなあかんから」
「払うほうが言うことじゃないよ」
「ほんまやな」
麻琴は笑い、キヨもつられて笑った。
「またな。気をつけて帰れよ」
「うん」
二人は店の前で別れた。
キヨは麻琴の気遣いに、くすぐったさを感じた。次に会えるのはいつだろうと久しぶりにわくわくとしていた。
眩しい朝の光に、麻琴は目を細める。振り返ればキヨの背中は人混みに消えていた。今日は寝て過ごそうと思いながら、麻琴は駅へと向かった。
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