はきだめで歌うラブソングを君に

えつこ

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3.これから先の話をしよう

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 歌声が聞こえる。身体がリズムを刻み、心が弾む。音が全身に染みわたって、心地よく、幸せな気分になる。この声の持ち主は、そうだ、俺の大好きで、大事な人……。
「……おとさん?」
 目を開けると、目の前に音さんの顔があった。楽しな表情で、鼻歌を奏でている。音さんは俺が起きたことに気づき、ぱちぱちとまばたきした後、微笑んだ。
「おはよう、ハルタ」
「おは……う、……い、ます」
 俺の声は掠れて、全然言葉にならなかった。その理由を考えて、昨晩の記憶を徐々に思い出す。
 意識を飛ばした俺は、あの後目が覚めて、シャワーを浴びることになった。音さんに介抱されていたが、結局浴室でもセックスをして、ベッドに戻ってきて、さらにセックスをしたのだった。全身のあちこちが変に痛く、後孔の違和感も、セックスの激しさを物語っていた。
 こういうことを繰り返していた一年前の俺は、なんて若かったんだろう。我ながらしみじみと思い出に耽った。
「身体、大丈夫?」
「はい、たぶん……」
「あ、水持ってくる」
 音さんが起き上がり、布団も捲れてしまったため、温かさが逃げていく。もう少し一緒にいたい。俺は音さんの腕を掴んだ。音さんは不思議そうに首を傾げたが、すぐに「わかった」と言って、もう一度寝転んだ。音さんが俺を抱き寄せてくれ、二人で布団の中で身を寄せ合う。お互いの肌が触れる感覚に、俺は自分が全裸であることに気づいた。
「まだ時間あるから、もう少し寝たら?」
 そう言った音さんは、俺の背中をとんとんと優しく叩き、また鼻歌を歌い始めた。まるで子供に子守歌を聞かせるようだ。しかし、俺は音さんの鼻歌に聞き惚れてしまい、眠れるわけがなかった。
「なに?寝ないの?」
「そんな素敵な歌聞いて、眠れるわけないじゃないですか」
「それ、すごい誉め言葉」
 音さんははにかみつつも、鼻歌を続けた。聞いたことのないメロディラインが新鮮で、俺は頭の中でベースを奏で、勝手にセッションをしていた。音さんは鼻歌を止めると、ふぅと息を吐き、俺を見た。
「いい曲だろ?」
「はい。新曲ですか?」
「そう、ラブソング」
「珍しいですね」
 OTOの楽曲の中で、ラブソングはあるが、数少ない。作曲コンペ用の曲かもしれないと漠然と想像した。
「早く聞きたいです」
「でも、聞かせるのはハルタだけだから」
「え?」
「これ、ハルタへのラブソング」
「っ、え……?」
「ハルタ、正式にOTOに加入しないか?」
「え、は?えっと、ちょっと待って……」
 次々と突きつけられる音さんの言葉に、俺は混乱した。同時に、目頭が熱くなる。我慢できずに、俺は泣いてしまう。
「ハルタ、え、なんで泣いて……」
「だって……、音さんが……」
「俺が?なに?」
 慌てふためく音さんを横目に、俺はただただ涙を流す。音さんとこうして一緒にいることができるだけでなく、俺のためだけにラブソングを作って歌ってくれたこと、OTOの正式なメンバーに誘ってくれたことが嬉しかった。



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