はきだめで歌うラブソングを君に

えつこ

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2.楽しかった昔の話を少し

8 *

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「やばっ、バイト!」
 いきなり大きな声を出したせいで、音さんは驚いて目を見開いていた。が、すぐにキスを再開した。
「音さん、んんっ、ちょっと」
「休めばいいだろ」
「そんなっ、ん、わけには……」
「今まで休んだことないだろ?」
 音さんはすっと目を細めた。確かにバイトを始めてから、休んだことはない。元来身体は丈夫だし、休めば店長や他のスタッフに迷惑がかかるからだ。
「そう、ですけど……」
「だと思った」
「なんでわかったんですか?」
 音さんは答えず、俺から離れ、ギターをスタンドに置いた。そして、俺にスマホを差し出す。その意味を悟って、俺は躊躇する。しかし、それは一瞬の躊躇いだった。俺はベースを音さんに返し、代わりにスマホを受け取る。
 音さんに見られながら、シンシティに電話をかけた。呼び出し音が続いた後、『ライブハウス、シンシティです』と声が聞こえた。店長の声だった。
「お疲れさまです。森河です」
『おぉ、ハルタ、お疲れ。どうかした?』
「すいません、今日シフト入ってるんですけど、体調悪くて……」
 嘘をつくのが心苦しい。俺は心の中で店長に土下座していた。
『そうか。急に寒くなったしな。こっちは大丈夫だから、ゆっくり休んで』
「ありがとうございます」
『声掠れてるし、ひどそうだな』
 店長の心配そうな声色に、これは喘いだせいです、とは言えるわけない。
「すいません、お疲れさまです。失礼します」
 電話を切って、スマホを音さんに返す。
「そんな恨めしそうに俺を見るなって」
「だって、んんっ」
 言葉を遮るように、キスで口を塞がれる。音さんの腕が俺の腰に回され、身体が密着する。お互いの性器をスウェット越しに擦りつけ合った。キスが深くなり、舌を絡め取られ、唇を貪られる。キスの気持ちよさに、俺の身体はすぐに熱くなる。
「ハルタと俺、相性いいよ。音楽もセックスも」
 熱っぽく囁かれ、俺は背筋がぞくりとした。
 

 その後、寝室に移動して、三回目のセックスをした。性欲のたかはすっかり外れ、獣のようにお互い求めあった。セックスを終えた後は二人で風呂に入り、そのまま眠った。
 次に目が覚めたときは、もう夜になっていて、外は暗かった。寒いなか、二人でコンビニに行き、適当に弁当を買った。一緒にコンドームも買ったが、気だるげな店員は全く気にしていないようだった。人通りが少ないことをいいことに、帰りは手を繋いで帰った。
 帰ってきて、キッチンの電子レンジで弁当を温めていると、後ろから音さんが抱き着いてきた。俺の尻に、熱くて硬いものが当たる。
「お弁当、もう温まりますよ」
「台所に立ってるハルタ見てたら、興奮しちゃった」
「なんですか、それ」
 スウェットの裾から、音さんの手が侵入してくる。外気で冷えた手が、腹や腰を撫でた。
「んんっ、だめ、ですって」
 音さんは俺の尻に性器を押しつける。それだけで、俺はきゅうと腹が切なくなってしまう。スウェットをまくり上げられ、胸を揉まれる。指で乳首を摘ままれると、思わず声が漏れた。
「ハルタ、乳首を開発しような」
「あ、やだっ、そんなとこ……」
「もうぷっくりしてる」
 音さんは俺の乳首を指で撫で、ピンと弾く。そして、腰を動かし、性器を俺の尻に擦り付ける。まるでセックスのような動きに、俺自身に熱が集まっていく。電子レンジがピピッとなり、弁当を温め終えたことを知らせてくれる。しかし、俺たちは止まらなかった。
「こんなとこに、ゴム発見」
 キッチンカウンターに置いたままのコンビニの袋には、コンドームが入れっぱなしだった。音さんは、こういうことになるのが、わかっていたのだろう。
「ハルタ、いいだろ?」
 耳元で囁かれ、俺は頷くしかなかった。
 この後、キッチンでセックスをした。それでも物足りず、結局寝室に移動してセックスをした。



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