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第三章:秋
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しおりを挟む 誠はどう慰めようか言葉を選ぼうとした時に、窓の外に一本のロープがぶら下がっていることに気づいた。
「西園寺さん……」
誠の言葉よりもかなめの行動の方が素早かった。机の引き出しから愛銃XD40を取り出したかなめは、そのままベランダに出るための窓を静かに開けた。
ロープは静かに揺れている。誠はそのままかなめの後ろをつけて行った。かなめはハンドサインで静かにするように伝えるとそのままロープの真下に座り込んだ。何者かが明らかにこのマンションを上ろうとしている。かなめは突如立ち上がると、ベランダの向こうにいる侵入者に銃を向けた。
「撃たないでー!」
間抜けなナンバルゲニア・シャムラード中尉の声が響く。誠はそのままベランダの下を見下ろした。シャムと吉田俊平少佐がマンションの壁面を登ってきていた。あまりに間抜けな光景に、誠はただ唖然とするしかなかった。
「どうもー……」
消え入るような声で、シャムはベランダに降り立つ。
「こいつ、結構使えるな。今度キムに教えてやるか」
ベランダに降り立った吉田が左腕を前に突き出す。手首の辺りで腕が上下に裂け、中にグレネードランチャーの発射装置のようなものが見えた。おそらくこれで屋上にロープの先端に付けたフックを撃ち込んでこうして二人は上ってきたのだろう。
「なんだ、またギミック搭載したのかよ」
「まあな。でも結構便利だぞ。お前も今度義体換えるときやってみれば?」
そう言うと左腕を元の形に戻してかなめの寝室にさも当然と言うように入り込む。
「靴ぐらい脱げ!馬鹿野郎!」
かなめの叫び声に慌ててシャムと吉田は靴を脱ぐ。二人は靴を誠に手渡す。仕方なく誠は玄関に靴を運んで行った。
「今日は第一小隊は待機じゃないんですか?」
誠の言葉に吉田はにんまりと笑う。
「どうせすることも無いからな。隊長が『かなめが神前を拉致ったらしいから様子を見てこいや』って言うもんで見に来たんだけど……なんもしてないんだな」
「オメエ等帰れ!黙っといてやるから今すぐ帰れ」
かなめは噛みつかんばかりに怒鳴り散らす。それを無視するようにシャムがとりあえずベッドの上に置いた誠がもらったゲームソフトに目を付ける。
「『心物語』だ!これって結構人気なんだよね。誰の?かなめちゃんの?」
「うぜえんだよ餓鬼!そいつはアタシが神前に……」
勢いで吐きかけた言葉の意味を理解してかなめが口ごもる。吉田、シャムの二人はにんまりと笑いながら誠とかなめを見回した。
「へー、プレゼントしたんだ。良かったね!誠ちゃん!」
シャムが屈託の無い笑顔で誠を見つめる。誠は頭を掻きながらそんなシャムを見ていた。
「それにしても汚ねえ部屋だねえこりゃ」
呆れ果てたと言う表情で埃の積もった床の上に吉田は足先で線を描く。
「余計なお世話だ!」
そんな吉田の頭をかなめが怒りに任せて小突いた。明らかにいつもの不機嫌なかなめの姿に戻っていた。
「これじゃあカウラの部屋の方がまだましなんじゃねえか?」
靴下に付いた埃を見て顔をしかめた吉田がそう言った。カウラと言う言葉を聴いて、かなめの目に殺気がこもる。
「そんな目で見るなよ。それより三時間後にあまさき屋に集合なんだけど、この様子じゃあすることないな」
「だったら帰れよ、な?」
かなめは敵意むき出しで吉田を見つめる。
「あまさき屋で何するんですか?」
誠はかなめと吉田の間にさえぎるように体をねじ込んで尋ねる。
「聞いてないのか?アイシャには伝えたはずなんだけどな」
「忘れてるな。まああいつは引越しとなるとねえ……どれだけのものを持ち込むかわからねえからな。それの算段を胸のうちでしていて忘れたんだろ」
気を落ち着かせようとかなめはタバコを取り出す。
「明後日から俊平とアタシ、遼南に出張でーす!」
ライターに伸ばされたかなめの手が止まる。
「法術がらみだな」
仏頂面だったかなめの表情に生気が戻る。それを見て黙って吉田は頷いた。
「まあそう言うこと。遼南軍や警察でもかなり法術適正者が発見されたってことで、遼南帝国青銅騎士団団長の御子神さんの戦闘技術指導のお手伝いに行くってわけだ。まあ、隊長が監修した面白くもねえビデオ上映して、さらにこいつの原稿棒読みの講義とか……、とにかくつまんねえことをしにいくわけだ」
シャムはふくれっつらをするが、特に言葉を出すわけではなかった。
「なるほどねえ、それに合わせてあのアメリカさんの歓迎会を今日やるわけだ」
かなめはそう言うと寝室にもしっかり置いてある灰皿を手に取った。
「それと俺等の壮行会な。しかし、まああのシンプソン中尉って結構かわいいよな」
突然、吉田から話題を振られて誠は周りを見回した。シャムは吉田にけなされたまんまのいかにも不満そうな表情で誠を見つめる。誠が目をやるとかなめは黙ってタバコに火をつけていた。こういう場面でわざと視線を泳がせているかなめに下手なことを言えば何をされるかわからない。
「そうですね。特に胸が……」
地雷を踏んだ。そう誠が自分の言葉を飲み込んだとき、かなめは誠の右手に思い切り火の付いたタバコの先を押し付けた。
「それは禁句だろ?な?」
かなめらしいサディスティックな笑顔が誠の目に入った。誠は手の甲を見るがさすがにすぐにかなめが火を遠ざけてくれたおかげで火傷の跡は残っていない。だが明らかに自分の振った話題で予想通りの動きをした二人を満足そうに吉田は見つめている。
「お前もそう思うか?そうだよなあ」
そして吉田はついに笑い始める。しかし、誠は自分で言いだした話なのに横目で見つけたかなめの右手のタバコが震えるのを見て顔を引きつらせた。
「あれだな。形はたぶんアイシャかマリアさんの争いだが、大きさではどこかの人工巨乳を抜いてトップにたったな」
「おい、吉田。オメエいっぺん死んだ方が良いぞ……」
机に置いた銃に手を伸ばそうとするかなめだが、次の瞬間には銃はシャムの手の中にあった。その早業に誠もかなめもただ立ち尽くすしかなかった。
「だめだよかなめちゃん!こんなの持ち出したら。それよりのど渇いた!」
「じゃあビールでも飲むか!あるんだろ?」
マイペースな二人に肩をすくめたかなめがそのまま部屋を出て行った。
「西園寺さん……」
誠の言葉よりもかなめの行動の方が素早かった。机の引き出しから愛銃XD40を取り出したかなめは、そのままベランダに出るための窓を静かに開けた。
ロープは静かに揺れている。誠はそのままかなめの後ろをつけて行った。かなめはハンドサインで静かにするように伝えるとそのままロープの真下に座り込んだ。何者かが明らかにこのマンションを上ろうとしている。かなめは突如立ち上がると、ベランダの向こうにいる侵入者に銃を向けた。
「撃たないでー!」
間抜けなナンバルゲニア・シャムラード中尉の声が響く。誠はそのままベランダの下を見下ろした。シャムと吉田俊平少佐がマンションの壁面を登ってきていた。あまりに間抜けな光景に、誠はただ唖然とするしかなかった。
「どうもー……」
消え入るような声で、シャムはベランダに降り立つ。
「こいつ、結構使えるな。今度キムに教えてやるか」
ベランダに降り立った吉田が左腕を前に突き出す。手首の辺りで腕が上下に裂け、中にグレネードランチャーの発射装置のようなものが見えた。おそらくこれで屋上にロープの先端に付けたフックを撃ち込んでこうして二人は上ってきたのだろう。
「なんだ、またギミック搭載したのかよ」
「まあな。でも結構便利だぞ。お前も今度義体換えるときやってみれば?」
そう言うと左腕を元の形に戻してかなめの寝室にさも当然と言うように入り込む。
「靴ぐらい脱げ!馬鹿野郎!」
かなめの叫び声に慌ててシャムと吉田は靴を脱ぐ。二人は靴を誠に手渡す。仕方なく誠は玄関に靴を運んで行った。
「今日は第一小隊は待機じゃないんですか?」
誠の言葉に吉田はにんまりと笑う。
「どうせすることも無いからな。隊長が『かなめが神前を拉致ったらしいから様子を見てこいや』って言うもんで見に来たんだけど……なんもしてないんだな」
「オメエ等帰れ!黙っといてやるから今すぐ帰れ」
かなめは噛みつかんばかりに怒鳴り散らす。それを無視するようにシャムがとりあえずベッドの上に置いた誠がもらったゲームソフトに目を付ける。
「『心物語』だ!これって結構人気なんだよね。誰の?かなめちゃんの?」
「うぜえんだよ餓鬼!そいつはアタシが神前に……」
勢いで吐きかけた言葉の意味を理解してかなめが口ごもる。吉田、シャムの二人はにんまりと笑いながら誠とかなめを見回した。
「へー、プレゼントしたんだ。良かったね!誠ちゃん!」
シャムが屈託の無い笑顔で誠を見つめる。誠は頭を掻きながらそんなシャムを見ていた。
「それにしても汚ねえ部屋だねえこりゃ」
呆れ果てたと言う表情で埃の積もった床の上に吉田は足先で線を描く。
「余計なお世話だ!」
そんな吉田の頭をかなめが怒りに任せて小突いた。明らかにいつもの不機嫌なかなめの姿に戻っていた。
「これじゃあカウラの部屋の方がまだましなんじゃねえか?」
靴下に付いた埃を見て顔をしかめた吉田がそう言った。カウラと言う言葉を聴いて、かなめの目に殺気がこもる。
「そんな目で見るなよ。それより三時間後にあまさき屋に集合なんだけど、この様子じゃあすることないな」
「だったら帰れよ、な?」
かなめは敵意むき出しで吉田を見つめる。
「あまさき屋で何するんですか?」
誠はかなめと吉田の間にさえぎるように体をねじ込んで尋ねる。
「聞いてないのか?アイシャには伝えたはずなんだけどな」
「忘れてるな。まああいつは引越しとなるとねえ……どれだけのものを持ち込むかわからねえからな。それの算段を胸のうちでしていて忘れたんだろ」
気を落ち着かせようとかなめはタバコを取り出す。
「明後日から俊平とアタシ、遼南に出張でーす!」
ライターに伸ばされたかなめの手が止まる。
「法術がらみだな」
仏頂面だったかなめの表情に生気が戻る。それを見て黙って吉田は頷いた。
「まあそう言うこと。遼南軍や警察でもかなり法術適正者が発見されたってことで、遼南帝国青銅騎士団団長の御子神さんの戦闘技術指導のお手伝いに行くってわけだ。まあ、隊長が監修した面白くもねえビデオ上映して、さらにこいつの原稿棒読みの講義とか……、とにかくつまんねえことをしにいくわけだ」
シャムはふくれっつらをするが、特に言葉を出すわけではなかった。
「なるほどねえ、それに合わせてあのアメリカさんの歓迎会を今日やるわけだ」
かなめはそう言うと寝室にもしっかり置いてある灰皿を手に取った。
「それと俺等の壮行会な。しかし、まああのシンプソン中尉って結構かわいいよな」
突然、吉田から話題を振られて誠は周りを見回した。シャムは吉田にけなされたまんまのいかにも不満そうな表情で誠を見つめる。誠が目をやるとかなめは黙ってタバコに火をつけていた。こういう場面でわざと視線を泳がせているかなめに下手なことを言えば何をされるかわからない。
「そうですね。特に胸が……」
地雷を踏んだ。そう誠が自分の言葉を飲み込んだとき、かなめは誠の右手に思い切り火の付いたタバコの先を押し付けた。
「それは禁句だろ?な?」
かなめらしいサディスティックな笑顔が誠の目に入った。誠は手の甲を見るがさすがにすぐにかなめが火を遠ざけてくれたおかげで火傷の跡は残っていない。だが明らかに自分の振った話題で予想通りの動きをした二人を満足そうに吉田は見つめている。
「お前もそう思うか?そうだよなあ」
そして吉田はついに笑い始める。しかし、誠は自分で言いだした話なのに横目で見つけたかなめの右手のタバコが震えるのを見て顔を引きつらせた。
「あれだな。形はたぶんアイシャかマリアさんの争いだが、大きさではどこかの人工巨乳を抜いてトップにたったな」
「おい、吉田。オメエいっぺん死んだ方が良いぞ……」
机に置いた銃に手を伸ばそうとするかなめだが、次の瞬間には銃はシャムの手の中にあった。その早業に誠もかなめもただ立ち尽くすしかなかった。
「だめだよかなめちゃん!こんなの持ち出したら。それよりのど渇いた!」
「じゃあビールでも飲むか!あるんだろ?」
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