春夏秋冬、花咲く君と僕

えつこ

文字の大きさ
上 下
30 / 57
第二章:夏

8 *

しおりを挟む


「……あっ、…っあ……」

 指で捏ねると、びりびりと快感が全身に広がった。椿自身からこぷりと先走りが溢れ、直腸からは分泌液が放たれる。内側はさらに濡れ、指の動きに合わせて、ぐちゅぐちゅと音を立てた。椿は快感に流されるように、指を三本に増やし、前立腺を刺激する。同時に、勃ちあがった自身も扱いた。

「あっ、……っん……」

 ベッドの上で痴態を曝け出す自分を想像して、椿は惨めになった。些細な抵抗として、声を出さないように、唇を噛んで我慢する。Ωであることを呪いながら、徐々に思考は快楽に蕩けていく。

『椿くん』

 急に秀悟の声や視線を思い出し、椿の身体が跳ねた。きゅうっと中が締まり、自らの指を締めつける。軽く達したことに、椿は気づかない。
 椿のフェロモンがぶわりと匂いたち、部屋の中に充満する。脳裏にちらつく秀悟の姿を振り払うように、椿は首を振った。しかし、身体が本能的にαを求める。奥が疼いて仕方ない。後孔を熱いもので埋めて、指で届かない奥を突いて欲しい。椿は物足りなさを感じながらも、貪欲に性器と後孔を責め立てた。

「……っ、ん……な、なむら…さっ……」

 椿は無意識に秀悟の名前を呼ぶ。そうすることで、幾分か満たされた気持ちになった。椿自身は完全に勃ちあがり、精液混じりの先走りを流す。すっかり熟れた後孔は限界が近づき、椿の指を咥えこんで離さない。

「あ……んっ、……だ、めっ……」

 身体を震わせ、椿は達した。自身と後ろの両方での絶頂に、椿の視界はちかちかと瞬いた。椿は力が抜けた身体をベッドへと預ける。今までの自慰とは比べ物にならない快感に、椿は混乱していた。実際にαとセックスすればどうなってしまうのだろうと怖さすら感じる。そのαが秀悟なら、と想像して、椿は思わず起き上がった。秀悟の名前を呼んだことにようやく気付き、かぁっと顔が熱くなる。全部発情期のせいだ、発情期が終わればきっと大丈夫だ。椿は自らに言い聞かせる。
 心を落ち着かせるために、花のことを考える。後期はどんな花を生けよう。どんな作品なら秀悟は喜ぶだろう。早く秀悟に会って、四季展の作品の感想を聞きたい。椿の思考が秀悟に流れていくのは止まらなかった。
 発情期は苦しいが、素晴らしい花を生けられるのならと、常日頃から椿は受け入れていた。しかし、今は発情期が早く終われと思ってしまう。それは、椿にとって初めての感覚だった。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

処理中です...