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第二章:夏
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しおりを挟む「七村くん、この前のお友達が来てるわよ」
事務所でパソコンに向かっていた秀悟は、パートの高木の声で、顔をあげた。高木は制服であるエプロンを身につけて、事務所のドアから覗き込んでいた。
「友達?」
秀悟は心当たりがなく、首を傾げる。一瞬友達という言葉に、椿のことを思い出した秀悟だが、椿がここに来るはずがない。また、友春であれば、友達という言い方ではなく、マネージャーと呼ぶだろう。
誰のことだろうと考えながら、秀悟は席を立った。高木の後ろをついて、バックヤードから店内へと移動する。
「生花コーナーでお待ちですよ」
ふふっと楽し気な高木に、秀悟は「どうしたんですか?」と尋ねる。
「イケメンは目の保養になるわねぇ」
高木の返答に、秀悟は「はぁ……?」と気の抜けた返答しかできなかった。高木がレジに戻るのを横目に、秀悟は入口近くの生花コーナーへと足を向けた。そこにいたのは静夏だった。
秀悟に気づいた静夏は、軽くお辞儀をする。
「こんにちは。お仕事中にすいません」
外は暑いというのに、静夏はきっちりとスーツのジャケットを羽織り、ネクタイを身に着けている。涼し気な表情で静夏は挨拶をした。
静夏の姿を見た秀悟は、一呼吸置いて、何度かまばたきをした。確かに静夏が存在することを確認して「こんにちは」と返す。高木は以前秀悟と静夏が一緒にいるところを目撃している。イケメンという高木の言葉にも合点がいったが、友達ではないことを後で訂正しておこうと秀悟は思った。
「これ、返すの遅くなってしまって申し訳ありません。クリーニングしてあります」
静夏が差し出したのは、紙袋だった。不思議に思いながら受け取った秀悟が中身を確認すると、ネイビーのテーラードジャケットだった。あの日、椿に貸したことを思い出す。
「クリーニングなんて、よかったのに」
「結構濡れちゃってましたから」
「わざわざありがとうございます」
「あと、これも受け取ってください」
静夏から茶封筒受け取った秀悟は、封筒の両面を検める。中には四季展のチケットが入っていた。答えを求めるように静夏を見ると、静夏はにこりと微笑んだ。
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