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3.きもち
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しおりを挟む「先輩、あぶないですって」
「だいじょーぶ」
俺は先輩の肩と腰を支えながら、ホテルの廊下を歩いていた。廊下の照明は最小限で、部屋番号を見逃してしまいそうになる。
ようやく辿り着いた部屋のドアを開けると、部屋の中心に大きなベッド。部屋の照明は控えめで、ベッドの周辺は間接照明で雰囲気作りがされていた。まさしくラブホという部屋の作りに、俺はげんなりとした。
結局、居酒屋の閉店まで居座った俺たちは、宿泊場所を探して、深夜の街を彷徨った。燦然と輝くラブホの看板を見つけ、抵抗感があったのは一瞬で、直ぐにホテルの中へと足を踏み入れた。俺も先輩もぐだぐたに酔ってしまい、とにかく横になれる場所ならどこでもよかったからだ。
大きなベッドに、もつれるように倒れ込んだ。ぎしりとベッドが軋む。柔らかい布団の感触にほっと一息ついた。隣を見ると、同じように倒れこんだ先輩と目が合った。
「ふふっ」
先輩が幸せそうに笑いをこぼす。酔っているのか、寝ぼけているのか、わからない。潤んだ瞳と火照った頬が、間接照明に浮かび上がる。
「やまと」
先輩はたどたどしい言い方で、俺の名前を呼び、身体を起こした。どうするのだろうと、挙動を観察していると、先輩は俺の身体の上に乗っかろうとする。
「ちょっと、先輩」
俺は慌てて起き上がり、先輩から身体を引き、逃げるようにベッドの隅へと移動する。先輩はその場にへたり込み、不満そうな顔をした。
「なんで?」
「なんでって?」
「えっちなこと、しにきたんじゃないの?」
「は?」
「ここ、らぶほなのに?」
「え、ちが……、いや、ラブホですけど……」
「おれ知ってるよ、えっちなことするとこって」
「それは……、えっと…… 」
俺は頭を抱える。今の先輩とは会話が成り立たないことは明らかだ。とりあえず早く眠らせてしまうしかない。
「とりあえず、そこに寝て、目を瞑って、寝ましょう。寝て下さい」
「やだ、大和といっしょがいい」
先輩はむぅと不機嫌そうに顔をしかめる。酔うと甘えがちになるのは、今までの経験からわかっていたが、今日は度が過ぎている
「やまとは俺といっしょ、やだ?」
幼い口調と首を傾げる仕草に、思わず可愛いと感じてしまう。俺はその感覚をうやむやにしたくて、首を横に振った。
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