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異世界編-神の遊戯

水晶

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 「どういうつもりだ……どう落とし前をつける」

 グレイバニアの国王、ゼネリックは不服そうにこちらを見ている。
 その場には3つの勢力のほとんどが集結している。

 そして苦労し倒し、気を失っていたはずのレスカの姿は消えている。


 「しばらく、悪さはできないさ……」

 それくらい、徹底的にアストリアにぶちのめされた。
 そう確信するように、ゼネリック王に言う。


 「だが、奴の水晶《せいめい》を破壊していないのだろ」

 とどめを刺していないことに、その不手際に喚き散らす。


 「大丈夫……汚役《あと》は任せてもらおう」

 黙って聞いていたリエンが名乗り出る。


 リエンの部下の一人が縄に囚われた見知らぬ女性を連れてくる。


 「お父様、その者は?」

 その見知らぬ女性に目を向け、ライトが自分の父に問う。


 「わたしなりに調べた、私の世界の守り方だ」

 リエンは一人苦笑いをしながら……
 最終目的地へと向かった。


 中央に広がる湖。
 日は暮れかかり夕日が湖オレンジ色に染め上げている。

 その場に両ひざをつくように座る。


 「……無駄です、来ませんよ……」

 女はその行為が無駄であることを告げる。


 ・

 ・

 ・


 誰かに同情されたい訳じゃない……
 だから、自分の過去がどうとか、
 自分の振る舞いが正しいとか間違えだとか、
 そんなことはどうでもいいんだ。

 僕はただ……僕の目の前の光景が……
 僕はただ……僕なんかのせいで壊れてしまったものを……

 それなのに、笑っている奴に……

 世界は因果応報で成り立つべきだ。
 それがなされないのであれば、

 そんな悪がただ乱暴《せいぎ》を働く世界に……

 この僕が因果応報《それ》を実行しよう。
 それが、僕を世界を壊す結果だとしても……


 意識が朦朧としている。

 どこをどう歩いてきたかも覚えていない。

 壊すこと、壊されることを望んだはずだたのに、
 僕はただ、逃れるようにこの場所に居る。


 「この……虫……」

 尻の部分が赤、青、黄色の順に光らせながら辺りを飛んでいる。

 なんだか……懐かしくて……
 なぜか、その記憶から全てをやり直せるような気がして……

 その虫へ記憶に手を伸ばす。
 その虫を握りつぶすようにてのひらにおさめる。


 それは、本当に記憶の中の画面をロードするかのように……

 目の前には、十年後女性《みしらぬおんな》が立っている。


 「サーニア?」

 10年の年月……
 自分は氷の中で眠る中で、十歳も年の差がついた。

 今更、僕は何を望む?


 「だめ……来ないで……なぜ来たの?」

 目の前の女性は、突き放すように言う。


 「あの……えっと、そうだ……」

 もともと口下手で、誰かと交流することなど苦手だった。
 それでも、僕はなぜか懸命に彼女と繋がる何かを見つけようと……


 「光る……虫を見つけたんだ」

 握りつぶしてしまったのではないかと不安もあったが、
 虫はてのひらから逃れるように空を飛び回る。

 固い笑顔でサーニアを見るが、そんなきっかけが手のひらからのがれ、追うように手を虫のほうへと伸ばす。

 いまさら……どうして誰かと繋がろうとしているんだ?

 しかし、そんなそらに浮かんだ虫を合図にするように……



 「撃てぇーーーーっ」

 「えっ?」

 そんな声をした方を振り返る。


 「レス君……彼女の周囲にだけ結界をお願いする」

 言われたとおりに、レスが前方の女性の前に結界をはる。


 ・・・


 そうだ……世界は因果応報……

 どうして、現世での破壊だけで満足しなかった……

 悪事はいずれ我に返る……

 そうでなければならない……


 だから、これは……僕が望んだ結末だ……


 僕の中の水晶《なにか》が音を立てて崩れ去った。


 僕を狙った矢だっていうのに、僕は恩着せがましく、
 両手をひろげて、まるで後ろの女性を守るように立っている。


 「……リスカ?」

 後ろの女性がそんな僕を心配するように……


 「どうして……?」

 「僕は、誰よりも僕が嫌いだったんだ……僕なんかが、僕のせいで犠牲になったもの、そんな悪を僕にはどうにすることもできない……壊す以外に方法なんて思いつかなかった……だから……だからね……」

 自暴自棄と言い訳がぐちゃぐちゃで……


 「だから……因果応報……僕はそれを実行した……」

 「だからね……これも因果応報《じごうじとく》……だったんだ」

 水晶の砕けたリスカはその場に倒れ込む。


 「……あなたたち、さいてーよっ!!」

 サーニアが周囲の者に向けて叫ぶ。



 ・

 ・

 ・



 「レス君、私を軽蔑するかい……」

 振り返らない、どこかやりきれない背中でリエンが俺に語りかける。


 「……関心はしませんけど……」

 魔力を使い果たしその役目を果たせなかった……
 そんな言葉はいい訳だ……

 きっと……誰かがやらなければならなかった……
 それを押し付けた、俺の責任《ひきょう》でもある。
 俺に、その言葉を吐く資格は無い。


 「さて……少年、こっからどうするんだ?」

 セティが俺の隣まで歩み寄ると訪ねてくる。

 これで水晶は3つ消滅した。

 俺、セティ、リプリス、そして王国、ギルド、学園。
 残されている水晶。


 どうする……ここにきて、取り合った手を突き放すか?


 このゲームのルールが本当なら、
 水晶、3つ分の魔力をフィーリアは失ったはずだ。

 それは、逆に残りの6つの水晶に匹敵する魔力を所持しているのなら……

 あの領域能力《ルールブック》の前には手も足も出ないかもしれない。

 半分……に、後、二つの水晶《まりょく》は奪いたい。


 さて……その提案《せっとく》は通るだろうか……



 ・・・



 「ふざけた事を抜かすなっ」

 案の定、国王、ゼネリックは俺の提案に嫌悪な感情を向ける。
 さすがに、ギルドの長のキリングも無言でいる。


 「あくまで、最後の仕上げ……でって話です」

 「そこまで、たどり着いて……それでも、力が及ばなかった場合はどうか、その作戦を飲んで欲しい」

 俺は、ゼネリックとキリングにそう言葉を残す。


 巨大な瘴気の塊の衝突を、阻止をして……

 たった一人の災害《おとこ》を阻止をして……


 そんな二人の英雄の働きがあったが、
 それでも、ここまでの消耗は相当なものだ。

 それでも……


 「何の企みか遊戯《あそび》かは知らないが……」

 負けるわけにはいかない……だろ。


 「あーーー、めんどくさぁ」

 そんな俺にセティが続くように言う。
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