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学園編-闇

最凶

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 何処か視界の端が曖昧にぼやけている。
 見知った一室……

 「似合ってるよ……」
 何処かで見たようなシチュエーション。

 青髪の王子様は俺の背後に立つと、甘い声で囁く。


 「今日は白だ……白も悪くない」
 目の前の姿見には俺が白のドレスに身を包む姿が映っている。

 気がつくと……俺はベッドに横たわり、
 青い髪の美少年が、右手をマッドに手をつき自分の体重を支えている。

 「……や、やめて」
 思わずか弱い声が漏れる。

 「……ツキヨには、許していただろ」
 ツキヨには、これくらい顔を近寄られても嫌がっていなかった。
 そうスコールが俺に言う。

 「……見ていたのか?」
 いろんな意味で汗をかいている。

 「……あぁ、レス……さぁ、俺の前でもその壁《けっかい》を解いてくれ……もっとお前を求めさせてくれ」
 ぐいっとさらにスコールが俺に近寄ると、
 
 「さぁ……心《けっかい》を開いてくれ」
 そう、意味深にスコールの右手が俺の太ももに伸びる……



 「うわっ!!!!」
 俺は大量の汗と共に叫びながら身体をベッドから起こした。

 「どうした……悪い夢でも見たか?」
 黒い髪……ポニーテールの眼鏡の女性がベットに腰をかけながら、
 俺の顔を無表情で眺めている。

 「あぁ……ここ最近、とんでもない悪夢を続けて見るようになった」
 そうツキヨにこぼす。


 「……どんな夢だったか知らないが……一応、今はわたしがあんたを守る、そういう話だったな、安心しろ」
 そうツキヨが俺に言う。

 「……ほんとうか?」
 その台詞に……少し頬を赤らめ

 「あ……あぁ……あんたらしくない、弱気な台詞だな」
 急な甘えたような台詞に……少し驚いたという様子でツキヨがいう。

 「……なら、俺が生徒会長に襲われそうな時は、あの人をぶっ飛ばしてでも俺の身体《ていそう》を守ってくれ」
 ツキヨの顔はすぐに呆れたような顔に変わる。

 「なんの話だ……どんな夢を見た、お前は」
 そうため息を漏らしツキヨは言った。





 「どういうことだっ!」
 前ならえの先頭のポーズで、レインがそう低俗をにらむ様に俺を見下ろしている。

 「……いや、彼女に俺の護衛をだな……」
 内緒で拾った捨て猫が親にバレた時のような気分……
 いや、そんな経験はないんだけど。

 「聞いていないっ!」
 わたしはそんな事、一言も聞いていないとご立腹の様子だ。


 ツキヨはまったく自分には無関係という風に、顔を横に向け、
 完全にレインを視界に入れないようにしている。

 「そもそも、レス、貴様はわたしの護衛だろっ」
 そう右の人差し指を俺に突きつける。

 そう……だったのか?

 「……護衛している人間が護衛をつけるのは……駄目なのか?」
 俺がそうレインに返すが……
 
 「……だめではないな」
 顔を背けたまま、ツキヨが変わりに回答する。

 「これは、こやつとわたしの話し合いだ、貴様は黙っていろっ!」
 俺に突きつけていた指をツキヨに向ける。

 「……それは、失礼した」
 顔を背けたまま、詫びいれる気のないトーンでツキヨが返す。

 「だいたい、何のためにっ」
 この女を護衛などにしたのかを問いている。

 「……何者かに命を狙われているみたいらしいからな……それに、お前の兄様からも俺の身体《ていそう》を守るために協力してくれる事になった」
 そう俺は答えるが……

 「後者の場合は……即刻に契約を破棄しよう」
 そう素っ気無くツキヨが返す。

 「……むしろ、そっちの方が俺にとっては重要だ」
 そうさらに返す。
 が……軽く聞き流される。


 


 通学路……特に学園が近くなると、意外な組み合わせに人の目線が気になる。
 無理も無い。
 

 「……ここからは私も自分の学生の本分がある、悪いが放課後までは問題に巻き込まれるなよ」
 そうツキヨは俺に告げ、自分の教室へと向かう。

 「……あんたもな」
 実際に、闇となる敵にやりあっている。
 俺以上に目をつけられていてもおかしくは無い。

 
 俺を誘拐した3名……同じ学園の制服を着ていた……
 少なくとも、学生であり……
 この学園の何処かに今も普通に潜んでいる可能性が高い。

 そして……それがあの3名だけとは考えにくい。

 

 よく見知った生徒以外が怪しく思える中……授業を終える。

 ツキヨに放課後、生徒会室に来るよう言われてた。


 何かあったのだろうというのはすぐにわかった。

 扉が開いていた。

 というよりは、壊されていた。


 破壊された奥には……大きい図体の男が血だらけで倒れていた。
 かつて、生徒会との交流戦で、ヴァニが戦った相手と思われる。
 ストーン=ハガー。

 近くには、ツキヨがそんな彼を手当てしているようだった。


 「……私が狙いだというのなら……直接私を狙えばいいものを」
 そう……ツキヨがこぼす。

 「いったい何が……?」
 俺は彼女にそう尋ねる。

 「連中の見せしめだろうな……逆らえばどうなるかということだろう」
 そう俺と問いに答える。

 「……何事だ」
 続けて、スコールが入ってくる。

 「……誰の仕業だ」
 そのストーンの姿を見てスコールがツキヨに問う。

 「わかりません……」
 そう……無表情で答える。

 「……俺のせいか?」
 そうぼそりと俺が呟く。

 「うぬぼれるな……」
 そうツキヨがその呟きに返す。

 「ストーンほどの男がこう無残にもやられ……私や生徒会長の感情を乱せるほどの出来事がお前一人のために起きたとでも言いたいのか?」
 そうツキヨの瞳が冷たく俺を睨む。

 「……いや、すまない」
 そんなツキヨの冷たい気迫に押されそう返す……が、
 少なくとも彼女を巻き込む要因は俺だ。
 そんな彼女を狙った者が……この生徒会を狙い、
 たまたま、先にこの教室にいた彼が狙われたとしたのなら……


 「おやぁ~、仲間割れかなぁ」
 オレンジ色の長い髪の女性、制服の上着をマントの用に羽織っている……二人の女性を引き連れて、教室の中に入ってくる。

 「レイフィス=リターン……」
 そう、おそらくオレンジ色の長い髪の女性の名をスコールが呼ぶ。

 「自己紹介をありがとう……生徒会長、スコール=アクア」
 そうレイフィスと名乗った女性が言う。

 「お前の仕業か」
 自分の背で血まみれで倒れる男……

 「あらあら、酷いねぇ、誰がこんなこと」
 白々しく言うレイフィス。

 「咲けっ初桜っ」
 そう呟き、ツキヨが桃色の刀を抜刀する。

 一気に詰め寄り、ばさりと躊躇無くレイフィスを斬り捨てる。

 その痛みに苦痛の笑みを浮かべるも……

 「……戻れ」
 レイフィスがそう呟く。

 なんだ……
 この感覚……

 何処か……あの力に似ている、そんな直感。

 1年A組 ハイト=クロックタイム……時を止める能力。
 だが……どこか違う。
 そこまで……便利ではないだろう……
 ただ、それ以上に……厄介である気もする。

 現に回復能力でも使ったかのように目の前の女は、涼しい顔で立っている。

 「……生徒会……いや、元生徒会……ここは私たち、裏生徒会が貰いうけることにするよ」
 そうレイフィスは不適に笑うと、両腕に赤紫の炎の闘気をまとう。

 右、左と拳を繰り出すが、それらをツキヨは回避し、すぐに初桜でカウンターの一撃を入れるが……


 「戻れ……」
 そう彼女が呟くと……
 そんな彼女の一撃はまるで無かったように……

 そして……

 「ぐっ!」
 いつの間にか繰り出していたのか……レイフィスの一撃を受けたツキヨが教室の壁に叩きつけられる。

 「……どうなっている?」
 ……とても、拳を繰り出す瞬間など無かった。
 それに、彼女《ツキヨ》ほどの者が、あんな無抵抗に一撃を受けるだろうか?

 時を止めている訳ではない……では、あの女はいったい何を?

 「集え……貫けっ」
 スコールが創り出す魔装具が一気にレイフィスを襲う。

 「戻れ……」
 スコールの魔装具が彼女に届く瞬間……レイフィスの姿が消えるように……

 「いつの間に?」
 瞬間移動するように、その立ち居地をずれている。

 あのレイフィスという女性が呟く言葉……そこから推測する。
 もしも、その能力で正しいとすれば……

 やはり、その能力はハイト=クロックタイムの劣化版であり……
 それ以上に危険な能力だと言えるだろう。


 レイフィスの反撃の拳をスコールは回避する……
 5、6撃を避けただろうか……

 「型どれ、セイバー」
 そうスコールが言い剣を創り出す。

 一気に反撃に出るためレイフィスとの距離を縮める。

 「だめだっ!」
 咄嗟に俺はスコールを制止しようと叫ぶが、その声は遅かった。

 「戻れっ」
 そうレイフィスは呟く。

 同時に俺はスコールの前に結界をはる……が

 スコールもツキヨ同様にいつの間にか繰り出されるレイフィスの一撃を受け吹き飛ばされる。

 「うわさの1学年の転入生かな?」
 そうオレンジ色の髪とマントのように羽織る制服をなびかせ、俺の方を向く。

 「どうやら、私の能力に気がついたのは……レス君だけのようだね」
 そうレイフィスが俺に言う。

 「自分の行動を遡る……受けたダメージも無かったことにでき、自分の攻撃を繰り出した場所に誘導して時間を遡ることでその攻撃を直撃させる……」
 俺はその推測を彼女に言った。


 「あはははっ……お見事、冷静に判断、本当にお利口さんだよ」
 そうレイフィスは笑いながら……

 「さて……それが理解できたところで、レス君、どうする?」
 赤紫の闘気の拳が一気に襲い掛かる。

 それらを結界を巻いた腕で防ぎ続ける。
 壁に追い詰められ、防ぎ続けるが……
 時を戻す能力以外にも、その闘気の拳だけでも十分すぎる能力としての性能をしている。

 レイフィスはニヤリと笑みを浮かべ……
 拳を繰り出し続けながら……

 「戻れっ」
 そう呟く。

 一瞬……残像のようにレイフィスの姿が消えると……

 「ぐっ!?」
 残像のような今までのレイフィスの拳が現れる。
 さすがに、いつどの場所に拳を繰り出され防いだかなんて覚えてなどいない。

 その何発かの拳を受け、俺も壁に叩きつけられる結果になる。


 「……生徒会の教室はわたしたちが貰い受ける……それと……」
 レイフィスは俺の胸倉をつかむと、自分の顔のそばまで持ち上げる。

 「さて……レス君、昨晩……他の連中が勧誘に失敗しているようだが……今一度聞いてみよう、わたしのものになれ、そうすれば……ここに居る皆を無事を保障しよう」
 そう、生徒会の者を人質にするようにレイフィスは俺に拒否権などないよう言う。

 「……聞くな」
 そう廊下から声がする。

 「……君はわたしのものだからな」
 金髪のきれいな長い髪……
 ワイン色の瞳が俺を捉える。

 「私が残っている学園で、よく好き勝手してくれたものだ」
 レイフィスの付き添いの二人の生徒はいつの間にかうずくまっている。

 相変わらずの規格外……
 だが……このレイフィスという女も……負けない規格外だろう。

 言うならば正当と邪道……二つの最強。


 「その手をさっさと離せ……」
 俺の胸倉をつかむ手を言っているのだろう。

 「今日は随分とおしゃべりだね、ルンライト=ブレイブ」
 そうレイフィスは言い……

 「まさか、あんたまで出てくるなんて思わなかったよ」
 そうレイフィスはライトに言うが……

 ライトはまゆをつりあげ、怒りの眼差しで……

 「その手を離せっと言っているっ!!」
 力強く言い放つと一気に距離をつめる。

 青白く輝く剣が握られ、あっという間にレイフィスの身体を捕らる。
 激しく吹き飛ぶレイフィス……だが……

 「戻れ……」
 そうレイフィスが呟くと……

 何事もなかったようにライトの前に立っている。

 そうだ……ライトがどんなに強くてどんな強力な攻撃能力があったとしても……
 彼女のこの力は無敵に近いものがある。

 
 ライトは気にすることなく、自由になった俺の身体をかかえると、
 壁を背に据わらせる。

 「……少し、待っていろ」
 そうライトは俺に告げると、再びレイフィスのほうを向く。


 不意をつくように一気にライトに赤紫色の闘気を宿した拳を幾度も繰り出すが、
 ライトにそれが当たることはない。

 そして……

 今度はライトがレイフィスに詰め寄る。

 「だめだ……」
 そう俺は声を絞り出すが……

 「……見くびらないでほしい、君の知るルンライト=ブレイブを……」
 そうライトは振り返り俺に告げると……
 正面に向き直る。

 「戻れっ」
 そうレイフィスが呟くと……
 ライトの瞳が何かを追うように細かく激しく動く。

 「……ほんとうにバケモンかよ、あの人」
 隣で壁を背にしていたツキヨがライトに向けて言い放つ。

 あんなものを見切れるのは……この世界、どこを探してもあの人くらいではないだろうか……。

 俺の結界も……ツキヨとスコールの運動能力を持ってしても避ける事が適わなかった……時戻しの攻撃。
 数秒前の拳の動きをひとつひとつ思い出すように全ての回避ルートを導き出す。

 くるりと身体を回転させて、青白く輝く剣でレイフィスを斬り捨てる。

 再びレイフィスが激しく吹き飛ばされるが……

 「戻れ……」
 そう呟くと無傷でレイフィスがそこに立っている。

 やはり……ある意味この能力は無敵《さいきょう》なのだろう……
 そんなライトの強力な一撃すら無かったように……

 「残念だね……わたしの能力の前では、その自慢の力も通用しないよ」
 そうレイフィスは不適に笑うが……

 ライトはなにひとつ表情を崩すこともなく……

 「構わんさ……何度でも貴様を吹き飛ばすだけだ」
 凛とそう言い捨て、再び剣を振るう。

 「……戻れっ」
 苦痛の顔を浮かべるが、すぐに涼しい顔で立っている。

 目の前に戻ったレイフィスをすぐさま、ライトの剣が襲う。

 いくら、時を戻して無かったことにできるとはいえ……
 その受けた時の痛みはあるのだろう。
 その苦痛を幾度も繰り返す……。

 「くっ……」
 レイフィスは時を戻すのをやめる。

 苦痛の顔をしたまま……連れ二人を引きつれその場を立ち去った。

 
 ライトは特に相手を追うことなく、
 俺に笑顔で向きかえると。


 「無事で良かった」
 そう俺に告げた。


 味方にすると……本当にこの人ほど頼りになる人はいないだろうと……
 本気で思う。
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