20 / 213
学園編-学園最強
ヒーロー
しおりを挟む
「さて……いよいよ、ナイツと小僧の対決か……」
観客席でそうリングを見下ろしながらアストリアが言う。
「攻撃、守備力……素早さ……ずば抜けた部分は無いが、全てに置いて高水準、攻守に切り替えが可能な能力……場合によっては、小僧、能力は貴様の上位互換にあたる……そうか、そうでないか……中々に楽しめそうだ」
そうトリアが軽い笑みを浮かべ言った。
「……レス、見せてくれ……君の可能性を」
そう……ライトが隣で呟く。
「それでは、大将戦……開始します」
そのラビの掛け声と共に試合がはじまる。
気がつけば、だいぶ……この異能力バトルになれてきている自分に今更違和感を覚える……
だが、今、それを困惑している暇などない。
「参ります……」
以外にもいち早く動くのはクリアだった。
にぎりこぶしを作った左手を前に突き出し、そのこぶしを左に90度ひねる。
「貫け……」
そうクリアのめがねの奥からは普段余りみない真剣な眼差しが相手に向けられる」
青白い光で精製された、洋弓……
弦に手をかける。
現れる光の矢……クリアが弦をはじくと矢がまるでレーザー光線のように一瞬で、ウルハめがけ飛んでいく。
同時に、ナイツが動くと、その場から姿を見失う。
「ご無事ですが、お嬢様」
な……
周囲の目がいろんな目でその二人に向けられる。
矢の一撃からウルハを救ったナイツが彼女をお姫様抱っこする状態でトンとその場に着地する。
「うむ……ナイツ、助かった」
そうウルハがナイツに返す。
「感謝には及びません……わたしは貴方のヒーローです」
スコールとは別の紳士的な雰囲気のイケメン。
そっとリングに、ウルハを降ろす。
「ナイツ、反撃といくぞ」
そうウルハはこちらを睨み
「我に従え……」
そう言って、紙幣のようなものを手に天に腕をかざし……
紙幣をばらまく。
「歴戦の戦場に名を残した……スナイパーよ」
そうウルハの言葉に……
一人の男が召喚され現れる。
男は、後方から銃を構え……
銃口から火をふく。
が、クリアに届く寸前でその銃弾は俺の結界に防がれる。
「ありがとうございます」
そうクリアが俺に礼を言う。
「俺も……無駄にお姫様抱っこでもするべきだったか?」
そう笑って返すが……
「いえ……そんな……大丈夫です」
そう否定され……
「とても、魅力的な提案ではありますが……」
そうぼそりと言う。
「参ります……」
再びクリアはそう真剣な眼差しで言う。
「ミラー発動」
続けてクリアが言う。
不意に俺たちとナイツたちの位置する中央の上空あたりに透明な水晶が現れる。
突き出した浸り手にはクリーム色の光の和弓が握られている。
クリア……今度は何をするつもりなのか……
作り出した水晶に向け、その光の矢を放つ。
「弾け……」
そうクリアは言うと、
水晶に印が刻まれ矢が吸収されるように消え……
光の矢が3本に分身するようにナイツ、ウルハ、召喚された男に向け飛ぶ。
召喚された男を無視し、ナイツはウルハの前に立つと迫る光の矢に手をかざす。
召喚された男は矢に貫かれその姿が消える。
ナイツに迫った矢はかざす手の前で消滅する。
「防御……能力?」
レス同様に、クリアの光の矢を無力化した能力に、観客席のレインが反応する。
「はい……レス様のように自由な場所に発生させることはできないようですが、強力なシールド発動能力のようです」
リヴァーがその能力をサーチする。
「我に従え……」
ウルハは先ほどより多くの紙幣を握り締めそれを上空になげる。
現れる、数多の見知らぬ過去に歴史を残す英雄の擬態。
こちらにそれぞれの武器を手にこちらに向かってくる。
「貫けっ」
クリアが光の矢で応戦するが……その数と、
ウルハの魔力で具現化されているにすぎない英雄と言えど、
一筋縄ではいかない。
防御結界でクリアを守りながらも、自分の腕に防御結界を巻きつけ、
応戦する。
少しずつ、敵の数を減らしていくが……
予感……
ナイツはこちらを睨みつける。
スコールとライト……それに並ぶ、学園のトップ3そう、昨日スコールから教えられた。
そんな奴が、俺同様の防壁をはれる……というので終わるわけがない。
「ヒーロータイム……」
そうナイツが呟くと身体が光輝く。
全身、顔面を覆う白銀の鎧が装着されている。
「……まさか、これまでのように……なんとか勝てるなんて思っていないだろうな」
目の前にせまったナイツからこぶしがつきだされる。
腕にまきつけた結界でそれを防ぐ……
何とか防ぎきるが……よろよろと後ろに後退する。
「隙などあたえん」
そう、ナイツは言い、再び目の前まで一気に距離をつめる。
右、左のラッシュが続く……そのたび、膨大な体力が削られるような感覚を覚え、
気を抜くと、腕の防御結界が解けてしまいそうだ。
「レスさん……今、お助けします」
そうクリアが言うと……
「参ります……」
「ミラー発動……」
そうナイツを睨みつけ
「貫けっ」
青白い洋弓から光の矢を放つ。
「増強しろっ」
そう言うと先ほどと違う印が描かれ、光の矢が吸収されると……
「……っ」
ナイツは俺への攻撃の手を休め……
「モードチェンジ……鉄《くろがね》」
鎧は黒に変色し……
「鉄壁、発動」
先ほどと変わり、クリアの光の矢は分裂ではなく、ミラーを通過することで、
さらに魔力をまとい、強力な矢がナイツに迫るが、
その漆黒に輝く大きな盾がそれを完全に防ぐ。
「モード……チェンジ、白銀《プラチナ》」
そう言うと……鎧が白銀に戻る。
「お嬢様……見ていてください、私がヒーローです」
そうナイツは誰かにささやく……
・
・
・
……7年前。
街中で起きた事件……
数名の悪党が絵に描いたように街中で暴れまわっている。
「おーーー」
その様子を野次馬のように見ていた。
押さない、ウルハの姿。
駆けつけたのは一人のヒーロー。
人質に取られていた自分と同じくらいの少女をあっという間に助け出した。
ウルハは目を輝かせ……
「とー様、欲しい、ウルハも欲しい」
そう父にせがむ。
マネードル家。
当時から、その莫大な富を有している。
すぐに娘ウルハの護衛役を雇う面接が行われるが……
ウルハのめがねに叶う者はなかなか現れることは無かった。
「トリア……雇われ先が決まったんだってな」
爽やかな外見の茶髪の少年。
「……スノウ家、わたしより2つ年下の小娘の護衛役だ」
そう幼きアストリアが言う。
ここでは、名家である子供に、生涯仕えることを前提に置き、
こうして若く才のある年の近いものを護衛に置くことは珍しくなく、
幼くして職につく者も少なくない。
むしろ、こうして若くしてどこかに仕えるというのは、
一般の家系に産まれた者にはこうして、早いうちに名家に目をつけてもらう事が重要だったりもする。
だが……大切な子を託す側として、
幼い彼らを雇い託すというのも、中々決断のできない話なのだろう。
現に、幼きナイツもその雇われ先が決まらず……
同い年のアストリアに先を越された。
不意に大きな物音と……このころは、少し治安も悪く、
半端に高い能力を持った者がそういった名家を襲う事件が多発していた。
「マネードル家……今回、悪党の餌食になったようだな」
そうニュースを見ながら、アストリアが言う。
「マネードル家?」
……聞いたことは無いが……
「……知らぬのか、ここらじゃ1,2を争うほどの名家だぞ」
そうアストリアが返す。
「どこへ行く……事件なら大人や自分らの護衛に任せておけばいい」
ナイツにむかいそうアストリアが言うが。
「人を助けるのに……理由は必要ない」
そう返し、煙のあがった方に向かう。
それに……単純に今の自分の力が……大人に通用するのか。
単純に知りたかった。
絵に描いたような身体の大きい悪党。
数名のいかにも子悪党な奴らに雇われているようだ。
だが、そんな悪党、一人にマネードル家は襲われている。
「さっさと出て行けっ」
そう小さなウルハが悪党を恐れず叫ぶ。
「ウルハっやめなさい!」
そう母親がウルハを静止するが
「何をしている、とー様、かー様、あんな奴……ぶっとばしてくれるんだ、正義のヒーローがぶっとばしてくれるんだ!」
そう、期待を周囲のマネードル家の護衛人たちに向ける。
が……勇敢に立ち向かい……目の前で倒れている者。
その圧倒的な悪に恐れをなし、座り込んだまま立ち上がれない者。
「何をしている、屈するなっ……こんなちんけな悪になど屈するなっ」
そう、後ろを振り返り父と母に必死に訴えかける。
「ずいぶんと威勢がいいな、お譲ちゃん」
がたいのいい悪党の大きな影が、ウルハの身体を背中から影で覆い隠す。
強がっていたウルハも恐怖の中恐る恐る、後ろを振り返る。
悪党がウルハの両手を片手で掴み、自分の顔の位置までウルハの身体を持ち上げる。
「屈しない……マネードル家はお前なんかに屈しないぞっ」
ウルハが一人その悪へと立ち向かう。
「おい……その子を離せ」
「ん?」
一瞬気がつかないほど……低い位置からの声
茶髪の少年が一人そこに立っている。
「その子を離せっ……そう言った」
ナイツはそんな悪党の後ろに立っている。
「なんだ……小僧」
そうがたいのいい悪党が睨みつけ、
同時に周囲の子悪党どもが、ナイツに容赦なく襲い掛かる。
が、能力も使わずその体術でそれらをなぎ払う。
「くそがきが……」
そうがたいのよい悪党が上空にウルハの身体をぶん投げ、ナイツに襲い掛かる。
「……あなたのその勇気こそ、ヒーローが守るべきものだ」
そうナイツは呟き……
「ヒーロータイム……」
ナイツの言葉と共にその身体が光の中に包まれ、白銀の鎧をまとっている。
素早い連撃からのアッパーで、その巨大な身体が浮かぶ、その浮かんだ巨大な身体より上空に飛び上がると、頭上までふりあげた右足のかかとをその身体の腹部に叩き込む。
巨大な身体が地面に穴をあけるように地にめりこみ、建物の1階まで建物を床を破壊して沈んでいった。
その間、数秒……
上空に投げられた小さな身体がかなり高く放り投げられ、さらにその場所がマネードル家の2階であり、運悪くさらに1階までその身体が落下する。
落下の恐怖に目を伏せる。
が……その身体は地面にいつまでも落下することはなく。
目を開くと白銀をまとう何者かがそこに居た。
お姫様抱っこされる形で……その姿を見て……
地を破壊し、横たわる巨体の悪党……
ウルハの中の何かが震え上がり、
「お前……名前は?」
そのウルハはたずねる。
「……ナイツ=マッドガイアです」
そう名を名乗る。
「……雇われ先はあるのか?」
そう続けて尋ねる。
「……いえ、まだ……」
その言葉にウルハは何かの運命さえも感じる。
「だったら……今日からお前は私の護衛《ヒーロー》だ」
そうウルハは自分を抱える彼に告げた。
・
・
・
「……あの日からずっと……わたしはあなたのために……」
マネードル家のために勇敢に戦うあなたを……
そんなあなたを学園が利用しているとしても……
あなたのその輝かしい勇気を守れるのなら……
そんなあなたのそばに私《ヒーロー》は居ます。
もちろん、そんな事情を俺は知らない……わかってやれない。
俺はそんな勇気も憧《ヒーロー》れも……壊してでも、
守るべきものがあるんだ……
観客席でそうリングを見下ろしながらアストリアが言う。
「攻撃、守備力……素早さ……ずば抜けた部分は無いが、全てに置いて高水準、攻守に切り替えが可能な能力……場合によっては、小僧、能力は貴様の上位互換にあたる……そうか、そうでないか……中々に楽しめそうだ」
そうトリアが軽い笑みを浮かべ言った。
「……レス、見せてくれ……君の可能性を」
そう……ライトが隣で呟く。
「それでは、大将戦……開始します」
そのラビの掛け声と共に試合がはじまる。
気がつけば、だいぶ……この異能力バトルになれてきている自分に今更違和感を覚える……
だが、今、それを困惑している暇などない。
「参ります……」
以外にもいち早く動くのはクリアだった。
にぎりこぶしを作った左手を前に突き出し、そのこぶしを左に90度ひねる。
「貫け……」
そうクリアのめがねの奥からは普段余りみない真剣な眼差しが相手に向けられる」
青白い光で精製された、洋弓……
弦に手をかける。
現れる光の矢……クリアが弦をはじくと矢がまるでレーザー光線のように一瞬で、ウルハめがけ飛んでいく。
同時に、ナイツが動くと、その場から姿を見失う。
「ご無事ですが、お嬢様」
な……
周囲の目がいろんな目でその二人に向けられる。
矢の一撃からウルハを救ったナイツが彼女をお姫様抱っこする状態でトンとその場に着地する。
「うむ……ナイツ、助かった」
そうウルハがナイツに返す。
「感謝には及びません……わたしは貴方のヒーローです」
スコールとは別の紳士的な雰囲気のイケメン。
そっとリングに、ウルハを降ろす。
「ナイツ、反撃といくぞ」
そうウルハはこちらを睨み
「我に従え……」
そう言って、紙幣のようなものを手に天に腕をかざし……
紙幣をばらまく。
「歴戦の戦場に名を残した……スナイパーよ」
そうウルハの言葉に……
一人の男が召喚され現れる。
男は、後方から銃を構え……
銃口から火をふく。
が、クリアに届く寸前でその銃弾は俺の結界に防がれる。
「ありがとうございます」
そうクリアが俺に礼を言う。
「俺も……無駄にお姫様抱っこでもするべきだったか?」
そう笑って返すが……
「いえ……そんな……大丈夫です」
そう否定され……
「とても、魅力的な提案ではありますが……」
そうぼそりと言う。
「参ります……」
再びクリアはそう真剣な眼差しで言う。
「ミラー発動」
続けてクリアが言う。
不意に俺たちとナイツたちの位置する中央の上空あたりに透明な水晶が現れる。
突き出した浸り手にはクリーム色の光の和弓が握られている。
クリア……今度は何をするつもりなのか……
作り出した水晶に向け、その光の矢を放つ。
「弾け……」
そうクリアは言うと、
水晶に印が刻まれ矢が吸収されるように消え……
光の矢が3本に分身するようにナイツ、ウルハ、召喚された男に向け飛ぶ。
召喚された男を無視し、ナイツはウルハの前に立つと迫る光の矢に手をかざす。
召喚された男は矢に貫かれその姿が消える。
ナイツに迫った矢はかざす手の前で消滅する。
「防御……能力?」
レス同様に、クリアの光の矢を無力化した能力に、観客席のレインが反応する。
「はい……レス様のように自由な場所に発生させることはできないようですが、強力なシールド発動能力のようです」
リヴァーがその能力をサーチする。
「我に従え……」
ウルハは先ほどより多くの紙幣を握り締めそれを上空になげる。
現れる、数多の見知らぬ過去に歴史を残す英雄の擬態。
こちらにそれぞれの武器を手にこちらに向かってくる。
「貫けっ」
クリアが光の矢で応戦するが……その数と、
ウルハの魔力で具現化されているにすぎない英雄と言えど、
一筋縄ではいかない。
防御結界でクリアを守りながらも、自分の腕に防御結界を巻きつけ、
応戦する。
少しずつ、敵の数を減らしていくが……
予感……
ナイツはこちらを睨みつける。
スコールとライト……それに並ぶ、学園のトップ3そう、昨日スコールから教えられた。
そんな奴が、俺同様の防壁をはれる……というので終わるわけがない。
「ヒーロータイム……」
そうナイツが呟くと身体が光輝く。
全身、顔面を覆う白銀の鎧が装着されている。
「……まさか、これまでのように……なんとか勝てるなんて思っていないだろうな」
目の前にせまったナイツからこぶしがつきだされる。
腕にまきつけた結界でそれを防ぐ……
何とか防ぎきるが……よろよろと後ろに後退する。
「隙などあたえん」
そう、ナイツは言い、再び目の前まで一気に距離をつめる。
右、左のラッシュが続く……そのたび、膨大な体力が削られるような感覚を覚え、
気を抜くと、腕の防御結界が解けてしまいそうだ。
「レスさん……今、お助けします」
そうクリアが言うと……
「参ります……」
「ミラー発動……」
そうナイツを睨みつけ
「貫けっ」
青白い洋弓から光の矢を放つ。
「増強しろっ」
そう言うと先ほどと違う印が描かれ、光の矢が吸収されると……
「……っ」
ナイツは俺への攻撃の手を休め……
「モードチェンジ……鉄《くろがね》」
鎧は黒に変色し……
「鉄壁、発動」
先ほどと変わり、クリアの光の矢は分裂ではなく、ミラーを通過することで、
さらに魔力をまとい、強力な矢がナイツに迫るが、
その漆黒に輝く大きな盾がそれを完全に防ぐ。
「モード……チェンジ、白銀《プラチナ》」
そう言うと……鎧が白銀に戻る。
「お嬢様……見ていてください、私がヒーローです」
そうナイツは誰かにささやく……
・
・
・
……7年前。
街中で起きた事件……
数名の悪党が絵に描いたように街中で暴れまわっている。
「おーーー」
その様子を野次馬のように見ていた。
押さない、ウルハの姿。
駆けつけたのは一人のヒーロー。
人質に取られていた自分と同じくらいの少女をあっという間に助け出した。
ウルハは目を輝かせ……
「とー様、欲しい、ウルハも欲しい」
そう父にせがむ。
マネードル家。
当時から、その莫大な富を有している。
すぐに娘ウルハの護衛役を雇う面接が行われるが……
ウルハのめがねに叶う者はなかなか現れることは無かった。
「トリア……雇われ先が決まったんだってな」
爽やかな外見の茶髪の少年。
「……スノウ家、わたしより2つ年下の小娘の護衛役だ」
そう幼きアストリアが言う。
ここでは、名家である子供に、生涯仕えることを前提に置き、
こうして若く才のある年の近いものを護衛に置くことは珍しくなく、
幼くして職につく者も少なくない。
むしろ、こうして若くしてどこかに仕えるというのは、
一般の家系に産まれた者にはこうして、早いうちに名家に目をつけてもらう事が重要だったりもする。
だが……大切な子を託す側として、
幼い彼らを雇い託すというのも、中々決断のできない話なのだろう。
現に、幼きナイツもその雇われ先が決まらず……
同い年のアストリアに先を越された。
不意に大きな物音と……このころは、少し治安も悪く、
半端に高い能力を持った者がそういった名家を襲う事件が多発していた。
「マネードル家……今回、悪党の餌食になったようだな」
そうニュースを見ながら、アストリアが言う。
「マネードル家?」
……聞いたことは無いが……
「……知らぬのか、ここらじゃ1,2を争うほどの名家だぞ」
そうアストリアが返す。
「どこへ行く……事件なら大人や自分らの護衛に任せておけばいい」
ナイツにむかいそうアストリアが言うが。
「人を助けるのに……理由は必要ない」
そう返し、煙のあがった方に向かう。
それに……単純に今の自分の力が……大人に通用するのか。
単純に知りたかった。
絵に描いたような身体の大きい悪党。
数名のいかにも子悪党な奴らに雇われているようだ。
だが、そんな悪党、一人にマネードル家は襲われている。
「さっさと出て行けっ」
そう小さなウルハが悪党を恐れず叫ぶ。
「ウルハっやめなさい!」
そう母親がウルハを静止するが
「何をしている、とー様、かー様、あんな奴……ぶっとばしてくれるんだ、正義のヒーローがぶっとばしてくれるんだ!」
そう、期待を周囲のマネードル家の護衛人たちに向ける。
が……勇敢に立ち向かい……目の前で倒れている者。
その圧倒的な悪に恐れをなし、座り込んだまま立ち上がれない者。
「何をしている、屈するなっ……こんなちんけな悪になど屈するなっ」
そう、後ろを振り返り父と母に必死に訴えかける。
「ずいぶんと威勢がいいな、お譲ちゃん」
がたいのいい悪党の大きな影が、ウルハの身体を背中から影で覆い隠す。
強がっていたウルハも恐怖の中恐る恐る、後ろを振り返る。
悪党がウルハの両手を片手で掴み、自分の顔の位置までウルハの身体を持ち上げる。
「屈しない……マネードル家はお前なんかに屈しないぞっ」
ウルハが一人その悪へと立ち向かう。
「おい……その子を離せ」
「ん?」
一瞬気がつかないほど……低い位置からの声
茶髪の少年が一人そこに立っている。
「その子を離せっ……そう言った」
ナイツはそんな悪党の後ろに立っている。
「なんだ……小僧」
そうがたいのいい悪党が睨みつけ、
同時に周囲の子悪党どもが、ナイツに容赦なく襲い掛かる。
が、能力も使わずその体術でそれらをなぎ払う。
「くそがきが……」
そうがたいのよい悪党が上空にウルハの身体をぶん投げ、ナイツに襲い掛かる。
「……あなたのその勇気こそ、ヒーローが守るべきものだ」
そうナイツは呟き……
「ヒーロータイム……」
ナイツの言葉と共にその身体が光の中に包まれ、白銀の鎧をまとっている。
素早い連撃からのアッパーで、その巨大な身体が浮かぶ、その浮かんだ巨大な身体より上空に飛び上がると、頭上までふりあげた右足のかかとをその身体の腹部に叩き込む。
巨大な身体が地面に穴をあけるように地にめりこみ、建物の1階まで建物を床を破壊して沈んでいった。
その間、数秒……
上空に投げられた小さな身体がかなり高く放り投げられ、さらにその場所がマネードル家の2階であり、運悪くさらに1階までその身体が落下する。
落下の恐怖に目を伏せる。
が……その身体は地面にいつまでも落下することはなく。
目を開くと白銀をまとう何者かがそこに居た。
お姫様抱っこされる形で……その姿を見て……
地を破壊し、横たわる巨体の悪党……
ウルハの中の何かが震え上がり、
「お前……名前は?」
そのウルハはたずねる。
「……ナイツ=マッドガイアです」
そう名を名乗る。
「……雇われ先はあるのか?」
そう続けて尋ねる。
「……いえ、まだ……」
その言葉にウルハは何かの運命さえも感じる。
「だったら……今日からお前は私の護衛《ヒーロー》だ」
そうウルハは自分を抱える彼に告げた。
・
・
・
「……あの日からずっと……わたしはあなたのために……」
マネードル家のために勇敢に戦うあなたを……
そんなあなたを学園が利用しているとしても……
あなたのその輝かしい勇気を守れるのなら……
そんなあなたのそばに私《ヒーロー》は居ます。
もちろん、そんな事情を俺は知らない……わかってやれない。
俺はそんな勇気も憧《ヒーロー》れも……壊してでも、
守るべきものがあるんだ……
11
お気に入りに追加
206
あなたにおすすめの小説
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
腐った伯爵家を捨てて 戦姫の副団長はじめます~溢れる魔力とホムンクルス貸しますか? 高いですよ?~
薄味メロン
ファンタジー
領地には魔物が溢れ、没落を待つばかり。
【伯爵家に逆らった罪で、共に滅びろ】
そんな未来を回避するために、悪役だった男が奮闘する物語。
スキル運で、運がいい俺を追放したギルドは倒産したけど、俺の庭にダンジョン出来て億稼いでます。~ラッキー~
暁 とと
ファンタジー
スキル運のおかげでドロップ率や宝箱のアイテムに対する運が良く、確率の低いアイテムをドロップしたり、激レアな武器を宝箱から出したりすることが出来る佐藤はギルドを辞めさられた。
しかし、佐藤の庭にダンジョンが出来たので億を稼ぐことが出来ます。
もう、戻ってきてと言われても無駄です。こっちは、億稼いでいるので。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
追放?俺にとっては解放だ!~自惚れ勇者パーティに付き合いきれなくなった俺、捨てられた女神を助けてジョブ【楽園創造者】を授かり人生を謳歌する~
和成ソウイチ
ファンタジー
(全77話完結)【あなたの楽園、タダで創ります! 追放先はこちらへ】
「スカウトはダサい。男はつまらん。つーことでラクター、お前はクビな」
――その言葉を待ってたよ勇者スカル。じゃあな。
勇者のパワハラに愛想を尽かしていたスカウトのラクターは、クビ宣告を幸いに勇者パーティを出て行く。
かつては憧れていた勇者。だからこそここまで我慢してきたが、今はむしろ、追放されて心が晴れやかだった。
彼はスカルに仕える前から――いや、生まれた瞬間から決めていたことがあった。
一生懸命に生きる奴をリスペクトしよう。
実はラクターは転生者だった。生前、同じようにボロ布のようにこき使われていた幼馴染の同僚を失って以来、一生懸命に生きていても報われない奴の力になりたいと考え続けていた彼。だが、転生者であるにも関わらずラクターにはまだ、特別な力はなかった。
ところが、追放された直後にとある女神を救ったことでラクターの人生は一変する。
どうやら勇者パーティのせいで女神でありながら奴隷として売り飛ばされたらしい。
解放した女神が憑依したことにより、ラクターはジョブ【楽園創造者】に目覚める。
その能力は、文字通り理想とする空間を自由に創造できるチートなものだった。
しばらくひとりで暮らしたかったラクターは、ふと気付く。
――一生懸命生きてるのは、何も人間だけじゃないよな?
こうして人里離れた森の中で動植物たちのために【楽園創造者】の力を使い、彼らと共存生活を始めたラクター。
そこで彼は、神獣の忘れ形見の人狼少女や御神木の大精霊たちと出逢い、楽園を大きくしていく。
さらには、とある事件をきっかけに理不尽に追放された人々のために無料で楽園を創る活動を開始する。
やがてラクターは彼を慕う大勢の仲間たちとともに、自分たちだけの楽園で人生を謳歌するのだった。
一方、ラクターを追放し、さらには彼と敵対したことをきっかけに、スカルを始めとした勇者パーティは急速に衰退していく。
(他サイトでも投稿中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる