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第5章 異端狩り
38話 魔女・中
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ぼこぼこと黒い泡が魔法陣から沸き立ち、やがて体積を増していく。不透明な気泡が積み上がり、濃縮され、潰れては固まり、だんだんと形を作っていく。
「……」
テオファンらは、その様子をただ見守っていた。否、下手に動いたのならばアレに巻き込まれると、本能的に理解していた。
《――、―――》
ザーザーと空気を走るノイズ。言葉でも声でもない何かの音。ぽつぽつと水中を潜るように木霊し、だんだんと近づいて……いや、姿と共に鮮明になっていく。
「あれが、悪魔……」
魔法陣の中央に位置したのは紛れもない悪魔。だが、今まで悪魔をさんざん見てきたコレエストやテオファンにとっても十分に異質であった。
《――――》
口と思われる器官は見えない為、かさかさと白黒まだらの羽毛が擦れる音しかしない。目玉は天頂にひとつで、腕は人間に似たものが五本、羽毛だらけの胴体から不格好に突き出ている。下半身、或いは脚はなく、空中に羽毛だらけの塊が浮いている状態だった。
そして、その悪魔は五本の腕すべてに『本』を持っていた。
といっても、紙で構成された一般的な本ではない。分厚い石板を合わせたような重量物だ。ページに当たる項は存在しておらず、ただ表紙と裏表紙のくすんだ灰色の石が武骨に本の形を作っている。表題と思わしき文字は石に刻まれていたが、象形文字を崩したような"模様"のみが並ぶだけで、まったく言葉としては読み取れない。
(この悪魔……)
――普通の悪魔ではない。先日戦ったアイリスと同等、あるいはそれ以上の力を持っている。
テオファンがドウメキとコレエストへ目くばせすると、二人もこの悪魔の力を対面だけで推測できたのか、ヴィラジから視線を外して目の前の羽の悪魔を凝視している。
数秒の膠着状態。得体の知れない相手を見据え、武器に手をかけてゆっくりと息を呑む。ケルブは頭頂部についている眼球を動かすことなく、本を持った腕を掲げた。
すると、ケルブの足元(正確には浮いているので体の下ではある)に、薄らと青い光が線を描いて円と模様を作り上げていく。それが黒魔術による魔法陣だと三人が知覚した瞬間に、ヴィラジが走り出してテオファンを突き飛ばし扉を蹴破った。
「待てッ!――ドウメキ、追え!」
隙を突かれたテオファンが叫び、ドウメキが弾かれたようにヴィラジの後を追っていく。悪魔狩りに慣れているテオファンとコレエストでケルブを相手にし、対人間に慣れているドウメキを行かせるという咄嗟の判断であった。テオファンの視界の端で、ドウメキの藍色の服が闇へと消えていく。
それを見届けることなくテオファンは素早く立ち上がり、今だ光を放っているケルブの魔法陣へと姿勢を直した。
「コレエストさん、これは――」
完成され、緩く回り始めた青の光の円を見ながら、テオファンが呟く。コレエストはチャクラムの回転を止めることなく、目を細めて姿勢を低くした。二人を前にした悪魔・ケルブはもぞもぞと羽毛を動かしていたが、やっと頭頂部の眼球をくるりと動かし、聖職者の姿を捉えた。
《―右を向くな―》
「は?」
たった一言。悪魔がどこからか発した一言。だがその一言の後に、ケルブが纏っている羽毛が膨れ上がり、針のように立つと――二人に向かって発射された。
飛んでくる羽根の一本一本はさしたる攻撃力を持たないのだろうが、あれが一体どのような黒魔術を纏っているかはわからない。コレエストはチャクラムの回転を止めナイフのように動かして向かってくる羽毛を叩き落とし、テオファンは自分の前に糸を何本も密集させることで絡めとった。
(威力自体は弱い。けど、)
羽根自体の重さは非常に軽く、叩き落とすのは容易であった。けれども向かってくる羽軸の先端は注射器の針より太く、錐(きり)のように鋭利。それこそ一本が首にでも刺されば、致命傷になりかねない。ケルブはランダムで羽根を飛ばしてきているのだろうが、その分軌道が読みにくい。
(意外と面倒くさい……!)
そう思ったテオファンが自分から見て右に立っているコレエストと連携しようと、彼の方向へ頭を向けようとしたところで、咄嗟に動きを止めた。
―右を向くな―
「……コレエストさん、右、は」
「ぼ、ぼぼ、僕も思ったところ、だよ」
右を向くな。あの悪魔はそう言った。悪魔が立っている魔法陣の色は青から赤に色を変えており、より一層不気味さを増している。
悪魔が言った命令を無視し、右を向いたらどうなるのか。ただの脅しなのだろうか。……いや、違う。ヴィラジは『処女ではない血』のせいで火傷を負ったのだ。つまり、今二人のどちらかが右を向いたのならばヴィラジのようなペナルティが発生する。
悪魔・ケルブが床を滑るように左側へ移動し、床にある魔法陣から光が消えていく。部屋の中央に移動した悪魔は、また本を持った手を掲げると足元に魔法陣が浮かび上がった。
「させるかッ!」
これ以上面倒な制約を付けられてたまるかと、テオファンが悪魔に飛び掛かる。スカートを引き千切り、片方だけの靴を脱ぎ捨て、右足を大きく踏み込んで左脚を突き出す。防御は簡単にされてしまうだろうが、あの気味の悪い『制約』を設けさせることくらいは防げるはず――!
《―攻撃するな―》
「!!」
ケルブの体にテオファンの脚が届く直前に設けられた制約。コレエストが何かを叫んだが、それより速くテオファンの指が動く。
「――っく!」
万が一と、つり下がっている鎖を滑車代わりに使い、自分の体に絡ませていた糸を引っ張る。鎖を支点とした力が脚にかかり、テオファンの飛び蹴りは無理やりに方向をそらされ、バランスを崩して床に転倒して数十センチほど滑った。
「い、っう……」
腕や顔を擦って転びはしたが、攻撃をすることは逃れた。コレエストもチャクラムを構えたままで攻撃をしていない。……もちろん、あの悪魔も一切攻撃をしていない。
「……」
跳び上がって体を起こし、テオファンは悪魔の足元を見た。魔法陣は再び赤く光っている。その上で羽根の悪魔は踊るように五本の腕を動かしていた。もしかしたら、この状況を楽しんでいるのかもしれない。……となると、多少なりとも知能を有している。
(……攻撃してこない、ということは……あの制約は俺たちだけにかけているんじゃなくて、あの悪魔自身にもかけているって、ことか……)
その事実に少々胸をなでおろす。あの悪魔の制約がどこまで強く自分たちを縛れるのかはわからないが、もし仮に「息をするな」などというふざけた制約を設けられたのならばたまったものではない。
しかし、お互いの条件が同じならば――常に注意して戦えばいいだけだ。
足元の魔法陣が光を失い、またするすると悪魔が移動する。入ってきた扉の前に立った悪魔は、またぶわりと羽毛を膨らませ、凶器と化した羽根を発射してくる。
「ちッ……!」
この、ランダムかつ多量の羽根の攻撃では近づくこともままならない。コレエストのチャクラムならば攻撃は届くだろうが、もし届く前に制約をかけられてしまえばペナルティは避けられない。ならば、テオファンの糸で悪魔の体を絡め捕るのが得策なのかもしれないが、この大量の羽毛によって配置していたはずの糸が乱れ始めていた。
下手に絡んだものを動かせば逆に自分の行動が制限される。もし本当に攻撃するならば、準備しておいた糸を全て解除し、新しいものをかける必要があった。となると、かなり時間がかかる。
(ヴィラジは逃げてるっていうのに……!)
気持ちばかりが焦る。ドウメキがあの女を追いかけてはいるが、枢機卿相手に一人きりではせいぜい逃走を阻めるか阻めないか……そのくらいが限度だろう。ドウメキは戦闘慣れしているだろうが、『万が一』という可能性もぬぐえない。
そう考えているうちにも羽毛がテオファンの太ももを掠る。カソックとは違う薄い衣服の防御性は無いに等しく、それだけで簡単に布地が裂けて皮膚へ痛みが走る。普段の丈夫なカソックなら多少の無茶も許されるが、こんなペラペラの脆い服装ではうまく立ち振る舞うのも難しい。
(ああ、もう!)
苛立ちのまま、羽毛と絡まった糸を自ら断ち切る。いっそのこと特攻でもしてしまおうか?とコレエストへと視線を向けて現状を把握しようとすると。
「手こずっているようだなテオファン!」
鉄製の扉が、本日二度目の衝撃を受けた。
部屋に飛び入ってきた人物によって悪魔・ケルブは蹴り飛ばされ、軽い羽毛の体は毬のように跳ねた。
そのままケルブは床を何回かバウンドしたが、ふわりとまた元のように浮くと、体を一回転させて己を突き飛ばした聖職者を頭頂の眼球で見据える。
「……ローアティヴィ先輩」
赤のストラに、司教であることを表す制服。駆けつけた"金髪の助っ人"に、テオファンはにやりと笑った。
テオファンの頼れる先輩は既に展開した金色の大剣を肩に担ぎ、部屋の中央にいる悪魔と、司教コレエストと――謎の黒髪の女性(?)を見て、首を傾げる。
「誰だお前」
「私ですよ、テオファンですよ。あ、これとりますね」
黒髪のカツラを外し、特徴である赤毛をみせるテオファン。唇に付けていた紅も拭えば、ローアティヴィも良く知る顔になった。が、
「そんな趣味だったのかお前」
「違いますよ、事情は後で。……今はこの悪魔ケルブを一緒に倒しましょう」
ローアティヴィは半女装状態のテオファンを見てしょっぱそうな顔をしたが、すぐに真剣な表情になると、羽毛の塊へと剣を向けた。
何も、テオファンは初めから三人で倒すつもりなどなかった。相手が枢機卿でかつ悪魔を従えているのならば、相当な戦力を持っているはずだと予測はできていた。だから、あらかじめ助力を呼んでいたのだ。この地下下水道へ来るようにと。
先日のアイリスとは違う。今回は、テオファンらが罠を張る番。ならば、蜘蛛の巣のように二重と言わず三重に仕込みを入れておける。
最も、ローアティヴィが強力な助っ人とは言い難いものはあったが――手数は増えたほうが断然良い。それに、テオファンやコレエストには無い『決定打』を持っているのはこの金髪のゴリラだけであった。
「あ、ローアティヴィ先輩、この悪魔は――」
「うぉおお!!」
まずはこのケルブの黒魔術「制約」について説明をしようとしたテオファンだが、ローアティヴィは彼の言葉に耳を貸すそぶりさえ見せず、剣を振りかぶって突進していく。幸いにも室内は天井も高いため、ローアティヴィの聖媒が引っかかることはないが、あまりにも浅慮である。
「ちょっとこのバカ!!」
「ま、ままま、待って!」
思わず素が出たテオファンと叫ぶコレエスト。それも虚しく響くだけで、ローアティヴィは静止することはしない。
「叩き潰してやろう悪魔!」
《ー動くなー》
「――!」
テオファンとコレエストは今のまま体を硬直させる。コレエストに関してはチャクラムを投げようと構えたままで、テオファンはローアティヴィを止めようと指を曲げたままで。……しかし、ローアティヴィが止まることはなく。
(まずい、これじゃ俺もあのバカを止められない……!)
悪魔の足元の魔法陣が赤く染まりきった後、ローアティヴィが足を一歩踏み出した刹那、彼の左目に激痛が走った。
「ぐ、ぁあああ!?」
剣を取り落とし、左目を抑えて叫ぶローアティヴィ。彼の半分の顔からは、あの時のヴィラジと同じような黒い煙が燻り、肉が焼ける臭いを周囲にまき散らしていた。
(やはり、ペナルティがあるのか!)
やがてケルブの足元の魔法陣が消え、動けるようになったテオファンが未だ火傷で悶えているローアティヴィに向かって叫ぶ。
「先輩!あいつは制約を課してきます!私たちと、お互いに!あいつの魔法陣が青のときに制約を言い、赤になったら発動します!」
「ぐ、ぐぅうう!なぜそれを、はやく、言わない……!」
言おうとしたんだよという怒りはそれどころではない為飲み込み、放たれた羽毛攻撃を糸を張って防御する。ローアティヴィも左目を負傷しながらも立ち上がり、剣を拾い上げてすぐに盾にした。
「だから苦戦しているんです!」
「ああ、はいはいわかったよ!」
「痛くないですか!?」
「なんか知らんがちっともな!」
羽根の風切り音に負けないよう声を張り上げて会話をする赤の聖職者二人。ローアティヴィの左目は火傷のようになっており、完全に光を失っているようだが、本人の言う通りに痛みは感じていないようだった。おそらくは戦闘によるアドレナリンの放出のせいだろう。
まだ動けるなら、三人いるこちらが有利である。テオファンは何かこの悪魔を出し抜ける策はないかと雨のように襲い掛かる針から身を守りながら、歯を喰い占めた。
「て、ててて、テオファンくん」
「はい!?」
「あいつは、魔法陣の上にいないと、せせ、せせ制約できないみたい」
「……確かに」
羽根を叩き落としながらコレエストの言ったことに、テオファンは頷く。先ほどローアティヴィに蹴り飛ばされたときは、魔法陣が床に現れていたのにも関わらず、ケルブはすぐに制約をしなかった。となると、コレエストの言っている通りの可能性が非常に高い。
それに、魔法陣を出現させた後、或いは制約が終わった後は必ずケルブは移動している。まるで、次の目的地がわかっているかのように、するすると。
――もしかしたら逆なのではないか?あの悪魔の足元に魔法陣があるわけではなく、魔法陣の上に悪魔が立っているのだ。
「……『黒魔術は人間でも使える。悪魔の協力があれば』……」
「テオファン、くん?」
「コレエストさん、先輩!時間はありません、次の『制約』が終わったら、攻撃します!」
攻撃を避けるため腰をかがめつつコレエストのもとへ駆け寄ったテオファンが、彼の聖媒に軽く触れる。コレエストはハッとしたが、彼の行動の意図を理解して次の『制約』へ身構えた。
魔法陣の色が青へと色づく。次、ケルブから告げられる『制約』は――
《―見るな―》
ぞわり、と全身に鳥肌が立った。
『見るな』。視界をふさがれる。それだけではない。
あのケルブの攻撃は、視界を必要としてない。あの悪魔にとってこの『制約』は不利にならない。
「十秒、耐えろ!!」
魔法陣が赤に変わった瞬間、三人が目を閉じた。首や腹、頭といった急所を守る為、ケルブへと背を向ける。それぞれの武器で手探りで防ごうとも、降り注ぐ針が腕や足に突き刺さる。
「十!九!八!七!」
皮膚を裂かれる痛みに耐えながら、テオファンは制約が終わる――と思われる十の数を数えた。この十秒に確証はない。ただ、先ほどからの制約の時間が"だいたい十秒"に感じていただけだ。短すぎればペナルティによってダメージを負い、その逆は攻撃の機会を失う。毎回制約が十秒である確約もない。一か八かの十秒間。
その間にも羽根は体に突き刺さり、頬や脇腹へ小さな穴をあけていく。もし次に重い制約を課されたら、今の体の状況的に耐えられる自信がない。どうしても、ここで決着をつけなくてはいけない。
コレエストやローアティヴィの呻き声が、風を切る音の中に混ざっていた。
「――さん、に、いち!いけ!」
永遠とも思われる十秒間。数え終わった瞬間に目を開けば、魔法陣が半分ほど消えた状態だった。
今しかない。全員が至る所から流血した状態で、ケルブをしっかりと見据える。
「ッ!!」
ケルブが再び移動する前に、すでに構えていたコレエストがチャクラムを投擲する。だが、二つの円盤をケルブはさらりと躱し、次なる魔法陣の出現場所へと見えざる足を延ばした。予測通り、奴の行き先には薄らと光が集まっている。
だが、ケルブが避けたと思われるチャクラムが――空中で直角に曲がると、再びその体に向かって飛んでいく!
《―――》
言葉も表情もない悪魔だが、さすがに面をくらったのだろう。羽毛の体に刃物が食い込み、体勢を大きく崩す。血は出ず、抜け落ちた灰色の軽量物が空気の抵抗を受けてふわふわとあたり一面に舞った。
通常の物理法則を無視したチャクラム。仮に軌道を変えるとしたら、緩やかなカーブを描くはずであるが、今回ばかりは違った。
そう、よく目を凝らしてみれば――チャクラムには細い糸が絡みついていたのだ。
「うぉおおお!!」
ケルブが不意打ちに気を取られ、魔法陣へたどり着くまで遅れが生じる。テオファンはその時を待っていた。出現した青い魔法陣に向かって、全力でダッシュし、床を蹴り上げ、両手を伸ばし、頭から突っ込む。テオファンが手で触れた魔法陣は、青だった。
「―羽根を飛ばすな!―」
テオファンが発した制約は、ケルブの動きを完全に封じるのには十分だった。かつ、こちらの行動を一切阻害しない。
ケルブの羽毛が膨らむのと同時に魔法陣が赤くなる。悪魔の頭頂の眼が見開かれる。制約の黒魔術と羽根の攻撃、すべてを十秒間のうちに失う。それだけではない。
悪魔・ケルブの目玉は頭についている。それ故、良く見えたのだ。……渾身の神力を聖媒にまとわせ、大剣を今自分へ振り下ろさんとしている金髪の聖職者が。
「ぶっ潰れろぉおおおーー!!」
怒号と共に、ローアティヴィが剣を振り下ろす。持ちうる神力を全て使い果たす勢いで、ケルブの体を焼いていく。はじけ飛ぶ光が雷のように悪魔の体を裂き、持っていた石の本は砕け散る。
《――――》
ケルブはせめてもの抵抗にと五本の手をじたばたと動かしたが、ローアティヴィの体重と剣の重量を乗せた一撃は止めることができない。テオファンやコレエストの武器では与えることのできない、一撃での決定打。
やがて、ローアティヴィの剣は羽毛の塊を切り裂くと、床にまで突き刺さった。
「……」
あたり一面に羽根が飛び散っている。はじけ飛んだケルブの腕はしばらくびくびくと動いていたが、その指の先を黒い粘液へと変えていた。息絶えたのだ。
テオファンもはぁと息を吐いてその場に座り直し、襤褸切れになった服の袖を引き千切った。どうにか倒せたのだ。代償として全身に傷を作ることとなったが。
「うぅ……ぐ……」
床に剣を突き刺したまま、ローアティヴィが左目を抑えて蹲る。どうやら、体の緊張状態の解除とともに痛覚が元に戻ってきたらしい。よろよろと膝をつくと、剣を杖のようにして両腕で上半身を支えた。
「……ドウメキ……」
息をつきたいところだが、休んでいる暇はなかった。ドウメキはヴィラジを追いかけて行ってしまっている。彼へ一刻も早く加勢しなくてはならない。
テオファンはコレエストへローアティヴィを任せると、ヴィラジとドウメキが通っていった扉の向こうへと走った。
「……」
テオファンらは、その様子をただ見守っていた。否、下手に動いたのならばアレに巻き込まれると、本能的に理解していた。
《――、―――》
ザーザーと空気を走るノイズ。言葉でも声でもない何かの音。ぽつぽつと水中を潜るように木霊し、だんだんと近づいて……いや、姿と共に鮮明になっていく。
「あれが、悪魔……」
魔法陣の中央に位置したのは紛れもない悪魔。だが、今まで悪魔をさんざん見てきたコレエストやテオファンにとっても十分に異質であった。
《――――》
口と思われる器官は見えない為、かさかさと白黒まだらの羽毛が擦れる音しかしない。目玉は天頂にひとつで、腕は人間に似たものが五本、羽毛だらけの胴体から不格好に突き出ている。下半身、或いは脚はなく、空中に羽毛だらけの塊が浮いている状態だった。
そして、その悪魔は五本の腕すべてに『本』を持っていた。
といっても、紙で構成された一般的な本ではない。分厚い石板を合わせたような重量物だ。ページに当たる項は存在しておらず、ただ表紙と裏表紙のくすんだ灰色の石が武骨に本の形を作っている。表題と思わしき文字は石に刻まれていたが、象形文字を崩したような"模様"のみが並ぶだけで、まったく言葉としては読み取れない。
(この悪魔……)
――普通の悪魔ではない。先日戦ったアイリスと同等、あるいはそれ以上の力を持っている。
テオファンがドウメキとコレエストへ目くばせすると、二人もこの悪魔の力を対面だけで推測できたのか、ヴィラジから視線を外して目の前の羽の悪魔を凝視している。
数秒の膠着状態。得体の知れない相手を見据え、武器に手をかけてゆっくりと息を呑む。ケルブは頭頂部についている眼球を動かすことなく、本を持った腕を掲げた。
すると、ケルブの足元(正確には浮いているので体の下ではある)に、薄らと青い光が線を描いて円と模様を作り上げていく。それが黒魔術による魔法陣だと三人が知覚した瞬間に、ヴィラジが走り出してテオファンを突き飛ばし扉を蹴破った。
「待てッ!――ドウメキ、追え!」
隙を突かれたテオファンが叫び、ドウメキが弾かれたようにヴィラジの後を追っていく。悪魔狩りに慣れているテオファンとコレエストでケルブを相手にし、対人間に慣れているドウメキを行かせるという咄嗟の判断であった。テオファンの視界の端で、ドウメキの藍色の服が闇へと消えていく。
それを見届けることなくテオファンは素早く立ち上がり、今だ光を放っているケルブの魔法陣へと姿勢を直した。
「コレエストさん、これは――」
完成され、緩く回り始めた青の光の円を見ながら、テオファンが呟く。コレエストはチャクラムの回転を止めることなく、目を細めて姿勢を低くした。二人を前にした悪魔・ケルブはもぞもぞと羽毛を動かしていたが、やっと頭頂部の眼球をくるりと動かし、聖職者の姿を捉えた。
《―右を向くな―》
「は?」
たった一言。悪魔がどこからか発した一言。だがその一言の後に、ケルブが纏っている羽毛が膨れ上がり、針のように立つと――二人に向かって発射された。
飛んでくる羽根の一本一本はさしたる攻撃力を持たないのだろうが、あれが一体どのような黒魔術を纏っているかはわからない。コレエストはチャクラムの回転を止めナイフのように動かして向かってくる羽毛を叩き落とし、テオファンは自分の前に糸を何本も密集させることで絡めとった。
(威力自体は弱い。けど、)
羽根自体の重さは非常に軽く、叩き落とすのは容易であった。けれども向かってくる羽軸の先端は注射器の針より太く、錐(きり)のように鋭利。それこそ一本が首にでも刺されば、致命傷になりかねない。ケルブはランダムで羽根を飛ばしてきているのだろうが、その分軌道が読みにくい。
(意外と面倒くさい……!)
そう思ったテオファンが自分から見て右に立っているコレエストと連携しようと、彼の方向へ頭を向けようとしたところで、咄嗟に動きを止めた。
―右を向くな―
「……コレエストさん、右、は」
「ぼ、ぼぼ、僕も思ったところ、だよ」
右を向くな。あの悪魔はそう言った。悪魔が立っている魔法陣の色は青から赤に色を変えており、より一層不気味さを増している。
悪魔が言った命令を無視し、右を向いたらどうなるのか。ただの脅しなのだろうか。……いや、違う。ヴィラジは『処女ではない血』のせいで火傷を負ったのだ。つまり、今二人のどちらかが右を向いたのならばヴィラジのようなペナルティが発生する。
悪魔・ケルブが床を滑るように左側へ移動し、床にある魔法陣から光が消えていく。部屋の中央に移動した悪魔は、また本を持った手を掲げると足元に魔法陣が浮かび上がった。
「させるかッ!」
これ以上面倒な制約を付けられてたまるかと、テオファンが悪魔に飛び掛かる。スカートを引き千切り、片方だけの靴を脱ぎ捨て、右足を大きく踏み込んで左脚を突き出す。防御は簡単にされてしまうだろうが、あの気味の悪い『制約』を設けさせることくらいは防げるはず――!
《―攻撃するな―》
「!!」
ケルブの体にテオファンの脚が届く直前に設けられた制約。コレエストが何かを叫んだが、それより速くテオファンの指が動く。
「――っく!」
万が一と、つり下がっている鎖を滑車代わりに使い、自分の体に絡ませていた糸を引っ張る。鎖を支点とした力が脚にかかり、テオファンの飛び蹴りは無理やりに方向をそらされ、バランスを崩して床に転倒して数十センチほど滑った。
「い、っう……」
腕や顔を擦って転びはしたが、攻撃をすることは逃れた。コレエストもチャクラムを構えたままで攻撃をしていない。……もちろん、あの悪魔も一切攻撃をしていない。
「……」
跳び上がって体を起こし、テオファンは悪魔の足元を見た。魔法陣は再び赤く光っている。その上で羽根の悪魔は踊るように五本の腕を動かしていた。もしかしたら、この状況を楽しんでいるのかもしれない。……となると、多少なりとも知能を有している。
(……攻撃してこない、ということは……あの制約は俺たちだけにかけているんじゃなくて、あの悪魔自身にもかけているって、ことか……)
その事実に少々胸をなでおろす。あの悪魔の制約がどこまで強く自分たちを縛れるのかはわからないが、もし仮に「息をするな」などというふざけた制約を設けられたのならばたまったものではない。
しかし、お互いの条件が同じならば――常に注意して戦えばいいだけだ。
足元の魔法陣が光を失い、またするすると悪魔が移動する。入ってきた扉の前に立った悪魔は、またぶわりと羽毛を膨らませ、凶器と化した羽根を発射してくる。
「ちッ……!」
この、ランダムかつ多量の羽根の攻撃では近づくこともままならない。コレエストのチャクラムならば攻撃は届くだろうが、もし届く前に制約をかけられてしまえばペナルティは避けられない。ならば、テオファンの糸で悪魔の体を絡め捕るのが得策なのかもしれないが、この大量の羽毛によって配置していたはずの糸が乱れ始めていた。
下手に絡んだものを動かせば逆に自分の行動が制限される。もし本当に攻撃するならば、準備しておいた糸を全て解除し、新しいものをかける必要があった。となると、かなり時間がかかる。
(ヴィラジは逃げてるっていうのに……!)
気持ちばかりが焦る。ドウメキがあの女を追いかけてはいるが、枢機卿相手に一人きりではせいぜい逃走を阻めるか阻めないか……そのくらいが限度だろう。ドウメキは戦闘慣れしているだろうが、『万が一』という可能性もぬぐえない。
そう考えているうちにも羽毛がテオファンの太ももを掠る。カソックとは違う薄い衣服の防御性は無いに等しく、それだけで簡単に布地が裂けて皮膚へ痛みが走る。普段の丈夫なカソックなら多少の無茶も許されるが、こんなペラペラの脆い服装ではうまく立ち振る舞うのも難しい。
(ああ、もう!)
苛立ちのまま、羽毛と絡まった糸を自ら断ち切る。いっそのこと特攻でもしてしまおうか?とコレエストへと視線を向けて現状を把握しようとすると。
「手こずっているようだなテオファン!」
鉄製の扉が、本日二度目の衝撃を受けた。
部屋に飛び入ってきた人物によって悪魔・ケルブは蹴り飛ばされ、軽い羽毛の体は毬のように跳ねた。
そのままケルブは床を何回かバウンドしたが、ふわりとまた元のように浮くと、体を一回転させて己を突き飛ばした聖職者を頭頂の眼球で見据える。
「……ローアティヴィ先輩」
赤のストラに、司教であることを表す制服。駆けつけた"金髪の助っ人"に、テオファンはにやりと笑った。
テオファンの頼れる先輩は既に展開した金色の大剣を肩に担ぎ、部屋の中央にいる悪魔と、司教コレエストと――謎の黒髪の女性(?)を見て、首を傾げる。
「誰だお前」
「私ですよ、テオファンですよ。あ、これとりますね」
黒髪のカツラを外し、特徴である赤毛をみせるテオファン。唇に付けていた紅も拭えば、ローアティヴィも良く知る顔になった。が、
「そんな趣味だったのかお前」
「違いますよ、事情は後で。……今はこの悪魔ケルブを一緒に倒しましょう」
ローアティヴィは半女装状態のテオファンを見てしょっぱそうな顔をしたが、すぐに真剣な表情になると、羽毛の塊へと剣を向けた。
何も、テオファンは初めから三人で倒すつもりなどなかった。相手が枢機卿でかつ悪魔を従えているのならば、相当な戦力を持っているはずだと予測はできていた。だから、あらかじめ助力を呼んでいたのだ。この地下下水道へ来るようにと。
先日のアイリスとは違う。今回は、テオファンらが罠を張る番。ならば、蜘蛛の巣のように二重と言わず三重に仕込みを入れておける。
最も、ローアティヴィが強力な助っ人とは言い難いものはあったが――手数は増えたほうが断然良い。それに、テオファンやコレエストには無い『決定打』を持っているのはこの金髪のゴリラだけであった。
「あ、ローアティヴィ先輩、この悪魔は――」
「うぉおお!!」
まずはこのケルブの黒魔術「制約」について説明をしようとしたテオファンだが、ローアティヴィは彼の言葉に耳を貸すそぶりさえ見せず、剣を振りかぶって突進していく。幸いにも室内は天井も高いため、ローアティヴィの聖媒が引っかかることはないが、あまりにも浅慮である。
「ちょっとこのバカ!!」
「ま、ままま、待って!」
思わず素が出たテオファンと叫ぶコレエスト。それも虚しく響くだけで、ローアティヴィは静止することはしない。
「叩き潰してやろう悪魔!」
《ー動くなー》
「――!」
テオファンとコレエストは今のまま体を硬直させる。コレエストに関してはチャクラムを投げようと構えたままで、テオファンはローアティヴィを止めようと指を曲げたままで。……しかし、ローアティヴィが止まることはなく。
(まずい、これじゃ俺もあのバカを止められない……!)
悪魔の足元の魔法陣が赤く染まりきった後、ローアティヴィが足を一歩踏み出した刹那、彼の左目に激痛が走った。
「ぐ、ぁあああ!?」
剣を取り落とし、左目を抑えて叫ぶローアティヴィ。彼の半分の顔からは、あの時のヴィラジと同じような黒い煙が燻り、肉が焼ける臭いを周囲にまき散らしていた。
(やはり、ペナルティがあるのか!)
やがてケルブの足元の魔法陣が消え、動けるようになったテオファンが未だ火傷で悶えているローアティヴィに向かって叫ぶ。
「先輩!あいつは制約を課してきます!私たちと、お互いに!あいつの魔法陣が青のときに制約を言い、赤になったら発動します!」
「ぐ、ぐぅうう!なぜそれを、はやく、言わない……!」
言おうとしたんだよという怒りはそれどころではない為飲み込み、放たれた羽毛攻撃を糸を張って防御する。ローアティヴィも左目を負傷しながらも立ち上がり、剣を拾い上げてすぐに盾にした。
「だから苦戦しているんです!」
「ああ、はいはいわかったよ!」
「痛くないですか!?」
「なんか知らんがちっともな!」
羽根の風切り音に負けないよう声を張り上げて会話をする赤の聖職者二人。ローアティヴィの左目は火傷のようになっており、完全に光を失っているようだが、本人の言う通りに痛みは感じていないようだった。おそらくは戦闘によるアドレナリンの放出のせいだろう。
まだ動けるなら、三人いるこちらが有利である。テオファンは何かこの悪魔を出し抜ける策はないかと雨のように襲い掛かる針から身を守りながら、歯を喰い占めた。
「て、ててて、テオファンくん」
「はい!?」
「あいつは、魔法陣の上にいないと、せせ、せせ制約できないみたい」
「……確かに」
羽根を叩き落としながらコレエストの言ったことに、テオファンは頷く。先ほどローアティヴィに蹴り飛ばされたときは、魔法陣が床に現れていたのにも関わらず、ケルブはすぐに制約をしなかった。となると、コレエストの言っている通りの可能性が非常に高い。
それに、魔法陣を出現させた後、或いは制約が終わった後は必ずケルブは移動している。まるで、次の目的地がわかっているかのように、するすると。
――もしかしたら逆なのではないか?あの悪魔の足元に魔法陣があるわけではなく、魔法陣の上に悪魔が立っているのだ。
「……『黒魔術は人間でも使える。悪魔の協力があれば』……」
「テオファン、くん?」
「コレエストさん、先輩!時間はありません、次の『制約』が終わったら、攻撃します!」
攻撃を避けるため腰をかがめつつコレエストのもとへ駆け寄ったテオファンが、彼の聖媒に軽く触れる。コレエストはハッとしたが、彼の行動の意図を理解して次の『制約』へ身構えた。
魔法陣の色が青へと色づく。次、ケルブから告げられる『制約』は――
《―見るな―》
ぞわり、と全身に鳥肌が立った。
『見るな』。視界をふさがれる。それだけではない。
あのケルブの攻撃は、視界を必要としてない。あの悪魔にとってこの『制約』は不利にならない。
「十秒、耐えろ!!」
魔法陣が赤に変わった瞬間、三人が目を閉じた。首や腹、頭といった急所を守る為、ケルブへと背を向ける。それぞれの武器で手探りで防ごうとも、降り注ぐ針が腕や足に突き刺さる。
「十!九!八!七!」
皮膚を裂かれる痛みに耐えながら、テオファンは制約が終わる――と思われる十の数を数えた。この十秒に確証はない。ただ、先ほどからの制約の時間が"だいたい十秒"に感じていただけだ。短すぎればペナルティによってダメージを負い、その逆は攻撃の機会を失う。毎回制約が十秒である確約もない。一か八かの十秒間。
その間にも羽根は体に突き刺さり、頬や脇腹へ小さな穴をあけていく。もし次に重い制約を課されたら、今の体の状況的に耐えられる自信がない。どうしても、ここで決着をつけなくてはいけない。
コレエストやローアティヴィの呻き声が、風を切る音の中に混ざっていた。
「――さん、に、いち!いけ!」
永遠とも思われる十秒間。数え終わった瞬間に目を開けば、魔法陣が半分ほど消えた状態だった。
今しかない。全員が至る所から流血した状態で、ケルブをしっかりと見据える。
「ッ!!」
ケルブが再び移動する前に、すでに構えていたコレエストがチャクラムを投擲する。だが、二つの円盤をケルブはさらりと躱し、次なる魔法陣の出現場所へと見えざる足を延ばした。予測通り、奴の行き先には薄らと光が集まっている。
だが、ケルブが避けたと思われるチャクラムが――空中で直角に曲がると、再びその体に向かって飛んでいく!
《―――》
言葉も表情もない悪魔だが、さすがに面をくらったのだろう。羽毛の体に刃物が食い込み、体勢を大きく崩す。血は出ず、抜け落ちた灰色の軽量物が空気の抵抗を受けてふわふわとあたり一面に舞った。
通常の物理法則を無視したチャクラム。仮に軌道を変えるとしたら、緩やかなカーブを描くはずであるが、今回ばかりは違った。
そう、よく目を凝らしてみれば――チャクラムには細い糸が絡みついていたのだ。
「うぉおおお!!」
ケルブが不意打ちに気を取られ、魔法陣へたどり着くまで遅れが生じる。テオファンはその時を待っていた。出現した青い魔法陣に向かって、全力でダッシュし、床を蹴り上げ、両手を伸ばし、頭から突っ込む。テオファンが手で触れた魔法陣は、青だった。
「―羽根を飛ばすな!―」
テオファンが発した制約は、ケルブの動きを完全に封じるのには十分だった。かつ、こちらの行動を一切阻害しない。
ケルブの羽毛が膨らむのと同時に魔法陣が赤くなる。悪魔の頭頂の眼が見開かれる。制約の黒魔術と羽根の攻撃、すべてを十秒間のうちに失う。それだけではない。
悪魔・ケルブの目玉は頭についている。それ故、良く見えたのだ。……渾身の神力を聖媒にまとわせ、大剣を今自分へ振り下ろさんとしている金髪の聖職者が。
「ぶっ潰れろぉおおおーー!!」
怒号と共に、ローアティヴィが剣を振り下ろす。持ちうる神力を全て使い果たす勢いで、ケルブの体を焼いていく。はじけ飛ぶ光が雷のように悪魔の体を裂き、持っていた石の本は砕け散る。
《――――》
ケルブはせめてもの抵抗にと五本の手をじたばたと動かしたが、ローアティヴィの体重と剣の重量を乗せた一撃は止めることができない。テオファンやコレエストの武器では与えることのできない、一撃での決定打。
やがて、ローアティヴィの剣は羽毛の塊を切り裂くと、床にまで突き刺さった。
「……」
あたり一面に羽根が飛び散っている。はじけ飛んだケルブの腕はしばらくびくびくと動いていたが、その指の先を黒い粘液へと変えていた。息絶えたのだ。
テオファンもはぁと息を吐いてその場に座り直し、襤褸切れになった服の袖を引き千切った。どうにか倒せたのだ。代償として全身に傷を作ることとなったが。
「うぅ……ぐ……」
床に剣を突き刺したまま、ローアティヴィが左目を抑えて蹲る。どうやら、体の緊張状態の解除とともに痛覚が元に戻ってきたらしい。よろよろと膝をつくと、剣を杖のようにして両腕で上半身を支えた。
「……ドウメキ……」
息をつきたいところだが、休んでいる暇はなかった。ドウメキはヴィラジを追いかけて行ってしまっている。彼へ一刻も早く加勢しなくてはならない。
テオファンはコレエストへローアティヴィを任せると、ヴィラジとドウメキが通っていった扉の向こうへと走った。
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