枢要悪の宴

夏草

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第4章 スタートダッシュ

26話 期待外れ

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 紫の枢機卿が高笑いしている頃、テオファンとドウメキは住宅街の間をランプ片手にゆっくりと巡回していた。夜明けまであと六時間もない。
「あんまり悪魔、でなくなったな」
「それは他の聖職者たちも悪魔狩りをしているからですね。ま、多すぎてこちらの体力を消耗するのは勘弁願いたいですが」
 さっきまではちらほらと姿を見かけた悪魔も、今は気配すら感じなくなっている。いわゆる『小休止』というやつなのであろう。
 ふと空を見上げれば、左側だけがくっきりと残った月が低い位置に浮かんでいる。かかっていた薄雲はガーゼのごとく暗幕の天へ散らばり、あれらが退けたことで昇ってきた月が姿を現したのだろう。
 今朝食べたチーズに似ているなァという呑気なことを思いながら空を見上げるドウメキに対し、テオファンは渋い顔をして懐中時計を見ていた。日の出は朝の六時程度。今はあの月のおかげで悪魔の動きもある程度は制限されているのだろう。
 月の光は太陽の光。白い顔は煌々と燃ゆる陽光の映し。死んだ父が持っていた『天文学Astronomy』の論文の中にあった一説だ。
(懐かしいな)
 パチンと懐中時計の蓋を閉めて、再び夜空を見上げる。ひやりとした風が頬を撫でるのが、動き回って火照った体には心地よかった。
 父は科学に傾倒した人間だった。スラヴレンよりも田舎の村の片隅で、ロクな収入などないというのに、ひたすらに数式を解いて見えざるものに思考をはせる人だった。彼の『趣味の一環』として持っていた『解剖学Anatomy』の本は、幼かったテオファンに譲渡され、今でもちょっとした暇つぶしの読書の種となっている。
 父が自分を愛していたかどうかはわからない。なにせ、まともに言葉を交わしたことなどないからだ。
「テオファン。これからどうする?」
「……ああ。そうですね」
 ドウメキの言葉に、テオファンの意識が過去から現実へと引き戻される。今日はここで終わり……というわけにもいかないだろう。初日はまだ肩慣らしと言えど、悪魔狩りがどのようなものか、ドウメキと歩幅を合わせておきたかった。
(とはいえ、すこし休んでもいいか)
 少し辺りを見回せば、すでに閉店しているカフェらしき建物が目に入った。そこへつかつかと歩いていき、テオファンはふぅと野外のカフェベンチに腰を下ろす。ドウメキも特に文句は言わず、彼に倣って隣に座った。
「この辺一帯はすでに見て回りましたから……次はもっと西の方へ行きましょう。行動範囲を広げて……」
 ああ、聖都の地図でも持ってくればよかった。そう思いながら、今まで通ってきた路面を頭に浮かべながら話をしていると、テオファンの鼻をつんとした臭いが突いた。

「――悪魔!」

 テオファンとドウメキが飛びのいたのはほぼ同時であった。ドウメキがすぐに腰の刀へと手をあて、テオファンは神力で生み出した糸を取り出す。石畳の地面を蹴りあげ、音すらしない通りを走りぬく。距離はそれほど近くないようだが、とてつもなく臭いが、風上より漂っている。これが意味するのは、つまりはそれだけ『強い』悪魔がいるのか、あるいは――

「うわぁああ!」

「人だ」
 駆け抜ける景色の中、二つ目の路地を過ぎたところで、ドウメキとテオファンの音のみで構成されていた夜が壊れた。聞こえてきたのは男性の声。そして、何かを破壊するようなけたたましい音。間違いない。悪魔との戦闘が始まっている。それも、人間側が不利な状況で。
「ドウメキ!」
「わかってる!」
 ドウメキがぐんと走る速度を上げる。周りの景色が線として消え、目指す『獣の臭い』が一点と集約する。テオファンの持っていたランプの光など赤い瞳の前では必要ではなく、物影におびえることなく駆けた。
「――!!」
 そして辿り着いた臭いの発生源。視界が捕らえる黒い影と、赤に濡れた黒と白の塊。どちらが敵なのかは、もはや本能に任せて斬り伏せればよい。ドウメキは走る勢いを殺さずに大きく右足を踏み込むと、刀を抜いて振りかぶった。
「ひ、あ――!!」
 長い耳を持った悪魔、その左の肩へと刀を振り下ろす。研ぎ澄まされた鋼鉄は骨を難なく断ち切ると、残りの肉もそぎ落とした。刀とドウメキの風圧に押されたのか、悪魔に飛びつかれていた聖職者は情けない声を上げてごろりと前へ転がる。
「あ、お、おまえ、は」
 怪我をしているのだろう。黒いカソックはぐっしょりと濡れ、青のストラはそのほとんどの色を変えてしまっていた。それでも片手に持った細身の剣――聖媒だろう――を手放さないのは、やはり聖職者としての矜持だろうか。
 ドウメキは彼のことなど意に介さず、ただただ群れる敵を見据えた。
「多い」
「……そ、そう。多いんだ、そんなに強くないけど――」
 後方からの震える声がすべての言葉を吐く前に、ドウメキの武骨なブーツは地面を蹴っていた。刀を低く構え、切っ先が綺麗な円弧を描いて悪魔の喉元へと伸びていく。雲に翳った月光を受けてなお白く浮かぶ刀身は、弾けた赤い色でまだらになる。
 この聖職者を襲っていたのは兎型の悪魔らしい。歪な色に彩られた体からは植物が生え、きちきちと尖った前歯を鳴らしている。本来ならば愛らしいはずの兎であろうと、ここまで大きく、そして剥き出しの獣性を前にしたのならば、醜悪と言わざるを得ない。
 しかもそれが一匹ではない。一瞥しただけでも、すでに八匹はいた。いや、一匹の息の根はすでに断っているので、あと七匹といったところだが。
(一匹一匹を相手にするのは面倒。けど、あまり動きは激しくない)
 数で攻められては困る。そう判断したドウメキは、腰を深く屈め、刀を右手のみで持つと、左手に峰を当てるようにして構えた。そして、ふうと息を呑むと前へと飛び出した。
 何も、がむしゃらに向かったつもりはない。ただ、この悪魔たちに己の存在を見せつけ――この道を抜けた反対側へと追いかけさせるためだった。
 ドウメキの思惑通り、悪魔たちはギャアギャアと鳴き喚いて彼の後を追いかける。振り下ろされる爪や腕を避けながら、彼らの攻撃が届かない最小限の間合いを保ち、ドウメキは悪魔でかたどられるアーチを走り抜けた。
「……」
 多少衣服はダメージを受けたが、拓けた通りに出ることができた瞬間、ドウメキは足を踏ん張って急停止をし、片足を軸に背後を振り返った。
《Quee!!》
 悪魔たちは愚弄された怒りからか、その長い脚を使って灰の刀使いへと跳躍する。だが、彼は焦ることなく――その動きをただ見守った。

「……」
《―――》

 決着はあまりにも一瞬であった。悪魔たちがぴん、と動きを止めて、きらりとヒビの様な線が空中に光る。そうすれば、その線に沿って奴らの肉は粉々に砕けた。
「……テオファン」
「ご苦労様ですドウメキさん。完璧な誘導でした」
 白いヒビを作った本人――左右の五指に金の指輪をはめたテオファンがやや左手を不自然に上げたまま、ドウメキが通り抜けた方向とは反対側より歩いてくる。やはり、ドウメキに先にいかせて、自分は回り道をして予め糸を張っていたらしい。
 悪魔の間にわずかに見えた白の線。ドウメキだけがその意味を理解できるようにと張り巡らされた策。その『合図』を、だんだんと受け止められるようにはなってきた。
 おおよそ十個ほどの欠片に分割された悪魔たちは、すぐに融けて消える。
「まだ悪魔はいたようですね。あの聖職者は……まぁ彼も素人ではないので勝手にどうにかするでしょう」
「冷たいな」
 一応怪我してたぞ、とドウメキが後ろを振り返り、悪魔に襲われていた聖職者の様子を見ようとしたが、すでにそこには血の跡があるのみだった。どうやら、自力で移動してしまったらしい。
「ね、聖職者なんてそんなもんです。仲間意識はあまりないので」
「……仲悪いな」
 やっぱり聖職者って変人の集まりじゃないか?そう言葉を続けようとしたドウメキの肌が、また違う生き物の気配を感じ取った。
「――!」
 右側を勢いよく振り向いた彼にテオファンも驚き、ドウメキがみている方向へと目を凝らす。からん、とテオファンのベルトにかけられた小さなランプが音を立てた。
 誰も歩いていない住宅街の中を冷たい風が吹き抜ける。午前中は過ごしやすい気温でも、夜が更けてくれば風は適度な湿度と低い温度をもって冷気を生み出す。獣の臭いはまだしない。だが、あの向こうに何かがいる。

 しかし幸か不幸か期待は外れ、構えていた二人の耳に届いたのは、どこかで聞いたことのある声だった。

「なーんだ、ドウメキにテオファン司祭じゃん!」
「……」
「あなた、は」
 赤いまつ毛に囲まれたテオファンの眼がぱちぱちと瞬きをする。テオファンと同じように腰もとにランプをつけて暗い通りを歩いてくるのは、『二人の人間』。――彼らの姿は久方ぶりに見かけたような気がした。
「マウラ、に。ジュリアン」
「はい」
「よーっす」
 はっきりと聞こえる若い女性の声。ここまでくれば、いくら夜中といえど姿は見える。
 大きめのキャスケットに作業用のポケットが付いたオーバーオール。本人は成人済みだと言い張るが、女児にしか見えない体型。機工師を目指す女性――マウラ。その隣にはテオファンと同じニフェゼドの帽子を被った仏頂面の聖職者――ジュリアンが立っていた。
 なんとも珍しい組み合わせだが、この夜中、しかも聖典封解儀が始まった夜にマウラが出歩いているということに、テオファンの眉間に深い皺が刻まれた。
「テオファン司祭、そのー……言わんとしてることはわかる。俺が出歩いてるのは、まぁ事故みたいなもんで」
「事故?」
 はめている金色の指輪のせいで暗闇の中でもテオファンの指が動いたのが見えたのか、マウラは慌てて手をばたつかせた。どうやら、列車の中で首を締められて殺されかけたのは覚えているらしい。
「ジュリアン司祭にも説明したけど!俺は、機工師を雇ってくれる店を探してたんだ!で、夕方になったらぜーんぶ店は閉まっちゃうし、路面汽車も止まっちまって……職人の通りで路頭に迷ってたら、さらには悪魔には襲われるしで……」
「……そこで私が出くわし、保護した。一応、この女は怪しいことはしていない」
「……」
 テオファンは何度か疑いの目をマウラに向けたが、はぁと肩を落とした。この時代、ニフェゼドへ離反する悪魔信仰者も少なくはない。マウラが悪魔信仰者で、あえて悪魔たちと接触を図っているのかもしれない、と少しばかりでも思ったのだ。
 それはジュリアンとしても同じ考えであった。だが、悪魔に襲われて狼狽しているマウラの間抜けな様子を見た後では、その線は『クリア』と判断していた。
「ジュリアンさんがそう考えるならいいでしょう。……で、マウラさん。言っておきますが、聖典封解儀中はまともな営業なんて出来ないですよ」
 すっと殺気を収めた後で、テオファンはじっとりと緑の眼で見降ろしながらマウラに無慈悲な言葉をかける。それはつまり、マウラの計画が根本から破綻していることを指していた。だが、彼の言うことは至極当然のことではある。
 聖典封解儀中はほとんどの店が閉められる。日が出ているうちは開いているかもしれないが、新しい営業を始めるなどもってのほかだ。……その事実を列車の中で伝えなかったのは、テオファンに慈悲がなさすぎるというものだが。
「……ジュリアン司祭から聞いたよ」
 むすっとした顔をして、深くため息をつくマウラ。どうやら、この悲しい事実はすでに彼女の中で弾けていたらしい。期待外れだったと大仰に肩を落としたが、ジュリアンもテオファンもまったく同情の色は見せない。ただただ「当たり前だろう」と無言の圧力をかけるだけだ。
「お前ら冷たいな」
「なぜ同情しなくてはいけない」
「もともとラッキーでここへ来れたんですから、これ以上のラッキーは必要ないでしょう」
「残念だったな、マウラ……」
 唯一この場で暖かな言葉をかけてくれたドウメキに、マウラはぱぁと顔を輝かせる。勝手についてきたのは彼女の判断だとドウメキは思ってはいたのだが、ここまで味方がいないのも哀れに感じた故の言葉だった。
 きっと日がでてるうちはお店も開いていると言えば、マウラは小さな胸を張って「まだ諦めるのは早いよな!」と希望に満ちた目をした。その隣でテオファンがなんともいない顔をしていたのは、あえて目に入れずに。
「私はマウラを安全な場所まで送る」
「ええ。お願いします」
 ジュリアンが軽くマウラの肩を叩き、行こうと合図したところで――彼女が突然、レイピアを抜いた。

「え、ちょっとぉおお!?!?」
「――屈め!」

 突然レイピアの切っ先をを向けられ絶叫したマウラだが、ジュリアンの怒鳴り声に応じて、頭を抱えてその場にしゃがみこむ。ジュリアンは顔色ひとつ変えず、先ほどまでマウラの頭があった場所に突きを繰り出した。
 ヒュン、と鋭利な刃物が風を切る。もしマウラが屈んでいなければ、彼女の頭蓋を簡単に突き破っていただろう。

《GeEeeEe!》

「え、え、なにが起きて」
「うるさい黙れ」
 びしゃりとマウラの足元へ何かの体液が飛び散った。
 
 ジュリアンは何も虚空を突いたわけではない。今しがた、マウラに飛びかかろうとしていた悪魔の右手のひらから肩までをしっかりと貫いていた。
「どけ!」
「ぎゃあ!!」
 レイピアを引き抜いた勢いで、避難させるつもりでマウラを蹴り飛ばす。一応、肩等のダメージが少ない場所を狙ってはいるが、硬いブーツの底で蹴られたマウラは悲鳴を上げて転がった。ジュリアンはわずかに血をまとったレイピアを手早く回すと、金の切っ先をケダモノに向ける。
「……」
 ドウメキもすでに抜刀しており、テオファンも険しい目で敵を見据えている。不意打ちとはいえ、こちらは三人が武器を構えていた。決着はすぐに着くかと思われたが――
 《QueeeeEEe!》
 悪魔は天に向かって吠えると、体を大きく震わせて大きく飛び上がった。どうやら、この状況はさすがに不利と判断し、ひとまず退却をするらしい。そうはいかないと、ジュリアンとドウメキが武器の構えを崩さずに足を踏み込めば、金の指輪をはめた片手が穏やかに視界を遮った。
「待ってください」
「……おい、何がしたい」
 敵が背を見せて逃げたというのになぜ追わない。言葉の続きは出さずとも、ジュリアンの昏い両目は、制止をした本人――テオファンへと向けられていた。
 何も知らない人が見れば、殺されるのではないかと怯えてしまうほど鋭い彼女の眼光。だが、怖気づくことなく柔らかい微笑みを返すテオファンは、右手の人差し指を軽く唇に当てながら続ける。
「あの種類の悪魔、さきほどから何度も見かけています。悪魔にこれほど同一種がいるのも珍しいでしょう?」
「……」
 ジュリアンがレイピアで貫いた個体は、兎のような長い耳と脚をもつ種だった。それは、ジュリアンとマウラに出会う前に倒した、見知らぬ聖職者を襲っていた悪魔と酷似している。
 悪魔にも似たような見た目の存在はいる。しかし、このように『見た目が全く同じ』の存在が何匹も現れるのは普通ではない。普通ではない物事には、何かの原因や理由があるはずなのだ。
「あれが逃げた、ということは何らかのコロニーを築いている可能性があります。叩くのならば、小物ではなく大本を。そう思うでしょう?」
「……一理ある」
「私の聖媒ならば、どれだけ数が多くとも準備さえすれば一網打尽。あのレベルの悪魔なら、群れても怖くはありません。ここは、しばらく泳がせて後を追うのが吉でしょう。ね、ドウメキさん?」
「え?うん」
 突然話を振られたドウメキは、とりあえずテオファンの意見には肯定する。ここで反論をすると面倒そうであったからだ。ジュリアンも彼の意見に同意したのか、眼から殺気を収めると、レイピアを腰の鞘へと仕舞い込んだ。
 金属と金属がぶつかり合う、小気味良い音がした。
 
「では、ジュリアンさんはマウラさん……を……」
 ――送ってあげてください。そう言おうとしたが、肝心のマウラの姿が見えない。いったいどこへ行ったのかとテオファンが首を回して見回せば、少し離れたところでうめき声をあげて蠢いている塊があった。
「……う、うぅう……い、いてぇ……」
「送ってあげてください」
「わかった」
「……」
 ジュリアンに蹴り飛ばされ、肩やら脛やらを抱えて転がっているマウラに、労わりの言葉をかける者はいない。ジュリアンはかつかつと彼女の傍まで歩くと、半ば強引に腕をつかんで立たせた。
「ジュ、ジュリアン司祭」
「アパルトマンまで送る。ついてこい」
「……あい……」
 起こされたマウラの両目には涙がたまっており、頬は砂で汚れていたが、仏頂面の緑の聖職者は一言も謝らない。いや、ジュリアンとしては「襲われそうになったところを助けた」わけなのだから、マウラを蹴り飛ばしたことに関しては全く罪の意識などないのだろう。そもそも聖職者からしてみれば、こんな危険な夜に出歩いている方が悪いのだ。
「あ、ドウメキ」
「ん?」
 ジュリアンと一緒に立ち去ろうとしたマウラが、ごしごしと顔を手で拭った後、ポケットから何かを取り出した。手のひらに収まる程度のサイズのそれをすこしだけ確認し折りたたむと、ドウメキの方へ軽く放り投げる。ドウメキはいきなり投げられたものに目を丸くしつつも、それをうまく受け止めた。
「観光してた時にもらったやつ!あると便利だろ」
「え?ナニコレ……あ、ありがと……」
 マウラはにしし、と歯を見せて笑うと、今度こそジュリアンに連れられてアパルトマンの方へと歩いて、やがて姿は闇に紛れて見えなくなった。
 念のためと目の届く範囲までは見送った二人は、マウラが投げてよこしたものが果たして何なのか検分する。テオファンがランプを高めに掲げて見れば、それは折りたたまれた紙で、広げると地図になっていることがわかった。
「どこの地図?」
「……ああ、これ。シュラリスの地図じゃないですか。マウラさんもいいものをくれますね」
「ほお」
 テオファンが黒い革手袋をした指で紙面をトントンと叩く。どうやら、この指の真下が現在地らしい。意外と細かな路地まで描かれている地図で、これがあれば地形を利用した攻略も可能になるだろう。
「ドウメキさん、地図は?」
「読んだことない」
「期待はしていませんでしたが、すがすがしいほどの発言ですね。では、地図は私が有効活用します」
 そういうとテオファンはドウメキから地図を受け取り、胸ポケットへと仕舞い込んだ。聖職者のカソックのポケットというものは、存外大容量らしい。そして、ランプをふたたび腰のベルトへと吊るすと、ドウメキも刀を鞘へと戻す。
「で、テオファン。あの悪魔をどうやって追いかけるんだ?もう影も形もないぞ」
「……それはですね」
 にや。とランプの光に照らされたテオファンの顔が、何とも邪悪な影を落とした。
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