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第2章 異国の地
13話 リュトコ
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急停車の後、蒼白な顔をした駅員が走ってきたと思えば、「汽車から降りてください」と問答無用で二人は下車することとなった。仕方なしにテオファンは帽子をかぶり、ドウメキ共々荷物をまとめて慌ただしく汽車のステップを踏んで外に出る。
降りた駅のホームには「リュトコ」と書かれた地名が示されており、黒い機関車は足元から蒸気をだして停車していた。
「他の客も降りてるみたいだな」
「……」
マントを上に羽織ったドウメキがあたりを見回せば、別の車両に乗っていた客も強制的に下車させられているようだった。彼らはあまり機嫌がよくないらしく、何名かが乗務員につかみかかっては「どういうことだ」と怒鳴りつけている。乗務員のほうも暴力への対応に追われ、満足に説明も出来ていないようだ。
「……テオファン?」
「ちょっとそこで待っててください」
テオファンは荷物と外套をドウメキに押し付けると、囲われている乗務員の方へ歩いていく。あの喧騒の中に混ざるのだろうか。どさくさに紛れて殴られないかどうか少しだけ心配だが。
「皆さん、落ち着いてください」
群がる人の中、人の間を縫うようにして近づいたテオファンは、その中でもひときわ大きく声を荒げている男の肩に手を置いた。中折れ帽をかぶり、口周りに特徴的な髭を生やした太った男だ。身なりからして"小金持ち"なのだろう。だからこんな『些細なこと』にぎゃあぎゃあと口うるさく捲し立てている。
「なんだガキ!」
テオファンの声からして、彼がまだ若いのかと思ったのか、男は片腕を挙げたまま振り返った。そしてテオファンのことを見て――表情が固まる。
赤のストラと黒のカソックを身に着け、ニフェゼドの印が記された帽子を被っているテオファンを見て。
「落ち着いてくださいと、言ったのです」
ぎり、と肩に置いた手に力をかける。決して痛くない程度だが、その握力だけでこれ以上の言葉は不要であった。
――これ以上騒ぎ立てるようなら、相応の手段でおとなしくさせる、と。
「チッ!神に祈ったところで時間が戻るかってんだ」
目の前の若い男、もとい権力を持っている司祭に対しては分が悪いと思ったのか、男はホームの床に唾を吐きかけると、パイプを咥えてその場を立ち去っていった。ざり、ざり、ざりと軽快とは言えない足取りだったが、醜態を早く隠したいと言わんばかりにあわただしく太った体を揺らしていく。
テオファンは男がホームを出るまでじぃと眺めていたが、のっぺりとした背中が見えなくなったところで乗務員の方へ体を戻した。男以外にも騒いでいた客は皆一様にして黙るか、ひっそりと姿を消している。
大陸を支配しているニフェゼド教。教会の下働きこそ星の数ほどいるが、司祭以上の地位を獲得できるのはごくわずかな者だけだ。聖職者へは宗教裁判等の独自の司法権が適用され、聖都は王都よりも武力を所持していた。聖職者とは、社会的なステータスを如実に表している職業なのである。
だからこそ、こういったバカげた争いごとを一言で止めることに向いている。
「さて。皆さん、主は勝てぬ試練を課さないと言います。ここで怒りや焦りに感情を任せてしまってはいけませんよ。……乗務員さん、事情を説明してください」
「……は、はい」
助かったといわんばかりに胸を撫でおろしていた乗務員は、若き司祭の問いかけと、不安そうにしている乗客の視線を感じ、ぴしりと背を伸ばした。
「申し訳ございませんが、停車した原因は謎です。今のところ、機械の故障は起きていませんが……正直、復旧のめどは立っておりません」
ざわ、と聞いていた乗客が揺れる。乗務員はごくりと唾を飲み込んだが、テオファンは「続けてください」と先を促した。
「しかし、ここで足止めをするわけにはいきませんから……今夜はこちら側で宿を手配します。翌日、まだ汽車が動かなかった場合は、次の駅まで馬車で送り、そこから別の汽車にお乗り換えいただく……という形で」
「……馬車って、どのくらい時間がかかるんですか?」
少し嫌な単語が聞こえたテオファンは、眉間に皺を寄せた。もし自分の予想が当たれば、相当辛い選択肢を選ぶこととなる。
「はい。八時間ほどです」
「という状況ですドウメキさん祈るしかないですね」
「……テオファン、怒ってるのか?」
「怒ってないですよ。主は乗り越えられる試練しか与えませんからね」
口早に現在の状況とこれからの対応を説明したテオファンは、帽子を深くかぶり直すとため息をついた。仕方がないという事態とはいえ、思わぬ足止めを食らってしまったというものだ。シリンダーやピストンが故障していなければ発車もできるらしいが、その辺りが無事であるという証拠も確証も何もない。
(時間がないな……)
想定外の足止めが二度重なり、のんびりしているわけにもいかなくなった。一応、トラブルで遅れたという『建前』は作れるだろうが、それでも遅れを取り戻すのは自分自身に他ならない。その上、馬車での八時間の移動など気が遠くなる。おそらくは集団でぎゅうぎゅうに詰められた荷台で揺られながら行くのだろう。
「やっぱり怒ってるよな」
「怒っていません」
焦ってはいるけどな。そう心の中でつけ足すと、テオファンは駅員から教えてもらったホテル名と場所を書いたメモを取り出す。ここからそう遠くはなく、適当に歩いていけばすぐに着くだろう。
「まずは荷物を置きにいきましょう。話はそれから、で……」
「……?テオファン?」
まだ説明の途中だというのに、言葉を切り、唇を中途半端に開いたまま固まるテオファン。緑の双眸はしかと見開かれている為、何事かとドウメキも思い、彼の視線の先を辿る。だがしかし、そこにはただただ人の集まりがあるだけだった。
「なぁ」
こつん、と彼の肩を小突く。すると、やんわりとドウメキの胸が押し返された。無言の拒絶、あまり構ってほしくないらしいようだ。
「……」
テオファンが感じ取ったものは、隣で顔を覗き込んでいるドウメキにはわからないものだった。彼が聖職者だからこそ察知できたもの――即ち、膨大な神力の気配。あの人ごみの向こうに、己と同じような力を持った誰かがいる。それも、己よりも強大な存在が。
そう確信したテオファンは徐に『気配』の方へ歩いていく。ふらふらと、光に誘われる蛾のように。ドウメキは軽く肩を叩いたが、それすらも軽く払われてしまう。
スラヴレンではルイスを使って己の飢えを満たしていた。今はそれほど飢えてはいないが、それでも食欲を誘う匂いに体が抗えないのは、その特異体質故か。
「あ、ちょっと……」
ドウメキも彼を置いていくわけにはいかず、足元に置いていた鞄を持つと急ぎ足で追いかける。それほど速くは歩いていないはずなのに、テオファンはあっという間に人ごみの中に紛れてしまった。
途中すれ違う人はスラヴレンの時とは違う装いをしており、黒いコートを着たインク臭い男や、奇妙な匂いのするパイプを咥えた若者、香水をこれでもかというほどつけて、鶏のとさかのような帽子をかぶった女……ドウメキからすれば『妙ちきりん』な人ばかりだった。
彼らは、体が大きく派手な髪型をしたドウメキを見ると、まるで恐れるようにさっと道を開けていく。すれ違いざまに露骨に眉をひそめた女もいたが、ドウメキはそんなことには気づかなかった。むしろ避けてくれたことに小さく感謝をした。
「テオファン!おーい!」
鼻を片手で押さえながら、空いたほうの手を振りながら小走りで進む。そうして見覚えのある赤い髪が見えてきたが――はた、と足を止めた。
テオファンの前には見知らぬ人が二人いる。ひとりは女のようで、薄めの茶髪に昏い青の瞳、テオファンと似たような服装をしていた。もうひとりは……一言でいえば岩のような男だった。短いイエローブロンドを後ろへ撫でつけ、鷹のような鋭い目をしていた。服装はテオファンのカソックと似ていたが、あれより装飾やらが多い。聖職者の服装に関してドウメキは知識を持っていなかったが、どうにも豪華そうには見えた。
「ドウメキさん」
ドウメキが近づいてきたことに気が付いたのか、テオファンが振り返り、少しだけ肩を落とすような仕草をした。緑の虹彩は「なんでわざわざ追いかけてきたんだよ」という厭味ったらしい色をもっていてたが、そんな繊細な感情はこの『変わりもの』には通用せず、「どうした?」という無邪気な問いかけに砕け散る。
「ほほう!彼がお前の同行者か!テオファン司祭!!」
岩のような男が大きな声を張り上げた。そんな大声を出さなくてもこの距離なら聞こえるのに、とドウメキは不思議な気持ちになる。男の大声に、テオファンは愛想のよい笑顔で迎え撃った。
「……はい。彼の名前はセイル・ドウメキ。聖都へ勉学を学びたいという学生でして」
「テオファン?俺そんな――いでっ」
ドウメキの訂正は、突然感じた足の痛みによって遮られる。見れば、テオファンが後ろに回した右手の指を動かしていた。
(わざわざ『糸』を使わなくたっていいだろ……)
迂闊に口を開くともっと怒られて手足の一本はとられそうな雰囲気を感じ取り、ドウメキは「はぁ」と生返事をして軽く頭を下げる。岩男は「はっはっは!」と飼い主と犬のようなふたりを見て大声で笑った。
「では私も自己紹介をしよう!私はジョゼフ!中部統括の枢機卿を任されている!!よろしく頼む!!」
どん、と胸を張るジョゼフ。カソックのボタンは胸板の重量に耐えきれず、はち切れそうであった。
「私はジュリアン。ジョゼフ枢機卿の補佐として聖典封解儀に参加します。司祭を務めております」
ジョゼフの隣、茶髪の女がちょこんとお辞儀をした。背丈はテオファンほどあるようだが、肩や腕は女性らしく細い。正確な年齢はわからないが、テオファンとそう変わらないように見えるほど若い。
「ふん!しかし、こんな場所で足止めをくらうとは、互いに運が悪いことだ!遺憾であるぞ!!私は一刻も早く聖都へ行かなければならないというのに!!」
「ええ。まったくの不運です。明日になって、運行が回復すればいいのですが」
はぁ、とテオファンがため息をつけば、ジュリアンが「しかし」と口をはさむ。
「乗務員の情報によれば、全く予期せぬトラブルだと」
「……ふむふむ!我々も多少なりとも調査する必要はあるようだ!しかしジュリアン、今はまだその時ではないな!!」
「はい。ジョゼフ枢機卿」
ジュリアンは駅の開けた天井の窓のほうをちらと見た。さっきまで曇っていた天気は多少なりとも晴れに近づいており、白の切れ間からはくぐもった青が見え始めている。ジョゼフ枢機卿は機関車の蒸気のように鼻を鳴らすと、大変不服そうに顔を顰めた。
「我々は機を見計らうことにしよう!!いくぞ、ジュリアン!!」
「はい」
わざとらしく音を立ててマントを翻すジョゼフ枢機卿。ジュリアンは眉一つ動かさず、そのまま彼の後をついていった。
あのジョゼフも喧しい声で喚く男であったが、ジュリアンもなんとも言えない女だ。愛想笑いを終始浮かべているテオファンもドウメキからすれば異常者だが、ジュリアンは愛想笑いどころかぴくりとも表情筋を動かさない。能面でもかぶっているかのようだった。
「……なぁテオファン」
大きな影と細身の影が見えなくなったくらいに、口をとがらせていたドウメキが、テオファンの肩を軽く小突いた。
「なんですか?」
「あの人たち、なんだ?」
「片方は目上。片方は私と同格。仲間であり敵です」
「ふぅん……」
ドウメキは感想に迷ったようで何度か唇を開いたが、やがて絞り出したようにぽつりと言った。
「たしかに……、テオファンの友達って感じがする」
「……」
テオファンはじろりとドウメキをねめつけた後、帽子のつばをぐっと下げてるとさっさと駅を後にした。
リュトコ。中部の国「ルート」の中央部に位置する都市である。ルートは周りを海に囲まれ、食料が豊富に流通している国だった。このリュトコもそんなルートの特色の例にもれず、駅から少し歩けば辺りに屋台や出店が立ち並び、香ばしい匂いが漂ってきた。
「いらっしゃいお兄さん!どうこの布、刺繍が綺麗だろう?」
分厚い手をパンパンと軽快に叩きながら、呼び込みをしている太った女性の傍を通り過ぎる。木枠でできた粗末な店……とも言えぬテントには、幾何学模様が刺繍された絨毯が大量に備え付けてあり、手書きの値札が雑に張られていた。ドウメキはその模様をじっくり見ようと立ち止まったが、テオファンに強く襟首をつかまれ、引きずられて行ってしまった。
「はやく行きますよ。この手の商売は引っかかると面倒くさいですから」
「わかった。わかったから」
自分より一回り程低いテオファンに引きずられると首が痛くなる。ドウメキは手を離してもらうと、首を摩りながら充満する匂いから逃げるように鼻に手を当てた。
(変なにおいばかりする)
刺激臭、木綿のにおい、染料のこもったにおい、肉の焼けるにおい、嗅いだことのないにおいは、あの色とりどりの小さな木の実や粉末からしている――それらに人の香水や体臭が混ざって、鼻の奥から頭が痛くなる。やはり、こういった大通りは苦手だった。
「なぁテオファン。ホテルまで――うわ」
宿までまだ歩くのだろうか、と聞こうとしたところ、赤いストラを後ろに垂らしている背中が突然止まった。ぶつかりそうになったドウメキは少しよろけながら彼を避ける。
危ないじゃないかと思い横から覗き込むと、テオファンはたくさんの硝子のランプが吊るされている出店の前で止まっていた。手袋をした両手には青い細工のグラスが収まっている。
「……」
絵具で描いたような鮮やかな青に、金のラインが入っているグラスだ。淡い緑がかったブルーと落ち着いた赤の色もワインポイントのように入っており、とても美しい。スラヴレンにもあったグラスも綺麗だったが、このグラスは切子とは違った繊細な美麗さがあった。
「なぁーテオファン……」
「これください」
「まいどあり!」
銀貨を取り出してグラスと交換するテオファン。ドウメキには注意をしていたのに自分は勝手に買い物をしている。自分は棚にあげておいてなんて奴だ、と文句を言いたげに口をへの字に曲げていると、テオファンは肩を落とした。
「何拗ねてるんですか。いいでしょう。美味しい食事は綺麗な食器でいただきたいんです」
「……そう」
この男、繊細なように見えて凄まじいまでのマイペースさである。どれだけ周りにとやかく言われようとも、自分が「赤!」と決めたら赤以外の選択肢を選ばないような妙な頑固さがある。ドウメキもそれ以上の言及はせず「気持ちはわかる」とだけ答えた。口喧嘩でテオファンに勝てる気はしなかった。
「さて、せっかく止まったんですから、楽しみますか。日が沈むまであと何時間かありますし」
「うん。そうだな」
もらったグラスを大切そうに鞄の中にしまうと、テオファンはホテルの方角をもう一度確認して、観光に行くべく歩き出した。ドウメキもそれに従う。
そうしてテオファン主導による「リュトコ食べ歩きツアー」が始まった。
最初の『おやつ』は大きな蒸かしたジャガイモにチーズをつめ、その上からコーンやベーコン、オリーブやヨーグルトなどをトッピングした料理だった。
まだ湯気がでているソレをテオファンは二つ買ったので、自分にもくれるのかとドウメキは期待したが、両方ともテオファンひとりで食べていた。
皮つきのジャガイモにこれでもかというほどコーンを乗せおり、それだけで晩御飯がいらないようにも見えた。後からわかったことだが、トッピングは好きなだけかけてよかったらしい。だからといって、山のようにかけるのは何かが間違っているとドウメキは思った。
噛り付けば被り付いた芋がほろほろと崩れ、練り込まれたチーズがとろりと伸びていた。
次の『おやつ』は、薄く伸ばした小麦粉の生地に、羊肉のひき肉と玉ねぎを詰めて揚げたもの。生で詰めて油で火を通すのが特徴らしい、半円上の狐色をした食べ物だ。こんがりと揚げられており、デコボコとした表面がさらに食欲をそそる一品。こちらも「時間は待つので揚げたてをください」と注文し、四つ購入していた。今度こそ一つわけてくれるのかと思ったが、わけてくれる気配はなかったので、ドウメキは自分で買うことにした。かりっとかぶりつけば、蕩けた玉ねぎと肉汁が混ざったものがあふれ出し、香ばしい油のにおいが口腔内に広がる。外はぱりぱり、中はしっとり。塩と胡椒のシンプルな味付けで確かに美味しいが、隣の聖職者の四つは食べすぎだろう。だが、テオファンはあっという間に食べ終わってしまい、口元を軽く拭うと「次行きますよ」と当たり前のように歩を進めた。
三つ目の『おやつ』は真ん中に穴がある円形の形をしたパンだった。全面にゴマがまぶしており、しっかりと厚みをもたせてある。シナモンをきかせた紅茶と共に三つほど購入し、蜂蜜等もつけながらぺろりと食べていた。外側はかりっと焼かれており、中の白い部分はもっちりとした食感のようだったが、ドウメキは食べる気にはなれなかった。
四つ目の『おやつ』はサバを焼いてパンにはさんだ、不思議なサンドイッチだった。生の紫の玉ねぎとスライストマト、小さく切ったオリーブ、そして開いた焼きサバ。レモン汁をかけて食べるのが一般的らしく、テオファンもレモン汁を二つのサバサンドにかけていた。野菜はしゃきしゃき、挟んだパンは少し固めのもので、サバの魚臭さを感じさせない。大きな口を開けて頬張る様子はとてもおいしそうだったが、ドウメキは食べるのを遠慮した。
最後の『おやつ』は肉を串で刺して焼いたものだった。パプリカ等が交互に刺さっており、見た目はカラフルで、何とも言えないスパイスの香りが漂ってくる。挟んである肉は羊、豚、牛、鶏とあったのだが、テオファンはそのすべてを注文した。つまり合計で四本食べた。少し焦げ目がつくくらいに焼かれた肉は、特性のタレにしっかりと漬け込んであるようで、間に挟んである野菜と一緒に食べるとちょうどよい味付けだった。ドウメキはもう食べ物はしばらく見なくていいかなと思い始めていた。
そうしておやつタイムが終わることに日が沈み、ふたりはホテルへとたどり着いた。結局ドウメキが食べる気になったのは、二つ目の屋台だけだった。
駅から手配されたホテルは華美でも汚くもなく、ほどよい場所であった。外観から見た建物の大きさ的に、部屋の数は十もいかないのだろう。しかし、ドウメキとしてはそのくらいの小さい場所の方が安心することが出来たので、都合は良かった。
ホテルに到着後、二階の部屋に荷物を置き、明日からの予定をざっくりと話しあう。そんなことをしていれば、時計の短針は七の文字盤を過ぎていた。
「ああ。もうこんな時間……晩御飯食べに行きましょうか」
「うん。……うん!?」
そういって当たり前のように宿の階段を降りて行くテオファンを、ドウメキは唖然として見守ることしか出来なかった。
降りた駅のホームには「リュトコ」と書かれた地名が示されており、黒い機関車は足元から蒸気をだして停車していた。
「他の客も降りてるみたいだな」
「……」
マントを上に羽織ったドウメキがあたりを見回せば、別の車両に乗っていた客も強制的に下車させられているようだった。彼らはあまり機嫌がよくないらしく、何名かが乗務員につかみかかっては「どういうことだ」と怒鳴りつけている。乗務員のほうも暴力への対応に追われ、満足に説明も出来ていないようだ。
「……テオファン?」
「ちょっとそこで待っててください」
テオファンは荷物と外套をドウメキに押し付けると、囲われている乗務員の方へ歩いていく。あの喧騒の中に混ざるのだろうか。どさくさに紛れて殴られないかどうか少しだけ心配だが。
「皆さん、落ち着いてください」
群がる人の中、人の間を縫うようにして近づいたテオファンは、その中でもひときわ大きく声を荒げている男の肩に手を置いた。中折れ帽をかぶり、口周りに特徴的な髭を生やした太った男だ。身なりからして"小金持ち"なのだろう。だからこんな『些細なこと』にぎゃあぎゃあと口うるさく捲し立てている。
「なんだガキ!」
テオファンの声からして、彼がまだ若いのかと思ったのか、男は片腕を挙げたまま振り返った。そしてテオファンのことを見て――表情が固まる。
赤のストラと黒のカソックを身に着け、ニフェゼドの印が記された帽子を被っているテオファンを見て。
「落ち着いてくださいと、言ったのです」
ぎり、と肩に置いた手に力をかける。決して痛くない程度だが、その握力だけでこれ以上の言葉は不要であった。
――これ以上騒ぎ立てるようなら、相応の手段でおとなしくさせる、と。
「チッ!神に祈ったところで時間が戻るかってんだ」
目の前の若い男、もとい権力を持っている司祭に対しては分が悪いと思ったのか、男はホームの床に唾を吐きかけると、パイプを咥えてその場を立ち去っていった。ざり、ざり、ざりと軽快とは言えない足取りだったが、醜態を早く隠したいと言わんばかりにあわただしく太った体を揺らしていく。
テオファンは男がホームを出るまでじぃと眺めていたが、のっぺりとした背中が見えなくなったところで乗務員の方へ体を戻した。男以外にも騒いでいた客は皆一様にして黙るか、ひっそりと姿を消している。
大陸を支配しているニフェゼド教。教会の下働きこそ星の数ほどいるが、司祭以上の地位を獲得できるのはごくわずかな者だけだ。聖職者へは宗教裁判等の独自の司法権が適用され、聖都は王都よりも武力を所持していた。聖職者とは、社会的なステータスを如実に表している職業なのである。
だからこそ、こういったバカげた争いごとを一言で止めることに向いている。
「さて。皆さん、主は勝てぬ試練を課さないと言います。ここで怒りや焦りに感情を任せてしまってはいけませんよ。……乗務員さん、事情を説明してください」
「……は、はい」
助かったといわんばかりに胸を撫でおろしていた乗務員は、若き司祭の問いかけと、不安そうにしている乗客の視線を感じ、ぴしりと背を伸ばした。
「申し訳ございませんが、停車した原因は謎です。今のところ、機械の故障は起きていませんが……正直、復旧のめどは立っておりません」
ざわ、と聞いていた乗客が揺れる。乗務員はごくりと唾を飲み込んだが、テオファンは「続けてください」と先を促した。
「しかし、ここで足止めをするわけにはいきませんから……今夜はこちら側で宿を手配します。翌日、まだ汽車が動かなかった場合は、次の駅まで馬車で送り、そこから別の汽車にお乗り換えいただく……という形で」
「……馬車って、どのくらい時間がかかるんですか?」
少し嫌な単語が聞こえたテオファンは、眉間に皺を寄せた。もし自分の予想が当たれば、相当辛い選択肢を選ぶこととなる。
「はい。八時間ほどです」
「という状況ですドウメキさん祈るしかないですね」
「……テオファン、怒ってるのか?」
「怒ってないですよ。主は乗り越えられる試練しか与えませんからね」
口早に現在の状況とこれからの対応を説明したテオファンは、帽子を深くかぶり直すとため息をついた。仕方がないという事態とはいえ、思わぬ足止めを食らってしまったというものだ。シリンダーやピストンが故障していなければ発車もできるらしいが、その辺りが無事であるという証拠も確証も何もない。
(時間がないな……)
想定外の足止めが二度重なり、のんびりしているわけにもいかなくなった。一応、トラブルで遅れたという『建前』は作れるだろうが、それでも遅れを取り戻すのは自分自身に他ならない。その上、馬車での八時間の移動など気が遠くなる。おそらくは集団でぎゅうぎゅうに詰められた荷台で揺られながら行くのだろう。
「やっぱり怒ってるよな」
「怒っていません」
焦ってはいるけどな。そう心の中でつけ足すと、テオファンは駅員から教えてもらったホテル名と場所を書いたメモを取り出す。ここからそう遠くはなく、適当に歩いていけばすぐに着くだろう。
「まずは荷物を置きにいきましょう。話はそれから、で……」
「……?テオファン?」
まだ説明の途中だというのに、言葉を切り、唇を中途半端に開いたまま固まるテオファン。緑の双眸はしかと見開かれている為、何事かとドウメキも思い、彼の視線の先を辿る。だがしかし、そこにはただただ人の集まりがあるだけだった。
「なぁ」
こつん、と彼の肩を小突く。すると、やんわりとドウメキの胸が押し返された。無言の拒絶、あまり構ってほしくないらしいようだ。
「……」
テオファンが感じ取ったものは、隣で顔を覗き込んでいるドウメキにはわからないものだった。彼が聖職者だからこそ察知できたもの――即ち、膨大な神力の気配。あの人ごみの向こうに、己と同じような力を持った誰かがいる。それも、己よりも強大な存在が。
そう確信したテオファンは徐に『気配』の方へ歩いていく。ふらふらと、光に誘われる蛾のように。ドウメキは軽く肩を叩いたが、それすらも軽く払われてしまう。
スラヴレンではルイスを使って己の飢えを満たしていた。今はそれほど飢えてはいないが、それでも食欲を誘う匂いに体が抗えないのは、その特異体質故か。
「あ、ちょっと……」
ドウメキも彼を置いていくわけにはいかず、足元に置いていた鞄を持つと急ぎ足で追いかける。それほど速くは歩いていないはずなのに、テオファンはあっという間に人ごみの中に紛れてしまった。
途中すれ違う人はスラヴレンの時とは違う装いをしており、黒いコートを着たインク臭い男や、奇妙な匂いのするパイプを咥えた若者、香水をこれでもかというほどつけて、鶏のとさかのような帽子をかぶった女……ドウメキからすれば『妙ちきりん』な人ばかりだった。
彼らは、体が大きく派手な髪型をしたドウメキを見ると、まるで恐れるようにさっと道を開けていく。すれ違いざまに露骨に眉をひそめた女もいたが、ドウメキはそんなことには気づかなかった。むしろ避けてくれたことに小さく感謝をした。
「テオファン!おーい!」
鼻を片手で押さえながら、空いたほうの手を振りながら小走りで進む。そうして見覚えのある赤い髪が見えてきたが――はた、と足を止めた。
テオファンの前には見知らぬ人が二人いる。ひとりは女のようで、薄めの茶髪に昏い青の瞳、テオファンと似たような服装をしていた。もうひとりは……一言でいえば岩のような男だった。短いイエローブロンドを後ろへ撫でつけ、鷹のような鋭い目をしていた。服装はテオファンのカソックと似ていたが、あれより装飾やらが多い。聖職者の服装に関してドウメキは知識を持っていなかったが、どうにも豪華そうには見えた。
「ドウメキさん」
ドウメキが近づいてきたことに気が付いたのか、テオファンが振り返り、少しだけ肩を落とすような仕草をした。緑の虹彩は「なんでわざわざ追いかけてきたんだよ」という厭味ったらしい色をもっていてたが、そんな繊細な感情はこの『変わりもの』には通用せず、「どうした?」という無邪気な問いかけに砕け散る。
「ほほう!彼がお前の同行者か!テオファン司祭!!」
岩のような男が大きな声を張り上げた。そんな大声を出さなくてもこの距離なら聞こえるのに、とドウメキは不思議な気持ちになる。男の大声に、テオファンは愛想のよい笑顔で迎え撃った。
「……はい。彼の名前はセイル・ドウメキ。聖都へ勉学を学びたいという学生でして」
「テオファン?俺そんな――いでっ」
ドウメキの訂正は、突然感じた足の痛みによって遮られる。見れば、テオファンが後ろに回した右手の指を動かしていた。
(わざわざ『糸』を使わなくたっていいだろ……)
迂闊に口を開くともっと怒られて手足の一本はとられそうな雰囲気を感じ取り、ドウメキは「はぁ」と生返事をして軽く頭を下げる。岩男は「はっはっは!」と飼い主と犬のようなふたりを見て大声で笑った。
「では私も自己紹介をしよう!私はジョゼフ!中部統括の枢機卿を任されている!!よろしく頼む!!」
どん、と胸を張るジョゼフ。カソックのボタンは胸板の重量に耐えきれず、はち切れそうであった。
「私はジュリアン。ジョゼフ枢機卿の補佐として聖典封解儀に参加します。司祭を務めております」
ジョゼフの隣、茶髪の女がちょこんとお辞儀をした。背丈はテオファンほどあるようだが、肩や腕は女性らしく細い。正確な年齢はわからないが、テオファンとそう変わらないように見えるほど若い。
「ふん!しかし、こんな場所で足止めをくらうとは、互いに運が悪いことだ!遺憾であるぞ!!私は一刻も早く聖都へ行かなければならないというのに!!」
「ええ。まったくの不運です。明日になって、運行が回復すればいいのですが」
はぁ、とテオファンがため息をつけば、ジュリアンが「しかし」と口をはさむ。
「乗務員の情報によれば、全く予期せぬトラブルだと」
「……ふむふむ!我々も多少なりとも調査する必要はあるようだ!しかしジュリアン、今はまだその時ではないな!!」
「はい。ジョゼフ枢機卿」
ジュリアンは駅の開けた天井の窓のほうをちらと見た。さっきまで曇っていた天気は多少なりとも晴れに近づいており、白の切れ間からはくぐもった青が見え始めている。ジョゼフ枢機卿は機関車の蒸気のように鼻を鳴らすと、大変不服そうに顔を顰めた。
「我々は機を見計らうことにしよう!!いくぞ、ジュリアン!!」
「はい」
わざとらしく音を立ててマントを翻すジョゼフ枢機卿。ジュリアンは眉一つ動かさず、そのまま彼の後をついていった。
あのジョゼフも喧しい声で喚く男であったが、ジュリアンもなんとも言えない女だ。愛想笑いを終始浮かべているテオファンもドウメキからすれば異常者だが、ジュリアンは愛想笑いどころかぴくりとも表情筋を動かさない。能面でもかぶっているかのようだった。
「……なぁテオファン」
大きな影と細身の影が見えなくなったくらいに、口をとがらせていたドウメキが、テオファンの肩を軽く小突いた。
「なんですか?」
「あの人たち、なんだ?」
「片方は目上。片方は私と同格。仲間であり敵です」
「ふぅん……」
ドウメキは感想に迷ったようで何度か唇を開いたが、やがて絞り出したようにぽつりと言った。
「たしかに……、テオファンの友達って感じがする」
「……」
テオファンはじろりとドウメキをねめつけた後、帽子のつばをぐっと下げてるとさっさと駅を後にした。
リュトコ。中部の国「ルート」の中央部に位置する都市である。ルートは周りを海に囲まれ、食料が豊富に流通している国だった。このリュトコもそんなルートの特色の例にもれず、駅から少し歩けば辺りに屋台や出店が立ち並び、香ばしい匂いが漂ってきた。
「いらっしゃいお兄さん!どうこの布、刺繍が綺麗だろう?」
分厚い手をパンパンと軽快に叩きながら、呼び込みをしている太った女性の傍を通り過ぎる。木枠でできた粗末な店……とも言えぬテントには、幾何学模様が刺繍された絨毯が大量に備え付けてあり、手書きの値札が雑に張られていた。ドウメキはその模様をじっくり見ようと立ち止まったが、テオファンに強く襟首をつかまれ、引きずられて行ってしまった。
「はやく行きますよ。この手の商売は引っかかると面倒くさいですから」
「わかった。わかったから」
自分より一回り程低いテオファンに引きずられると首が痛くなる。ドウメキは手を離してもらうと、首を摩りながら充満する匂いから逃げるように鼻に手を当てた。
(変なにおいばかりする)
刺激臭、木綿のにおい、染料のこもったにおい、肉の焼けるにおい、嗅いだことのないにおいは、あの色とりどりの小さな木の実や粉末からしている――それらに人の香水や体臭が混ざって、鼻の奥から頭が痛くなる。やはり、こういった大通りは苦手だった。
「なぁテオファン。ホテルまで――うわ」
宿までまだ歩くのだろうか、と聞こうとしたところ、赤いストラを後ろに垂らしている背中が突然止まった。ぶつかりそうになったドウメキは少しよろけながら彼を避ける。
危ないじゃないかと思い横から覗き込むと、テオファンはたくさんの硝子のランプが吊るされている出店の前で止まっていた。手袋をした両手には青い細工のグラスが収まっている。
「……」
絵具で描いたような鮮やかな青に、金のラインが入っているグラスだ。淡い緑がかったブルーと落ち着いた赤の色もワインポイントのように入っており、とても美しい。スラヴレンにもあったグラスも綺麗だったが、このグラスは切子とは違った繊細な美麗さがあった。
「なぁーテオファン……」
「これください」
「まいどあり!」
銀貨を取り出してグラスと交換するテオファン。ドウメキには注意をしていたのに自分は勝手に買い物をしている。自分は棚にあげておいてなんて奴だ、と文句を言いたげに口をへの字に曲げていると、テオファンは肩を落とした。
「何拗ねてるんですか。いいでしょう。美味しい食事は綺麗な食器でいただきたいんです」
「……そう」
この男、繊細なように見えて凄まじいまでのマイペースさである。どれだけ周りにとやかく言われようとも、自分が「赤!」と決めたら赤以外の選択肢を選ばないような妙な頑固さがある。ドウメキもそれ以上の言及はせず「気持ちはわかる」とだけ答えた。口喧嘩でテオファンに勝てる気はしなかった。
「さて、せっかく止まったんですから、楽しみますか。日が沈むまであと何時間かありますし」
「うん。そうだな」
もらったグラスを大切そうに鞄の中にしまうと、テオファンはホテルの方角をもう一度確認して、観光に行くべく歩き出した。ドウメキもそれに従う。
そうしてテオファン主導による「リュトコ食べ歩きツアー」が始まった。
最初の『おやつ』は大きな蒸かしたジャガイモにチーズをつめ、その上からコーンやベーコン、オリーブやヨーグルトなどをトッピングした料理だった。
まだ湯気がでているソレをテオファンは二つ買ったので、自分にもくれるのかとドウメキは期待したが、両方ともテオファンひとりで食べていた。
皮つきのジャガイモにこれでもかというほどコーンを乗せおり、それだけで晩御飯がいらないようにも見えた。後からわかったことだが、トッピングは好きなだけかけてよかったらしい。だからといって、山のようにかけるのは何かが間違っているとドウメキは思った。
噛り付けば被り付いた芋がほろほろと崩れ、練り込まれたチーズがとろりと伸びていた。
次の『おやつ』は、薄く伸ばした小麦粉の生地に、羊肉のひき肉と玉ねぎを詰めて揚げたもの。生で詰めて油で火を通すのが特徴らしい、半円上の狐色をした食べ物だ。こんがりと揚げられており、デコボコとした表面がさらに食欲をそそる一品。こちらも「時間は待つので揚げたてをください」と注文し、四つ購入していた。今度こそ一つわけてくれるのかと思ったが、わけてくれる気配はなかったので、ドウメキは自分で買うことにした。かりっとかぶりつけば、蕩けた玉ねぎと肉汁が混ざったものがあふれ出し、香ばしい油のにおいが口腔内に広がる。外はぱりぱり、中はしっとり。塩と胡椒のシンプルな味付けで確かに美味しいが、隣の聖職者の四つは食べすぎだろう。だが、テオファンはあっという間に食べ終わってしまい、口元を軽く拭うと「次行きますよ」と当たり前のように歩を進めた。
三つ目の『おやつ』は真ん中に穴がある円形の形をしたパンだった。全面にゴマがまぶしており、しっかりと厚みをもたせてある。シナモンをきかせた紅茶と共に三つほど購入し、蜂蜜等もつけながらぺろりと食べていた。外側はかりっと焼かれており、中の白い部分はもっちりとした食感のようだったが、ドウメキは食べる気にはなれなかった。
四つ目の『おやつ』はサバを焼いてパンにはさんだ、不思議なサンドイッチだった。生の紫の玉ねぎとスライストマト、小さく切ったオリーブ、そして開いた焼きサバ。レモン汁をかけて食べるのが一般的らしく、テオファンもレモン汁を二つのサバサンドにかけていた。野菜はしゃきしゃき、挟んだパンは少し固めのもので、サバの魚臭さを感じさせない。大きな口を開けて頬張る様子はとてもおいしそうだったが、ドウメキは食べるのを遠慮した。
最後の『おやつ』は肉を串で刺して焼いたものだった。パプリカ等が交互に刺さっており、見た目はカラフルで、何とも言えないスパイスの香りが漂ってくる。挟んである肉は羊、豚、牛、鶏とあったのだが、テオファンはそのすべてを注文した。つまり合計で四本食べた。少し焦げ目がつくくらいに焼かれた肉は、特性のタレにしっかりと漬け込んであるようで、間に挟んである野菜と一緒に食べるとちょうどよい味付けだった。ドウメキはもう食べ物はしばらく見なくていいかなと思い始めていた。
そうしておやつタイムが終わることに日が沈み、ふたりはホテルへとたどり着いた。結局ドウメキが食べる気になったのは、二つ目の屋台だけだった。
駅から手配されたホテルは華美でも汚くもなく、ほどよい場所であった。外観から見た建物の大きさ的に、部屋の数は十もいかないのだろう。しかし、ドウメキとしてはそのくらいの小さい場所の方が安心することが出来たので、都合は良かった。
ホテルに到着後、二階の部屋に荷物を置き、明日からの予定をざっくりと話しあう。そんなことをしていれば、時計の短針は七の文字盤を過ぎていた。
「ああ。もうこんな時間……晩御飯食べに行きましょうか」
「うん。……うん!?」
そういって当たり前のように宿の階段を降りて行くテオファンを、ドウメキは唖然として見守ることしか出来なかった。
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