雷魔法が最弱の世界

ともとも

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魔法帝の屋敷

王都を発つ

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「ここら辺が、待ち合わせ場所だったような……いたね」

魔法帝は三人を見つけると、周りから歓声をもらいながら着陸する。

「この歓声は大変ですね……」
「アハハハ、人気者は大変だな!」
「って、喜んでるし……」

「でも、人に飲まれるから、私はすぐに出発する。今度は、任務先だ。
強くなるんだよ雷の少年」

国民がいるから、雷の少年と呼ぶ魔法帝。
こちらも響きが良くていいのだけど。

魔法帝は宙に浮いたまま、僕から手を離す。

「魔法帝様、楽しい時間をありがとうございました」

「ああ、じゃあ、またね!」

強い風が吹き、思わず目を閉じる。

次に目を開いた時には姿がなかった。

最後はとても呆気ない別れを告げる。

街の人々が騒ぎまくるから、話せる時間がないのはわかる。
別に何かを求めていたというわけではないが、後味が悪かった。


「楽しい時間も終わったね……」

「一人で、なにカッコつけているの、トモヤ」

ふと、振り向くと、セクアナがすぐ近くまで来ていた。

「終わりじゃなくて、これから始まるんだよ、私たちの冒険が!
楽しくないわけないじゃん!
ほら、呆けてないで出発するよ!」

笑顔のセクアナに手を引かれ、なすすべなく連れていかれる。


まだ、胸は締め付けられている。

苦しくて悲しい。

でもこれから、始まるのだ。
ちゃんと魔法騎士としての仕事。

新たなる冒険が。


胸がうずき、僕は声を張り上げていた。
「さあ! 出発しよう、僕たち四人でやる初任務!」

「……ちょっと無理してる?」

「っ!? うん……当たってるよ……なんだか全部、お見通しだな」
「ずっと一緒にいた仲じゃん。早く行こ!
みんなもあっちにいるから!
苦しかったらいつでも相談乗るからね!」

やっぱりセクアナには敵わないな……


昨日見たばかりだけど、サナとマネトは元気だった。

「これから任務だな! 私はちょうど戦いたくてたまらなかったところだ!
早く行こう!」

後ろにはたくさんの荷物がキャリーワゴンに積まれている……

「って、でかい!」

みんなが冷たい視線を向けるが、気にしていないようだ。

「ずっと思ってたんだけど、その荷物の中身は何?」
「トモヤ、女性にはどうしても話せない事情もあるんだぞ」

「は、はぁ……さ、さあ出発しようか!」
若干、サナのことを無視して歩き始めようとする。

一人、乗り気じゃない子がいるが。

「な、なあ、トモヤ……本当に任務に行くのか?」
小動物のような怯える目をするマネト。

結構、必死に僕の袖を掴んで行かせまいと抵抗していた。

「マネト……お金……貰えるよ」

「よし、ぶち倒そうか!」

元気になってくれた。


と、そんな会話をしているとタイミングよく、セクアナのミーティアが強く光った。

「早速だね」

初任務、巨大モンスターの討伐。
となった。


「確かに近くの街だね、歩いていけそう。それにしても的確な指示でソラさんすごいね」

ミーティアを見ながら、目を輝かせていると、横でサナが飛びつくように前のめりになる。

「それって一体なのか? 一体なら、一人しか戦えないじゃないか!」

「なんでサナは一人で戦う考え方しか持ってないの! 私たちと協力するんだよ!
協力……というか、私の専属で守って欲しいくらいだよ」
「俺の専門で守ってくれてもいいんだぞ」
「そうか、協力をするのか」

一人の戦い方しか知らないサナにセクアナはため息をつきながら、
「サナって、どんな生き方してきたの……
もしかして、ずっとボッチだったの?」
「っ!?」

その発言にサナの顔が強張る。

「え、サナずっとボッチだったの!
ごめんよ、サナ、俺よく怖がってしまうから傷ついてたよな」

「や、やめなさい」

「サナ、ボッチはそんなに悲しいものではないよ……僕も昔は、ボッチでも頑張ったものさ!」
僕はサナの肩に手を置き、憐れみの目を向ける。

「ボッチ」と言いすぎてすこし周りから視線が集まる。

「ボッチ、ボッチ言うな! 私は一人じゃない!」
「いいんだよ、サナ、私がちゃんと慰めてあげるから……」

「セクアナまで……うう、周りの視線が……」

両手で顔を覆い、耳まで赤くなっていた。

「は、早く行くぞ三人とも!」

「はーい」

サナを先頭として僕たちは進んだ。


しばらく歩いていると、あることを思い出す。

「そうそう、セクアナ」
「ん? なに?」

「これ、エキシビションマッチで優勝したから賞金をもらったんだけど………」

お金の入った袋を出すと。

「はあああぁぁぁぁぁぁ!!?」

マネトが目を飛び出して、顔を真っ赤にする。

「エキシビションマッチで賞金んんんん!
運営、賞金出るなんて言ってなかったよな! お金、もらえるなら俺だって参加してたよぉぉぉ! んで、優勝して大金もらってたのに! なんなのあいつら、大事なこと言えよ! ああ、怒った!
俺、もう、本気で怒ったからな!」

今までにないほど、酷い顔をして怒る。

まだ暴言だけなら、迷惑をかけなくていいのだけど、

「別に今から潰しに行ってもいいよな!
オラァァァ! 運営の奴らぶっ潰す!」

本気で何かを壊しに行きそうな勢いだったので、止めに入った。

「って、力強! いつものマネトの力じゃない! ど、どうなってるの?
って、サナ……サナさーん!
手伝って!」

怒ったマネトはいつもの臆病者とは考えられないバカパワーを出していた。

男でありながら、女性に助けを求めてしまう。

「ああ、しょうがないな……マネト落ち着け」

片手でマネトの腕を引っ張ると、簡単に動きは止まった。

サナのパワーが男性陣を上回る。
なんと恥ずかしい、光景だろうか。

「マネト、文句を言っているが、優勝者はトモヤだぞ! そして、私たちは同じパーティだ。考えてみろ」

「…………! うん、納得できた! さぁ、早く任務に行ってお金を稼ごう!」

無邪気な笑顔を見せるとなにもなかったかのように振る舞う。

もしかしてサナ、マネトの扱いに慣れてきているのか……


四人で行動すると騒がしくなる。
まぁ、特徴的なパーティだからなんとも言えない節がある。
だから、すぐに出発の門まで来ていた。

ここまで来て、もう一度、王都の景色を目に焼き付ける。


魔法騎士団試験に仲間。
ライバルもできた。
魔法帝、ミヨ、ソラとの出会いとお別れ。

その全てが終わった。

この地に降りて約一ヶ月。
たったこれだけの日々なのにとても濃度が濃く、今までの人生で一番充実していた。

横を見合わせると、頼もしい三人の仲間。

あれだけこの世界に絶望していたあの日の自分に、自慢したいものだ。

この世界も案外、楽しくて、素晴らしいということを。


「さぁ、私たちの冒険物語の一ページ目だよ! 出発しよっか!」

セクアナの掛け声に、僕たちは満面の笑みで、この王都というたくさんの思い出の詰まった地から出発した。








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