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凶と鏡
しおりを挟む如月弥生は戸惑っていた...。
折角手に入れたこの不思議な力でなにか良い事。
あるいは面白いこと。
もしくはその両方できないかと昨日から考えているのだが思うように良いアイデアがでない...。
そうこうしているうちに、政府から緊急事態宣言のようなものがでて最寄りの国立病院にいそぐようにしむけられた。
「罠...か?」
普段から小説や漫画に夢中になっている弥生は、こういう場合、大概政府の罠である場合が多いので勢いそう考えてしまう...。
「いや、そんな訳ないか...とりま行ってみよ。」
しかし、ちゃんとした、常識も持ちあわせていたので考え直して病院へやってきたのだ。
するとどうだろう、いきなり見知らぬ男にチェンジされてしまった!
(やっぱり罠だったのか!)
とも考えたが、どうやら政府の回し者という訳でもなさそうだ、随分と動きに無駄がある、政府の回し者はもっとこう...洗練されてなくちゃ(勝手なイメージだが)
不意をつかれたのでタックルをモロにくらってしまったが、たぶん次はよけれるだろう...。
しかもこの男、身長は申し分ないのだが顔が全然タイプではなかった...。
(これはちょっとないわね残念)
そう思ってチェンジし返してみると盛大にコケた拍子に気を失う始末...やれやれだわ...。
ようやっと起きたと思ったら今度はおかしな事を言って自分の首を締め出した。
大概の事には驚かない弥生であったが
流石にこれは気味が悪かった。
もとより断りもなく人の体を乗っ取ろうとするような輩(やから)を助ける義理もないが
このまま自殺するのを見届けるのも後味が悪い...正直途方に暮れていた。
すると、先程からこちらを見ていた少女が小さい声でなにか喋ったような気がした
「...て。」
え?なんて?
「やめて...あげて。」
ようやく聞き取れるような声で少女は言った
次の瞬間頭の中に響くほどの大声で声が聴こえた
(やめろっていってるでしょ!!!)
「ゲフッ!ゴホゴホッ!!」
絞める手がゆるんで気道が確保された。
弥生(え?今のあの女の子が叫んだの?)
それにしては声から受ける印象が違うような気もするが...。
(うるせーな、お前に指図される覚えはねぇ!)
今度は男の声が聴こえた...。
(え?だれ?)
弥生は周りを見回したが今いる3人以外は見あたらない
(わたしの指図じゃなくて、雫の意志よ...聴こえてるんでしょ?)
(わりぃわりー聴いてなかったわ)
(そんなのが通ると思ってるのキョウ?)
(思ってるよキョウ)
なんだかわからないけど、男子と女子が喧嘩してるような会話が続いている
しかもたぶんこれは...テレパシーだ!
(キョウって呼ばないでって言ってるでしょ?あなたは吉凶の凶でしょ?私は鏡のキョウなんだから!)
(鏡よ鏡、鏡さん、世界で1番口うるさいのはだぁれだ?はい!それは貴方です!)
(うるさい!)
(おーこわ)
(まもる兄さんも離してあげて)
(う...む...しかし)
もう一人いた!
無口すぎて気が付かなかったけどもう一人いたのか!
弥生は混乱したが、興奮もしていた
こんな近くにテレパスが3人も居ることに感動すら覚えていた。
しかし、依然として姿は見えない...
まさか...インビジブルなの?
攻殻機動隊なのかしら?
だとしたら知らない間にチップが頭に埋め込まれているのかしら私?
凶(そんなわけねぇだろ!)
鏡(ちょっと凶知らない人に話しかけるのはマナー違反でしょ?!)
凶(うるせーよ!それならさっきから破ってるだろーが!)
鏡(さっきの緊急事態とは違うわ)
護(むぅ...喧嘩...よくない)
凶(おめぇは黙ってろよ)
鏡(兄さんになんて事!)
凶(年齢は一緒だろうが!六つ子なんだから!)
え?六つ子のテレパス?
弥生(たかまるーー!)
凶(...男の方がヤベーヤツだと思ってたけど、この女も相当だな...。)
鏡(失礼な事言わないの!)
護(むぅ...みんな...仲良く)
「あのさ...だったら自由にさせてくれない?」
さっきから、会話を聞かされていた友也が、思わず口を挟んだ
「仲良くさ...してくれるんだろ?」
友也はぎこちない笑顔を振りまいて言った
護(おまえの...思考...危険)
口数は少ないが強い意志を感じさせる思念が流れ込んできた。
ギリリッ
そんな音が聴こえるような圧力を友也は感じていた...。
たぶんこの護とかいう奴が俺の体を押さえつけてるに違いない。
そして、俺の体に入り込んで操っているのは凶とかいう奴だ。
そして助けてくれようとしているのが鏡。
あともう1人雫とかいうのが居るらしいがよくわからない
こんな出鱈目な奴らを束ねてるみたいだからたぶん恐ろしいやつなんだろう...。
しかし、幸運だと思った事が全部裏目にでるなんてツイてない...おみくじをひいたら大凶だろう...。
(なんて日だ!)
友也が心の中で毒づいた拍子に体がフッと軽くなった
(え?あれ?)
いきなり体の自由が効くようになった
(え?許してくれるのか?)
友也が戸惑っていると廊下を何人かが駆け寄ってくるバタバタとした足音が聴こえてきた
みすず「弥生!」
弥生「え?みすず?それにお兄ちゃん!」
優「弥生!よか...よ、ようやく来たのか?遅いじゃないか...ん?あ、あの寝ている男!」
百樹「うむ、山里医師に間違いない、間に合ったようだね」
現れたのは先程すれ違った2人組とあの部屋にいた女の子だ...。
(くそっここまでか!もう少しだったのに...。)
優「弥生!お前が足止めしてくれたのか?」
弥生「え?ええと...どうだろう?そんな気もするし...。」
弥生は言葉を濁すとチラッと少女の方を見た。
勢いみんなそちらの方を見る
百樹「おおお!しずくさん!来てくれたのか!私ですよ!百樹です!」
優「え?あの子がしずく...さん?」
百樹「そう!テレパスの天乃しずくさんだよ」
山里(友也)「げっまじかよ!」
(あいつが親玉なのか?)
みんなの視線を一斉に浴びて天乃しずくは恥しそうにペコッとお辞儀をした 。
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