13 / 46
問診
しおりを挟む「だから......あの夜は友達と一緒に帰宅してる途中に紫色の空を見たことは見たわ」
「ふむ......それで?」
山村みすずは、個室に移動してガスマスクをつけた白衣の医師、、、らしき人から問診と称して色々聞かれていた。
しかし、問診というより、これは事情聴取に近いなと、みすずは思い始めていた。
「それで、その友人が......空がおかしいっていうから思わず見上げたんだけど...。てゆか、なんでその夜の天気の事をそんなに聞くんですか?」
「いや、一応.......全員に聞いてるんだよ。マニュアルがあってね、関係ないかもしれないけど一応ね...」
「はぁ...」
「それでその友人のお名前は?」
「友人は関係ないでしょ!」
みすずは怒った口調で言ったが...。
「い.......一応、念の為だよ。その友人も困ってるかも知れないだろ?」
そういわれると確かにそうかもしれない、あまりの事に気が動転してるかも、、、。
「だから、もしどこの誰かわかったら、助けたいんだよ」
「弥生です」
「やよいちゃん?」
「そうです」
「で、その弥生ちゃんと一緒にずっと空を見てたの?」
「いえ、しばらく見てたら急に帰るって言い出したんで、すぐに別れました」
「なるほど、そのあとは先ほど話した通りかな?」
「そうです、お母さんと、その.......入れ替わったんです」
「ふむふむ、それは.......どんなかんじ?夢の中とかと似てる感じかな?」
「いや、なんでそうなるの?さっきも言った通り本当なんだってば!」
なかば諦めが入っていたが、どうしても、みすずは言わずにいられなかった。
このわからず屋にも脳天にバチーンと食らわそうかしら?
みすずがそんな事を考えてると何やら外が騒がしくなってきているらしく、目の前の医師はしきりに外の様子を気にしてる様だった。
「ちょっと待っててね」
そういうと医師は外の様子を伺う為に部屋のドアを少し開けた
「だからそいつは犯人なんだって!」
だれかが大声で叫んでいた。
山崎了は通された大広間で叫んでいた。
結局あれから被害者の女性と被疑者の男性とを引連れて、警報の通りに最寄りの大病院に向かうことにしたのだ。
ところが、来てみると物々しい警備と同時に軟禁状態に置かれてしまっている現場をみて、思わず苦言を呈していた。
「ですから私は警官で!こちらの女性が被害者で!こちらの男性がまぁ、怪我はしてるんですけど、被疑者なんですよ!」
病院と言うこともあり、車椅子をつかわせて貰っている石川良二は肩をすくめて苦笑いしながら口を挟む。
「.......だそうです」
ガスマスクをした白衣の男が要領を得ないという顔をしながら
「はぁ、そういわれましても...どんな職業の方でも一律同じ扱いをするように言われてますので.......」
と山崎を宥めた。
「.......だそうですよお巡りさん」
石川が口を挟む。
「あなたは黙ってて!」
観月光の突然の大声に周りの人間は一瞬肩を揺らして目を丸くする。
石川は口をへの字にまげて肩をすくめた。
どうも山崎が考えていた事態とはかなり違っているようだ。
お手柄、、、いやいやそれどころか、これでは逆に犯人のような扱いだ。
「ところで...どんな罪状なんです?」
医師のひとりが尋ねた。
「え、えーと、それは...」
そうだ、罪状と言っても今までに起こったことのないケースだ、刑事告訴は無理だろう・・・
なんて言えばいいんだろう?
「それと、そちらの被疑者ですけど、銃創のような怪我をされてると手当てをした医師から聞いておりますが.......」
不味い・・・なんていおうか?
山崎は心情的に観月に同情的であったのでなんとか誤魔化せないだろうかと頭をめぐらせた。
「私がやりました」
「え?」
山崎の心配を他所にあっさりと観月が喋ってしまった。
「いや、あの.......正当防衛でしたよ」
思わず山崎は庇ってしまった。
確かに、過剰防衛というか、殺人未遂と言えなくもないが、なんというか、、、気持ちはわかるので彼女を犯人にしたくはなかった。
「いえ、その男に天誅をくわえようとして撃ちました」
またもや断言する観月。
頼むから黙っててくれー
山崎は心の中で叫んだが、無駄であった。
観月は続けた。
「その男のやった事が今の法律で裁けないから、代わりに私が裁いたのよ、なにか間違ってるかしら?」
「間違っちゃいないが.......ここでは無理みたいだぜ」
石川が言った。
「え?」
と山崎。
石川は続けた
「ここではどうやら、警官もホームレスも被疑者も被害者も関係ないらしいって話だよ」
「どういうことだ?」
「つまり、感染者と感染してない人、という線引きがあるだけで、感染者のなかに、どんな職業の人がいても関係ないって話、みんな患者という意味で平等に隔離されてるのさ」
隔離という言葉に周りの人々が騒然となった。
今まで漠然とした不安でしかなかったが、具体的な言葉にされてしまうと、途端にそれは現実味を帯びてくる。
「ほんとうか?隔離されてるのか?」
「ちょっと、まさか家に帰れないの?冗談じゃないわ」
皆が一斉に不満を口にし始める。
「待ってください...これは、みなさんの為なんです...みなさんの安全の為に...」
ガスマスクの一人が群衆の混乱を宥めようとする。
「なにが、安全の為だ!それが本当なら我々にもその、ガスマスクを配るはずじゃないか!」
いままで、だまって大人しくしていた、おばさんも不満と猜疑の目を周りのガスマスクをした連中に向けていた。
「そうよ!いつまでこのままで居なきゃだめなのよ!」
隣のおじさんも不満の声を...。
「あの人達.......」
まだ入れ替わっているんだ...。
様子を伺っていた山村みすずはそう確信した。
考えてみれば、そういう人が居てもおかしくないことに今更気がついた。
だんだんと集められた人々の不満の声は大きくなっていく。
隔離された集団はなにかのキッカケが原因で暴徒化しやすい...。
みすずは何かの本にそう書いてあったのを思い出した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
おっ☆パラ
うらたきよひこ
キャラ文芸
こんなハーレム展開あり? これがおっさんパラダイスか!?
新米サラリーマンの佐藤一真がなぜかおじさんたちにモテまくる。大学教授やガテン系現場監督、エリートコンサル、老舗料理長、はたまた流浪のバーテンダーまで、個性派ぞろい。どこがそんなに“おじさん心”をくすぐるのか? その天賦の“モテ力”をご覧あれ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
オアシス都市に嫁ぐ姫は、絶対無敵の守護者(ガーディアン)
八島唯
キャラ文芸
西の平原大陸に覇を唱える大帝国『大鳳皇国』。その国からはるか数千里、草原と砂漠を乗り越えようやく辿り着く小国『タルフィン王国』に『大鳳皇国』のお姫様が嫁入り!?
田舎の小国に嫁入りということで不満たっぷりな皇族の姫であるジュ=シェラン(朱菽蘭)を待っているのタルフィン国王の正体は。
架空のオアシス都市を舞台に、権謀術数愛別離苦さまざまな感情が入り交じるなか、二人の結婚の行方はどうなるのか?!
隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち
鳴澤うた
キャラ文芸
失恋にストーカー。
心身ともにボロボロになった姉崎菜緒は、とうとう道端で倒れるように寝てしまって……。
悪夢にうなされる菜緒を夢の中で救ってくれたのはなんとお隣のイクメン、藤村辰巳だった。
辰巳と辰巳が世話する子供たちとなんだかんだと交流を深めていくけれど、子供たちはどこか不可思議だ。
それもそのはず、人の姿をとっているけれど辰巳も子供たちも人じゃない。
社を持たない龍神様とこれから神使となるため勉強中の動物たちだったのだ!
食に対し、こだわりの強い辰巳に神使候補の子供たちや見守っている神様たちはご不満で、今の現状を打破しようと菜緒を仲間に入れようと画策していて……
神様と作る二十四節気ごはんを召し上がれ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる