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初診
しおりを挟む「だから言ったのよ!気が進まないって!」
山村みすずは大声をあげた、周りの人間が驚いてこちらを一斉にみた。
いや、その半数くらいは本当に驚いているかどうかは厚いガスマスクの様なものをしているのでわからない白衣を来た人達が遠巻きにみている。
なんなんだここは?
みすずは心の中で舌打ちした。
山村みすずと、山村ゆり子は結局最寄りの大学病院に行くことを決めたのだった。
来てみると、なぜか無駄に広いけれど窓のない大きな部屋に通されて、知らない人達と一緒に居なければならない羽目になっている。
よく見ると入口という入口にはガスマスクをして銃のような物をもった警備員らしき人が立っている。
そして体にはカップ焼きそばの器をひっくり返したようなものを何個もつけている服をきている...防弾チョッキにしては分厚い感じだ。
見るからにイカツイ格好だが、唯一の救いは病院という事もあって全員が給食当番が被るようなキャップ帽を被っているのがコミカルに見えなくもない。
彼らの言い分によると、危険な状態から守っているらしいが、どう考えても、守られてるという気がしない...むしろ・・・拘束?
「みすず、あんまり騒ぐと...。」
「騒ぐとなんだっていうの?まさか、撃たれるとでも?」
「そ、そうは言わないけど...病院だし。」
母が心配そうに周りをみわたすと銃をもっている自称警備の者のリーダーのような人が言った。
(なぜリーダーのような気がしたかというと、その人のキャップだけ赤かったからだ、いまも昔も赤はリーダーっぽくみえる。)
「大丈夫ですよ、我々は万が一に備えてここに居るだけですから...見た目が多少...物騒ですけどね。」
多少じゃないだろ!
みすずは心の中で毒づいた
そしてつい、2,3時間まえの自分の考えが甘すぎたことに腹を立てていた。
あの時もっと強く止めていれば...。
2,3時間前のことをみすずは思い返した。
テレビを消したあと母娘は結局、もう1度同じシチュエーションを作るという方法でもとに戻るかどうか試すことにした。
最初はみすずがビビりすぎて、頭を軽く叩いたので、チョットだけ母の顔が浮いてすぐにもとに戻った。
その様子がコミカルだったので、何回もやっているうちに、ゆり子の堪忍袋の緒が切れる音がした。
プチッ
「あんた、ふざけてる場合じゃないでしょ!」
バチーーン!
いい音がして、みすずは頭を押さえて叫んだ。
「なにすんのよ!」
と、言ったとおもったが、声になってない!
あれ?やった!これだ!
ゆり子がまた驚いた顔でこちらをみてる。
そうか、肉体から離れてるから、声が出なかったのか!
でも・・・これからどうしたんだっけ?
そうだ!近づいたんだ!
みすずはゆり子をつかもうとしたが、すっとすり抜けた。
あ...そうか!あのときは母が幽霊みたいに掴めないと思ったけど逆だったんだ!
今更気がついて、みすずはしきりに納得してスッキリした...たしかこれって?アハ効果って言うんだっけ?
そんな事を考えていると、みすずが抜けかけているせいか、ゆり子の身体はかなり不安定になっている
母はその不安定な体を抑えようとしてお互いがハグするような形になった。
グン!
そんな音が聞こえたような気がした次の瞬間
2人はお互いの顔をみた。
「みすず?」
「母さん?」
やった!もどったよおおお!
母娘はしばらく嬉しくてハグしあって泣いたが、念のためまた入れ替わらないように身体を離すことにした。
「それにしても」
母はいった
「どうしようかしらね、これから...。」
そうだ、戻ったので万々歳という事にはならないことをみすずは思い出した。
たぶん政府の発令した緊急なんちゃらが、本当だとしたら、今の状態も安心という事にはなってないらしい...。
しかし、あのテレビ中継をみた後では、おいそれと全てを任せようという気にもなれず...。
母娘は、とりあえずどうしたらよいのか悩んでいる所だった。
「一応、行くだけ行ってみましょう。気に入らなければ帰って来ればいいわ。」
母はそう言った。
「う...ん、そうだけど...気が進まないな...。」
娘は渋った。
何か明確な反論がある訳では無い、医療費や交通費は全額、国が負担してくれるらしいし、それで、なにか少しでも今の置かれてる状況がわかるなら良いのだけど...。
一つだけ気になるのは、優遇すぎるというのが引っかかるのだ。
タダより高いものは無い。
お父さんの口癖だ
お母さんは合理主義なので
「何言ってるの?タダより安いものはないでしょ?」
と言うのだが...。
うーん
決め手となる反論がなんとなくでは、弱すぎるので、結局母ゆり子の言う事を聞くことにした。
「みすず支度できた?」
「...はーい。」
なんとなく気が進まなかった。
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