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不思議なメール
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阿部親子の家から退散してきた池照の携帯に如鏡《しきょう》のパソコンからメールがおくられてきた。
「お前、さっきから何見とん?」
岩井が横から池照の携帯を覗き込んで言った。
「え?あ……いや!なんでもないですこれは!」
「さよか……なんでもないならええけど」
「はい」
「また如月の嬢ちゃんに相談して、協力させてるんかとおもうて焦ったわ」
「そんなバカな」
池照は完璧に近い芝居が出来たと自分で自負した。
「ほいで?」
「はい?」
「はい?やないよ……ほいで嬢ちゃんなんてゆうてんの?」
「いや……ですから相談してないですって」
「嘘はええねん!時間が勿体ないからはよゆうて!なんて書いてあるのかゆうて!そのお嬢ちゃんからのメール!」
池照はなんでバレたのかわからなかったが仕方なくメールを見せた。
「最初からすっとみせいや。たくっ」
そういうと岩井は池照から携帯を取り上げた。
「……なんやこれ?」
「さぁ?なんでしょう?」
「……まぁ、ええわ、このとおり調べよか」
「え?!」
「なに驚いてんねん。その為に聞いとるんやろ?」
「ま、まぁ、そうなんですけど。先輩...…いいんですか?」
「いいもなにもないわ。とりあえず通常捜査で行き詰まってるんやからしゃーないやろ?」
「まぁ、たしかに……」
「なんや?なんか言いたい顔やな?」
「いえ……意外だなと」
「変な感心のしかたせんでええねん。とりあえずメールの指示どおりやってみよや……なんもせんよりかなりましやろ?」
「ですね」
池照はメールの内容を見直した。
以下、如鏡《しきょう》からのメール。
『どうもごきげんよう池照さん、昨日おくられてきた資料ひと通り読ませて頂きました。そこで、調べて頂きたいことがいくつか御座いますので、よろしかったら調べて頂けたら幸いです。無理そうでしたら優秀な探偵の裏山さんにお願いしますのでお気になさらず。
先ず最初は中川翔子さんの事件当日のお休みの件ですが、もしかしたら決まっていたわけではなく、唐突にお休みを頂いたのではないかと言う事。
もう一つ、中川翔子さんがコンビニに入る前に黄色い服の女性を見かけていないかお伺いしてもらえませんか?
それと被害者の後頭部の後ろに打撲痕がないか再度鑑識で調べてもらえないでしょうか?
後、もう一つだけ。トイレの鍵ですけど、回して引っ掛けるタイプですよね?どちらかから回す取っ手の部分ではなく引っ掛ける方から指紋ではなく指の横の部分が付着した様子がないか調べてもらえませんか?
よろしくお願いします。如月如鏡』
裏山詩歌は如月邸の応接室で、如鏡のノートパソコンを覗き込みながら言った。
「あの……これでなにがわかるんです?」
「え?色んな事がわかると思うけど、例えば指のどこかの部分が触れた痕跡があれば、誰かが慌ててトイレを密室にせざる負えなかった事がわかるわ」
「え?わざわざ指で?何か薄いものを使えば痕跡を残さない様にできる気がしますけど」
「もちろんそうね。でも犯人が慌てていたらそこまで考えが及ばないでしょ?」
「慌てていたと思うんですね?」
「計画性がなかったと言うことも含めて解ると言ってるだけよ。それに……もしかすると、誰が密室にしたのかも、わかるかもしれないでしょ?」
「ふーむ、しかし、もしこれでなにか出てきたら鑑識の怠慢じゃないですか?」
「あら、どうして?」
如鏡《しきょう》は驚いた様に聞いた。
「え?だって、後頭部の打撲痕とか鍵の指紋とか……見逃してるわけでしょ?」
「あなた、ドラマの見すぎね、これくらい見逃したうちに入らないわ」
「そうなんですか?」
「そうよ、鑑識って言うと全部調べるみたいな風に捉えられるけど、実際は現場の所見に沿うように調べて終わり。そうじゃないと終わらないもの」
「見てきた様な台詞ですね?」
詩歌は呆れたように言った。
「鑑識に知り合いが居るの」
「……交友関係がお広い」
「それに、指紋なんてだいたい触りそうな所を調べたら終わりに決まってるでしょ?普通は触らない様な所は調べないわ」
「でも、掃除して消えてません?」
「掃除して消える様な場所なら最初から頼まないわ」
「確かに……取っ手の手で触れる逆側なんて普通なら掃除しませんね」
「うちのバアヤなら拭き取っちゃうかもね」
「それは優秀ですね」
「ほんとに」
遠くの部屋で誰かのクシャミが聴こえてきた。
「お前、さっきから何見とん?」
岩井が横から池照の携帯を覗き込んで言った。
「え?あ……いや!なんでもないですこれは!」
「さよか……なんでもないならええけど」
「はい」
「また如月の嬢ちゃんに相談して、協力させてるんかとおもうて焦ったわ」
「そんなバカな」
池照は完璧に近い芝居が出来たと自分で自負した。
「ほいで?」
「はい?」
「はい?やないよ……ほいで嬢ちゃんなんてゆうてんの?」
「いや……ですから相談してないですって」
「嘘はええねん!時間が勿体ないからはよゆうて!なんて書いてあるのかゆうて!そのお嬢ちゃんからのメール!」
池照はなんでバレたのかわからなかったが仕方なくメールを見せた。
「最初からすっとみせいや。たくっ」
そういうと岩井は池照から携帯を取り上げた。
「……なんやこれ?」
「さぁ?なんでしょう?」
「……まぁ、ええわ、このとおり調べよか」
「え?!」
「なに驚いてんねん。その為に聞いとるんやろ?」
「ま、まぁ、そうなんですけど。先輩...…いいんですか?」
「いいもなにもないわ。とりあえず通常捜査で行き詰まってるんやからしゃーないやろ?」
「まぁ、たしかに……」
「なんや?なんか言いたい顔やな?」
「いえ……意外だなと」
「変な感心のしかたせんでええねん。とりあえずメールの指示どおりやってみよや……なんもせんよりかなりましやろ?」
「ですね」
池照はメールの内容を見直した。
以下、如鏡《しきょう》からのメール。
『どうもごきげんよう池照さん、昨日おくられてきた資料ひと通り読ませて頂きました。そこで、調べて頂きたいことがいくつか御座いますので、よろしかったら調べて頂けたら幸いです。無理そうでしたら優秀な探偵の裏山さんにお願いしますのでお気になさらず。
先ず最初は中川翔子さんの事件当日のお休みの件ですが、もしかしたら決まっていたわけではなく、唐突にお休みを頂いたのではないかと言う事。
もう一つ、中川翔子さんがコンビニに入る前に黄色い服の女性を見かけていないかお伺いしてもらえませんか?
それと被害者の後頭部の後ろに打撲痕がないか再度鑑識で調べてもらえないでしょうか?
後、もう一つだけ。トイレの鍵ですけど、回して引っ掛けるタイプですよね?どちらかから回す取っ手の部分ではなく引っ掛ける方から指紋ではなく指の横の部分が付着した様子がないか調べてもらえませんか?
よろしくお願いします。如月如鏡』
裏山詩歌は如月邸の応接室で、如鏡のノートパソコンを覗き込みながら言った。
「あの……これでなにがわかるんです?」
「え?色んな事がわかると思うけど、例えば指のどこかの部分が触れた痕跡があれば、誰かが慌ててトイレを密室にせざる負えなかった事がわかるわ」
「え?わざわざ指で?何か薄いものを使えば痕跡を残さない様にできる気がしますけど」
「もちろんそうね。でも犯人が慌てていたらそこまで考えが及ばないでしょ?」
「慌てていたと思うんですね?」
「計画性がなかったと言うことも含めて解ると言ってるだけよ。それに……もしかすると、誰が密室にしたのかも、わかるかもしれないでしょ?」
「ふーむ、しかし、もしこれでなにか出てきたら鑑識の怠慢じゃないですか?」
「あら、どうして?」
如鏡《しきょう》は驚いた様に聞いた。
「え?だって、後頭部の打撲痕とか鍵の指紋とか……見逃してるわけでしょ?」
「あなた、ドラマの見すぎね、これくらい見逃したうちに入らないわ」
「そうなんですか?」
「そうよ、鑑識って言うと全部調べるみたいな風に捉えられるけど、実際は現場の所見に沿うように調べて終わり。そうじゃないと終わらないもの」
「見てきた様な台詞ですね?」
詩歌は呆れたように言った。
「鑑識に知り合いが居るの」
「……交友関係がお広い」
「それに、指紋なんてだいたい触りそうな所を調べたら終わりに決まってるでしょ?普通は触らない様な所は調べないわ」
「でも、掃除して消えてません?」
「掃除して消える様な場所なら最初から頼まないわ」
「確かに……取っ手の手で触れる逆側なんて普通なら掃除しませんね」
「うちのバアヤなら拭き取っちゃうかもね」
「それは優秀ですね」
「ほんとに」
遠くの部屋で誰かのクシャミが聴こえてきた。
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