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おばちゃんの証言
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池照がコンビニを出ると、岩井が誰かと話し込んでいた。
相手はどこかの主婦の様であったが…池照はその顔になぜか見覚えがあった。
「あ、あの、岩井さん?そちらの方は?」
「おう、ようやく来たか。そちらもどちらもあらへんがな、さっき見たばっかりやろ?」
「あ、ああ!」
池照はさっきの防犯カメラに写っていたブルーベリーみたいな色の服を着た、いかにもおばちゃんという体型と髪型の主婦を思い出した。
「なに?なんですの?人の顔指でさしてからに、いけすかんわぁー、イケメンじゃなかつたらひっぱたいてる所やわ。」
「す、すみません。ついびっくりしてしまって…こちらのコンビニを利用されてた方ですね?」
「まぁ、そうですけど、なにかありました?そちらの刑事さんにも言いましたけど、私ビールを買いに来ただけですよ。」
「はい、でもトイレを使われましたよね?」
「そりゃ使うわよ。使っちゃダメなの?」
「いえ、全然良いんですけど、そのときの状況を教えていただけないかと…。」
「状況って言ってもねぇ、普通に入っただけだけど…。」
「そこを詳しく。」
「ええ?なにを詳しく話せばいいのよ?」
そこで岩井が口を挟んだ。
「たとえば、どっちのトイレにはいったか?とかです、あとその時誰かいなかったか?」
それを受けて池照も言った。
「そうそう、それと、へんな音は聞こえなかったか?とかもです。」
「そんなに矢継ぎ早に質問されてもねぇ…。」
「ゆっくりでいいので…。」
そういうと池照はニコッと笑った。
池照は自分が女性に好かれやすい事を知っている。
しかし普段は別段気にはしないのだが捜査を円滑に進めるために必要とあらば惜しみ無く使おうと決めているのだった。
女性の名前は山村もみ、と名乗った。名前を聞くたびに岩井刑事が「惜しい!」と謎の雄叫びをあげるのだが池照は無視した。
何でも山村さんは事件や事故に頻繁に遭遇するらしくて近所では評判らしい。
「ほんとですか?」
「ほんとよなのよこれが!この前もほら!タクシー強盗あったでしょ?あの時偶然通りかかってねぇ、逃げる犯人の足を引っ掻けて転ばせたのよ!傑作だったわー!」
「なるほどぉ…それはお手柄でしたね、それはそうと今回の事件の事を聞きたいんですが…。」
「あ、そうそうそうだったわね。」
大方、近所の評判というのも自分から触れ回ってるのじゃないかと池照は思った。
「では、少し思い出してもらってよろしいですか?こちらのコンビニのトイレに山村さんは二回入ってますよね?」
「え?二回?借りたのは一回じゃなかったかしら?まさか私を自宅のトイレの水がもったいないから近所のコンビニ利用してる人みたいに言うわけ?」
「いえ、そうは言ってません。そうじゃなくて、短い時間で出入りしてる様子がカメラに写ってるんですよ。」
「え?カメラに撮ってるの?いやらしい。」
「いやいや、カメラといってもドアの外についている防犯カメラですのでご安心を…。」
ふぅ…。
調子が狂う…。思わずため息をついてしまった。
「あら疲れたの?うちによってく?すぐ近くよ?」
「いえ、結構です、まだやることがありますので…それとも、あまり思い出せない様でしたらまた後日でも…。」
「あ、思い出したわ。」
イケメンの話し相手を逃がさない為なのかすぐになにかを思い出したらしい。
「そういえば、一回目に入ったときはトイレが塞がっててすぐに出てきたのよ。」
「なるほど…それで外で。」
「そうなの誰か出てきたら入ろうと思ってね。そしたら茶髪の女子高生がでて来たんでマジマンジだったわけ。」
「え?どういう意味ですか?マジマンジって?」
「よく知らないけど、よっしゃー!みたいな意味じゃないの?」
「は、はぁ。」
たぶん間違って使っていると思うが触れないで置こう。
「それで、その後トイレに入ったときは何か変わったことありました?」
「え?そうねぇ、うまい具合に女子専用の方が空いたんで用を足してたら、いきなりアラームが鳴り出したくらいかな?」
それだ!アラームの鳴り出した時間がだいたいわかった。
「その後どうしました?」
「どうしたって、まず紙で拭いてから…あ、私ウォシュレット苦手なのよね…。だから紙で直に…。」
「いや、そこははしょって大丈夫です。トイレがすんでから洗面台のあるスペースにでた時に誰かみませんでした?」
「そうねぇ、そういえば丸刈りの坊主頭の男の子が居たわねなんかバツわるそうだったけど…。」
「なるほど、その坊主頭の男の子は見覚えなかったですか?」
「ないわね、あったら覚えてるわよ。だって丸坊主でなかったらジャニーズに居そうな顔だもの…あ、カワイイ系のほうね。」
なに系でも良かったが、だいたい聞くべき事は聞いたかなと池照は思った。
「ありがとうございました。またなにかありましたら御協力をお願いするかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。」
そういって池照は頭を下げた。
「もちろんよ、市民の義務ですものね!なんなら家で話してもいいわよ…あ、主人が居ないときね!」
そういうと山村もみさんはウィンクしてみせた。
苦笑いをする池照を肘で小突いて岩井が冷やかして言った。
「ほんま、おおきになぁ、ここだけの話やけど、この男はこう見えてストライクゾーンひろいさかい、間違いなく期待に応えるでぇ!」
「余計な事言わなくて良いですよ岩井さん。」
そう言った池照の顔は少しひきつっていた。
相手はどこかの主婦の様であったが…池照はその顔になぜか見覚えがあった。
「あ、あの、岩井さん?そちらの方は?」
「おう、ようやく来たか。そちらもどちらもあらへんがな、さっき見たばっかりやろ?」
「あ、ああ!」
池照はさっきの防犯カメラに写っていたブルーベリーみたいな色の服を着た、いかにもおばちゃんという体型と髪型の主婦を思い出した。
「なに?なんですの?人の顔指でさしてからに、いけすかんわぁー、イケメンじゃなかつたらひっぱたいてる所やわ。」
「す、すみません。ついびっくりしてしまって…こちらのコンビニを利用されてた方ですね?」
「まぁ、そうですけど、なにかありました?そちらの刑事さんにも言いましたけど、私ビールを買いに来ただけですよ。」
「はい、でもトイレを使われましたよね?」
「そりゃ使うわよ。使っちゃダメなの?」
「いえ、全然良いんですけど、そのときの状況を教えていただけないかと…。」
「状況って言ってもねぇ、普通に入っただけだけど…。」
「そこを詳しく。」
「ええ?なにを詳しく話せばいいのよ?」
そこで岩井が口を挟んだ。
「たとえば、どっちのトイレにはいったか?とかです、あとその時誰かいなかったか?」
それを受けて池照も言った。
「そうそう、それと、へんな音は聞こえなかったか?とかもです。」
「そんなに矢継ぎ早に質問されてもねぇ…。」
「ゆっくりでいいので…。」
そういうと池照はニコッと笑った。
池照は自分が女性に好かれやすい事を知っている。
しかし普段は別段気にはしないのだが捜査を円滑に進めるために必要とあらば惜しみ無く使おうと決めているのだった。
女性の名前は山村もみ、と名乗った。名前を聞くたびに岩井刑事が「惜しい!」と謎の雄叫びをあげるのだが池照は無視した。
何でも山村さんは事件や事故に頻繁に遭遇するらしくて近所では評判らしい。
「ほんとですか?」
「ほんとよなのよこれが!この前もほら!タクシー強盗あったでしょ?あの時偶然通りかかってねぇ、逃げる犯人の足を引っ掻けて転ばせたのよ!傑作だったわー!」
「なるほどぉ…それはお手柄でしたね、それはそうと今回の事件の事を聞きたいんですが…。」
「あ、そうそうそうだったわね。」
大方、近所の評判というのも自分から触れ回ってるのじゃないかと池照は思った。
「では、少し思い出してもらってよろしいですか?こちらのコンビニのトイレに山村さんは二回入ってますよね?」
「え?二回?借りたのは一回じゃなかったかしら?まさか私を自宅のトイレの水がもったいないから近所のコンビニ利用してる人みたいに言うわけ?」
「いえ、そうは言ってません。そうじゃなくて、短い時間で出入りしてる様子がカメラに写ってるんですよ。」
「え?カメラに撮ってるの?いやらしい。」
「いやいや、カメラといってもドアの外についている防犯カメラですのでご安心を…。」
ふぅ…。
調子が狂う…。思わずため息をついてしまった。
「あら疲れたの?うちによってく?すぐ近くよ?」
「いえ、結構です、まだやることがありますので…それとも、あまり思い出せない様でしたらまた後日でも…。」
「あ、思い出したわ。」
イケメンの話し相手を逃がさない為なのかすぐになにかを思い出したらしい。
「そういえば、一回目に入ったときはトイレが塞がっててすぐに出てきたのよ。」
「なるほど…それで外で。」
「そうなの誰か出てきたら入ろうと思ってね。そしたら茶髪の女子高生がでて来たんでマジマンジだったわけ。」
「え?どういう意味ですか?マジマンジって?」
「よく知らないけど、よっしゃー!みたいな意味じゃないの?」
「は、はぁ。」
たぶん間違って使っていると思うが触れないで置こう。
「それで、その後トイレに入ったときは何か変わったことありました?」
「え?そうねぇ、うまい具合に女子専用の方が空いたんで用を足してたら、いきなりアラームが鳴り出したくらいかな?」
それだ!アラームの鳴り出した時間がだいたいわかった。
「その後どうしました?」
「どうしたって、まず紙で拭いてから…あ、私ウォシュレット苦手なのよね…。だから紙で直に…。」
「いや、そこははしょって大丈夫です。トイレがすんでから洗面台のあるスペースにでた時に誰かみませんでした?」
「そうねぇ、そういえば丸刈りの坊主頭の男の子が居たわねなんかバツわるそうだったけど…。」
「なるほど、その坊主頭の男の子は見覚えなかったですか?」
「ないわね、あったら覚えてるわよ。だって丸坊主でなかったらジャニーズに居そうな顔だもの…あ、カワイイ系のほうね。」
なに系でも良かったが、だいたい聞くべき事は聞いたかなと池照は思った。
「ありがとうございました。またなにかありましたら御協力をお願いするかもしれませんので、その時はよろしくお願いします。」
そういって池照は頭を下げた。
「もちろんよ、市民の義務ですものね!なんなら家で話してもいいわよ…あ、主人が居ないときね!」
そういうと山村もみさんはウィンクしてみせた。
苦笑いをする池照を肘で小突いて岩井が冷やかして言った。
「ほんま、おおきになぁ、ここだけの話やけど、この男はこう見えてストライクゾーンひろいさかい、間違いなく期待に応えるでぇ!」
「余計な事言わなくて良いですよ岩井さん。」
そう言った池照の顔は少しひきつっていた。
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