上 下
131 / 141
本編

第123話 物事は進んでいくもの

しおりを挟む
 今はジェイシス様の公爵領領地。

 王都から東の肥沃な領土。1年中農作物溢れている活気ある市場。豊かだなぁと感じる。
 人々が幸せそうだ。

 美味しそうな匂いに足を止めて、美味しそうな果物に目が行き、また足を止めてしまう。

 隣にいるジェイシス様は反対方向に顔を向け、肩が震えている。思いっきり笑われていますね。

「アイリ、食べたいものがあれば言って欲しい。食べたいのだろう?」

「串肉食べていいのですか。齧り付いていいのですか?」
 かなり引いてしまったかな。食べたいもんね。
 今の格好は街娘風の装いだけど、隣がジェイシス様だからバレバレなのよね。生温かい目で見られていた。

「もうみんなにバレているのだから、串肉食べてもいいだろうが、逆にいいのか?齧り付いて?」

「大丈夫よ。みんな見て見ぬふりをしてくれると思うわ」
 やはり大笑いされてしまった。

「見て見ぬ振りはしてくれるかなぁ?どうだろうなぁ。買いに行こう。あと何が食べたい?」

 それから食べたい者を並んで買った。串肉は塩加減が絶妙。美味しい。もちろん齧り付きましたよ。
 魔物の肉らしい。豚肉のようだから、オーク?鶏肉がコカトリスやうさぎ肉がホーンラビット。ファンタジーだ。

「アイリは躊躇なく食べるよね。魔物肉というと令嬢は嫌がるだろう」

「私は、前世の記憶持ちだから、ファンタジーの世界と思ってしまうのです。その作られた世界でもオーク、コカトリス、ミノタウロスなどの魔物肉を食べるとなっているので、私もファンタジーの世界を堪能しているのだ、という思いがあるのです」

「そうなのか、アイリは前世の記憶がある。その世界のことも聞きたいな」

「そうですね、大した生活はしてないですよ」
 それから家族構成、学校生活、バブル崩壊で生活が一変したこと、弟と妹たちとの生活、仕事生活のことを歩きながら話をした。そして文明のこと、これはこの世界とは全く異なった生活文化のことを伝えた。

「アイリはだからアレクセイ殿や御義父上に便利グッズの案をどんどん提供できるのだね」

「色々無理を言ってしまうのですが、お父さまもお兄さまも楽しんでいるのでいいのではないですか、ね」

 領都を見て回った。行く先々でおめでとうを言われ、番様に出逢われて良かった、など祝福された。

 今日は領都、後日農作業の方を案内すると言われたが、農作業の方はだいぶ遅くなってからの案内になってしまった。

 公爵領地の屋敷も大きい。イーサン様とマーガレット様はここより自然が多いところに籠られて?いる?らしい。お二人の時間を過ごしているらしい。マーガレット様も私に公爵夫人としての仕事をほとんど引き継いだので肩の荷が降りたのだろう。

 隣はジェイシス様の部屋。この部屋は寝室。市場から帰ってきてすぐ夕食。それから何怒涛の体磨き。そんなにしなくていいのではと思うぐらいの気合の入れよう。私の体は弛んでいたのか?と思うぐらいにグイグイされた。やっぱり弛んでいたのかしら?

 そして今寝室で待つ私。寝ていいかなぁ。前回も寝てしまったが、今回も寝ていいかなぁ。

 耳元でジェイシス様が囁いた。いつの間に部屋に入ってきたの?

「寝てはダメだよ」

 ひやー、耳元でやめて。

「寝てないですよ?」

「そうかな?目が眠そうだよ。でも寝かせてあげないけどね」

 それからはジェイシス様のされるがまま。最初に番としての寿命?の誓約で、ジェイシス様の龍人の証である鱗を口から体内に取り込んだ。甘い甘い飴のような、タブレットのような感じだった。

「ありがとう。これであなたの体は龍人の私と共に生きる体となる。これほど嬉しいことはない。ジェイシスではなくて、ジェイと呼んで欲しい」

 ジェイシス様は私の体を思いやりながら、それから長い長い夜を過ごした。それが昼なのか、夜なのかわからない。時々ご飯を食べさせてもらったり、お風呂に一緒に入ったりとジェイシス様に常にお世話をされた記憶がある。あの龍人の鱗は体の変化を伴うものなので、少しぼうっとしているところもある。
 体が慣れた頃にどれだけだったのだろう?

「ジェイ、あれからどのくらいだっのですか?私、このベットに寝ているだけで、外に出ていないのですが?」

「そうだな、ガゼボでお茶をするのもいいね。あまりベッドにアイリを縛り付けておくのも、嫌われてしまうのは嫌だから、外にたまには行こう」

 あれから5日が経っていた。マジですか?5日。そんなに?ジェイシス様あなたという人は!

「まだまだ足りないけど」
 耳元で囁かれた。そういえば王妃様が番は疲れるのよと言っていた。これかのことかしら?まだまだ足りないって、えー!おそろしい。

 ガゼボに、横抱きで連れていかれ、横抱きでクッキーなど食べています。これは息抜きになっているのかしら?どうなの?

「あ、あのー、ジェイ。普通に座ってお茶がしたいのですが、おろしてください」

「?いつも横抱きでお茶していたじゃないか、変わりはないよ」

 ここでも王都のタウンハウスでの侍女、メイドたちの私たちは一才見ていません、お二人の時間を邪魔しませんというような態度に恥ずかしさを感じてしまう。

 公爵領の屋敷の庭はとても広い。色とりどりの花が咲き、均整の取れた庭。

「アイリ、自分の好きな庭にしていいのだからね。あなたが公爵夫人だ。庭師などに伝えてある。気に入った庭に仕上げて欲しい」

「ありがとうございます。ジェイ。このままでも美しいです。あとは庭師とお話しして決めさせてもらいます。本当にありがとうございます」

 それからは言わずもがなです。ベッドの住人化となっています。
 結婚も早くしようという話も出てきました。ジェイシス様が早く結婚したいと言い出したからです。
 物事は急速に進んで行っています。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。  天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。  学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。

【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!

美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』  そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。  目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。  なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。  元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。  ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。  いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。  なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。  このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。  悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。  ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――

私の大好きな彼氏はみんなに優しい

hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。 柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。 そして… 柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。

処理中です...