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一章〈道端の隅に咲く小さい花〉

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「そう言えば、第四世代って結局人間なの?  人外?」

   エイキの突拍子もない質問に、二人はまた笑った。

「人外はないだろ。  そもそも人外ってなんだよ?  人間じゃないと意思疎通できないだろ」

   更にシンエイに馬鹿にされたエイキは、軽く蹴りをかまし、そのまま戯れあいが始まり、話しの続きをサイカが引き継いだ。

「僕らだって人間だろ。  遺伝子操作はされてるけど、大幅な遺伝子操作で成功しなかったから、最小限に抑えて成功したのが、第一世代から第三世代。  ただ第四世代はあながち人外じゃないって言いきれないんじゃないかな。  もちろん人間なんだけど、あれには驚いたよね」

「ああ、確かに驚いた。  あれだけで言えば人外かもしれないな」

   シンエイとサイカは、お互いに思い出し、ちょっとした討論会が始まる。エイキは自分だけ話についていけない事に痺れを切らし始め、苛々しているのが肌で伝わる。

「ちょっと、僕にも分かるように言ってよね」

   子供が玩具を取り上げられたように駄々をこねる姿はやはり十二歳といった感じだ。

「ああ、ごめん。  ええっとね、第四世代は足が動物なんだよ」

   サイカの一言に、エイキは動きを止めたが、サイカは続けて話し始めた。

「動物って言うか、人間の皮膚なんだけど、動物の足って言えばいいのかな。  ほらこう、関節がこうなってこうなってるだろ?」

   立ち上がってジェスチャーしてみたり、手で形を模してみたが、エイキは理解出来ていないようだった。

   紙に書けば早いのだが、紙はあってもここには書くものがない。

   不意にシンエイが、思い出したと声を上げた。

「鹿の足だ、動物の足って言えば、色々あるけど身近で見た目も一番近いのが、鹿とか猪だよな。  あの形の足が人間に付いてたんだよ」

   エイキは腕を組み、頭の隅にある記憶を引っ張り出す。

「ああ、蹄行だ。  いや、趾行かな。  指行性か蹄行性を取り入れることで、飛躍的に瞬発力があがったのかな。  足音を消す訓練に、時間を割かなくても隠密歩法出来そうだし」

   突然に、エイキが専門的な事を発したせいで、シンエイとサイカは目を丸くした。

「第四世代は、走りとか速かったんじゃないかな。  でもどうなんだろう。  僕たち特S部隊は、こと戦闘や暗殺においては、総合的に見てバランスが第一だと思うんだよね。  確かに蹄行は瞬発力や隠密性はあっても、バランスが悪いと思うんだけどなあ。  そう言えば、オオカミの遺伝子を組み込む実験って聞いた事ある。  ねえ、その辺どうだった?」

   腕を組み、片手を顎に添えて考える様は、戦闘狂とは思えぬ程に、理知的に見え、訓練以外で見せる我儘で子供っぽい印象ともかけ離れていた。

「ちょっと聞いてるの、二人とも。  僕は真剣なんだよ」

   シンエイとサイカは、開いた口が塞がらない状態だったが、サイカは恐る恐る言葉を発する。
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