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始まり

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「ねぇ、メイアーナ...あの噂は本当かい?」

メイアーナと呼ばれた私は思い当たることがなく、キョトンとしたまま首を傾げました。

「ローリンウルド様、あの噂とは?」

ローリンウルドと呼ばれた男が困惑顔でこっちを見てくる。

「メイアーナが...シルクを虐めているって。」

ローリンウルドは後ろを向いて、ローリンウルドに隠れている令嬢を見る。

そこにはまるで物語に出てくるような可愛らしく儚い令嬢が怯えた様子でこちらをみていた。

------

私、メイアーナ・ルルーシュ伯爵令嬢と申します。

伯爵令嬢だが、第一王子であるローリンウルド様と婚約している。

伯爵家よりも上の爵位を持っている家は、年頃の娘が居なく、側近として息子を送るぐらいしかしていない。

伯爵家からといっても、伯爵家も数が少なく...その中でも王妃となれるほどマシな令嬢となると私しかいなかったのです。

いえ、正直言いましょう。

他の伯爵家から押し付けられたのです。


私の家であるルルーシュ伯爵家は、野心はなく穏やかに暮らしていくことを代々願っている家だと有名です。

表向きは親しみやすく、穏やかで、賢いルルーシュ伯爵家。

裏は敵や面倒な人達が出来ないように、穏やかなのは田舎育ちだから、賢いのは利用されて面倒事に巻き込まれないようにってだけなのだけどね。

つまり、穏やかで平穏に暮らすには必要だからってだけ。

私も領地にでも行ってのんびり暮らすのだと...思って...いたのに...。

...突然降ってきた超迷惑な第一王子との婚約、しかも将来の王妃になる可能性大...。

私の穏やかのんびり生活が音を立てて崩れ去った。


他の伯爵家は既に恋人か婚約者がいて仲睦まじいか、野心はあるけれど王妃に向かない令嬢であったり、あえて辞退した令嬢もいた。

積極的に動いた家には教育を受けたりマナーの確認等で選考を受けたが合格点には程遠く、尚且つ妃教育の基礎勉強に耐えられない令嬢ばかりで、結局全員不合格だった。

困った王家は、何故か辞退した令嬢達から選ぶ方法をとった。

で、色々あった結果辞退した複数の家の中で私の家が引き抜かれてしまったのよね...。

裏で押し付け合いみたいなものがあったらしい。


何故、辞退したのに指名がきちゃったのよ。

王命だからどうにも出来ないじゃない!

王命を受けた後、お父様もお母様も跡継ぎの兄も私を励ましながら領地に引きこもってしまった。

いえ、はっきりいうと...生け贄にされたわ...。

のんびり生活するには逃げるしかないものね...。

ええ、わかってはいるのだけれど。

叫ばずにはいられないのよ...。

この薄情もの!
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