貴方なんか興味ありませんわ

curosu

文字の大きさ
上 下
18 / 26

スティーの話

しおりを挟む
スティーは席を近づけた後、私の髪を持ち上げ、指にくるくると巻き付けて遊ぶ。

「シメリア、冷たいなー...。とりあえずお仕置きは後でな。それよりも、俺はなかなかシメリアに会えなくって寂しくってさー。早く帰ってきてほしいが、仕方ないんだよなー...。はぁ...辛い...。」

指に巻き付けた髪を頬にスリスリしたり、髪にキスしたり遊び始めた。

「私の代わりに色々やってくれていることは知っているし感謝しているわ。貴方が居なかったら...私は自由にこの旅を楽しむことが出来なかったでしょうね。」

普段の公務も旅先に運んでもらってやってはいるけれど、私の決裁が必要な物だけで、他はスティー含めた側近達にやってもらっている。

有能な側近達だけど、スティーは誰よりも私の考え方や思考を分かってくれていて、私の考え方に沿って決裁してくれるから...他の側近達よりも負担が掛かっているのよね。

しかも、私の決裁が必要な物といっても旅の間に来る物は本当に少ない。

私の負担を考えて、スティーが多くやってくれているのだ。


これまでのことと旅が終わった後を考えて少しボーッとしていたら、スティーが興奮し始めたみたい。

目を閉じハァハァと息荒くしながら、私の髪で遊んでいるわ。

「スティー、落ち着きなさい。」

ため息をつきつつ言うと、スティーはゆっくりと深呼吸を繰り返した後に私の髪を離した。


「シメリア...。」

寂しそうな声を出しつつこっちをチラッとみるスティー。

「仕方ないわね、はい。」

私はそんな弱っているスティーに手を差し出し、手を繋ぐ。

そして、反対の手はスティーの頭を撫でた。

ふわふわでスルスルと指通りが心地良い髪に思わず笑みが浮かぶ。


スティーが連絡してくる場合は忙しすぎた時か、何かあって精神的に弱っている時か、どうしようもない時か...等理由があって、どうしても慰めてほしかったり甘えたい時が多い。

もちろん、表向きは仕事の報告だけど。

今回は私のせいでもあるから、たくさん甘やかしてあげないとね。


スティーは私の側近だけれど、王太子候補でもある。

学園を卒業した後の王太子候補は、どこか重要な役職の部下になって色々学ぶことになっている。

勿論その役職が気に入って王太子候補を辞める人も出てくるし、いくつか他の役職を幅広く学ぶ候補もいる。

そんな候補の一人でもあるスティーは、当時人手が欲しかった私の勧誘もあって側近になってくれた。

優秀で有能だからこそ、スティーは王太子候補の中でも有力候補になっている。


でも、スティーは最初王太子になる気は無かった。

適当にどこか役職に就いて程ほどに生きようとしていたらしい。

でも私の側近になって、私を知って、私を理解してくれて、王太子という役職を考え始めたらしい。

私が欲しいからこそ、王太子になっても良いと思ったみたい。

それを陛下からコソコソと耳打ちで聞かされた私の身にもなってほしい。

内緒だってスティーから陛下に言ったらしいけど、陛下はお茶目な所があるから...。

有能で私を助けてくれているからこそ、こうやってスキンシップを許してあげているのだけれどもね。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

知らなかったら…

水姫
恋愛
こんな話もありなはず……。 「…えっ?」 思い付きで書き始めたので、見るに耐えなくなったら引き返してください。裏を読まなければそんなにヤンデレにはならない予定です。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

絵姿

金峯蓮華
恋愛
お飾りの妻になるなんて思わなかった。貴族の娘なのだから政略結婚は仕方ないと思っていた。でも、きっと、お互いに歩み寄り、母のように幸せになれると信じていた。 それなのに……。 独自の異世界の緩いお話です。

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

【完結済】いじめ?そんなこと出来ないわよ

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 なんか、いじめてたとかどうとか言われてますが、私がいじめるのは不可能ですわよ。

罪なき令嬢 (11話作成済み)

京月
恋愛
無実の罪で塔に幽閉されてしまったレレイナ公爵令嬢。 5年間、誰も来ない塔での生活は死刑宣告。 5年の月日が経ち、その塔へと足を運んだ衛兵が見たのは、 見る者の心を奪う美女だった。 ※完結済みです。

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

処理中です...