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第3章 玲は冷に非ず
第8話 雪解けは暖かい
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「おはよう、音無君」
「お、おはようございます」
翌朝になり、健斗はやや寝不足気味なまま朝の支度を済ませた。玲も同じ様に睡眠時間は少なかったはずなのだが、それを感じさせない程にいつもの凛々しさで部屋から出てきた。
「今朝食が出来たところです」
「あら、私の分も? ありがとう、頂くわね」
(この距離感……、やっぱり昨日の事は夢じゃなかったんだな……)
昨晩の出来事は夢だったんじゃないか、と健斗は一晩の間に十回以上考えていた。玲の口調や行動から、本当に遠慮しないでいていくれているという事に嬉しさを感じていた。
二人はリビングで朝食を一緒に食べながら、今日の動きについて話し合いを始めた。
「周囲には秘密にしないといけないから、一緒に出勤するのは避けないといけないわね」
「そ、そうですね……」
「いつも音無君の方が早く会社についているわよね? なら先に出てもらったほうがいいわ」
「はい! あれ、でもそれだと戸締りが……」
「仕事が終わった後に着替えを取りに戻らないとだから、どの道またここに来るつもり。だから鍵は持っておくわね」
「あ、確かにそうでしたね。それではお願いします」
遠慮がなくなったとは言っても、玲の思考や判断の力はオフィスで見る玲そのものだった。それにつられてか、健斗も出来るだけ抜けの無いように支度を進める。
朝食も終わり、各自の出る支度が終わろうとしていた所で玲が健斗に尋ねる。
「音無君。今日って確か、燃えるゴミの日じゃなかったかしら?」
「え? ……あっ! そうでした! 今から纏めてたら会社に遅れちゃいそうだし、来週に……」
「ふふっ、そうだろうと思ってもう纏めてあるわよ」
「えっ!?」
そう言って玲が指さした先には、すでにゴミを纏めて口が縛ってあるポリ袋が置いてあった。口をぽかんと開けていた健斗に玲は目尻を少し下げて健斗の目をしっかりと見る。
「君はごみ捨て忘れがちだから、ね」
「うっ……」
(な、何度か捨て忘れているのバレてたのか……)
玲の前では完璧であるように装っていた健斗だったが、玲は既に彼の抜けている所や癖を見抜いていた。健斗は頭に手を当てて悔しがるが、気にしなくていいのよと玲にフォローされた。
「準備出来ました!」
「それじゃあ……待って、襟の後ろが少し縒れてるわ」
「ちょっ!? 泉さん!?」
「大丈夫よ、手ですぐに直せるから……少しだけ動かないで」
健斗の首に玲の両腕が回されて、軽く抱きしめられているような距離感になった。健斗はタジタジになっていたのだが、玲はその事に気づいていない。
「はい、もう動いても大丈夫よ」
「は、はい……」
「どうしたの? 顔が赤いわよ?」
「い、いえ! 何でもありません!」
「そ、そう?」
(な、なんかもうキャラが変わっているような気が……。いや、これが本来の泉さんなのか?)
玲が心を開いた結果、これまでとは比較にならないほどに距離が近くなっていた。かといって健斗を軽視したり雑な態度になるわけでもないため、嫌な気持ちには全くなっていない。
(幻滅するどころか、最高の気分なんだが!?)
健斗の中での玲への好感度は、下がるどころか鰻登りしていた。健斗のテンションは最高潮になり、大きなゴミ袋を苦も無く持ち上げて玄関を出る。
「そ、それじゃあお先に行ってきます!」
「ええ、また後でね」
バタン、と玄関の扉が閉まる。見送った玲は少し経った後に自分の今朝の行動を振り返る。
(……いきなり距離を詰めすぎちゃったかしら? さ、流石にさっきのは近すぎたかもしれないわね……)
時間差で恥ずかしくなった玲は、予定よりも数秒だけ家を出るのが遅れたのだった。
「お、おはようございます」
翌朝になり、健斗はやや寝不足気味なまま朝の支度を済ませた。玲も同じ様に睡眠時間は少なかったはずなのだが、それを感じさせない程にいつもの凛々しさで部屋から出てきた。
「今朝食が出来たところです」
「あら、私の分も? ありがとう、頂くわね」
(この距離感……、やっぱり昨日の事は夢じゃなかったんだな……)
昨晩の出来事は夢だったんじゃないか、と健斗は一晩の間に十回以上考えていた。玲の口調や行動から、本当に遠慮しないでいていくれているという事に嬉しさを感じていた。
二人はリビングで朝食を一緒に食べながら、今日の動きについて話し合いを始めた。
「周囲には秘密にしないといけないから、一緒に出勤するのは避けないといけないわね」
「そ、そうですね……」
「いつも音無君の方が早く会社についているわよね? なら先に出てもらったほうがいいわ」
「はい! あれ、でもそれだと戸締りが……」
「仕事が終わった後に着替えを取りに戻らないとだから、どの道またここに来るつもり。だから鍵は持っておくわね」
「あ、確かにそうでしたね。それではお願いします」
遠慮がなくなったとは言っても、玲の思考や判断の力はオフィスで見る玲そのものだった。それにつられてか、健斗も出来るだけ抜けの無いように支度を進める。
朝食も終わり、各自の出る支度が終わろうとしていた所で玲が健斗に尋ねる。
「音無君。今日って確か、燃えるゴミの日じゃなかったかしら?」
「え? ……あっ! そうでした! 今から纏めてたら会社に遅れちゃいそうだし、来週に……」
「ふふっ、そうだろうと思ってもう纏めてあるわよ」
「えっ!?」
そう言って玲が指さした先には、すでにゴミを纏めて口が縛ってあるポリ袋が置いてあった。口をぽかんと開けていた健斗に玲は目尻を少し下げて健斗の目をしっかりと見る。
「君はごみ捨て忘れがちだから、ね」
「うっ……」
(な、何度か捨て忘れているのバレてたのか……)
玲の前では完璧であるように装っていた健斗だったが、玲は既に彼の抜けている所や癖を見抜いていた。健斗は頭に手を当てて悔しがるが、気にしなくていいのよと玲にフォローされた。
「準備出来ました!」
「それじゃあ……待って、襟の後ろが少し縒れてるわ」
「ちょっ!? 泉さん!?」
「大丈夫よ、手ですぐに直せるから……少しだけ動かないで」
健斗の首に玲の両腕が回されて、軽く抱きしめられているような距離感になった。健斗はタジタジになっていたのだが、玲はその事に気づいていない。
「はい、もう動いても大丈夫よ」
「は、はい……」
「どうしたの? 顔が赤いわよ?」
「い、いえ! 何でもありません!」
「そ、そう?」
(な、なんかもうキャラが変わっているような気が……。いや、これが本来の泉さんなのか?)
玲が心を開いた結果、これまでとは比較にならないほどに距離が近くなっていた。かといって健斗を軽視したり雑な態度になるわけでもないため、嫌な気持ちには全くなっていない。
(幻滅するどころか、最高の気分なんだが!?)
健斗の中での玲への好感度は、下がるどころか鰻登りしていた。健斗のテンションは最高潮になり、大きなゴミ袋を苦も無く持ち上げて玄関を出る。
「そ、それじゃあお先に行ってきます!」
「ええ、また後でね」
バタン、と玄関の扉が閉まる。見送った玲は少し経った後に自分の今朝の行動を振り返る。
(……いきなり距離を詰めすぎちゃったかしら? さ、流石にさっきのは近すぎたかもしれないわね……)
時間差で恥ずかしくなった玲は、予定よりも数秒だけ家を出るのが遅れたのだった。
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