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キャンプ Ⅲ
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突如として現れたフードの集団。
一人は弓を構えている。
俺は咄嗟にスキル『俊足』を発動し、その場を離れ、物陰に身を潜める。
そして、矢が放たれる。
矢はフレンの肩を貫いた。
すぐに意識を失ったようだった。
「あらら、やっちゃった。」
「死んでないなら問題無い。スキルさえ使えればそれで良い。」
「でも隊長、記憶無い状態でまともに動けるの?」
数名のフードの集団は何やら話し込んでいる。
話から察するにあの矢に当たれば記憶を失うらしい。
(主様。逃げるべきです。フレンは記憶を失うようですし、『回復』も手に入れました。無駄ではありません。数で負けていますし、危険です。)
「分かってる。でも逃げられそうには無いな。」
気が付けば四方の塀の上に同じようなフードの者達がいた。
囲まれていた。
全員が手練れだ。
それくらいは分かる。
「なぁ少年。大人しく降伏してくれないか?そのナイフも気になる。投降して、ナイフを渡してくれれば身の安全は保証しよう。」
「……あんたら、村の人間じゃないな。」
フードの者達は微動だにしない。
隙もない。
ならば、話をして隙を探るしか無い。
「どうしてそう思う?」
「この村は狭い。そして、俺は悪い意味で有名人だ。俺の顔を知らない奴はこの村には居ない。さらに、さっきそこの男が隊長とよんでいた。隊長と呼ばれるような役職はこの村には存在しないからな。」
先程隊長と呼んだ男は睨まれる。
正直、こいつらが誰でも良い。
俺を虐めた奴等に復讐さえできればそれで良い。
「何の目的でこの村に来た!?お前達は何者だ!」
「……中々鋭いね。面白い。でも、今の所我々の存在を認識しているものがここにいてはいけないんだ。悪いけど、記憶を失ってもらうよ。」
フードの者達は武器を一斉に構えた。
スキルのクールタイムは過ぎた。
いつでも発動は可能だが、相手の数が多すぎる。
探知系のスキルが向こうにあれば負ける。
「目と鼻を塞げ!」
その声と共に何かが投げ込まれる。
咄嗟に目と鼻を塞ぐ。
「っ!総員退避!」
その声と共に破裂音が響く。
そして、俺は誰かに首根っこを掴まれる。
「よし、もういいぞ。目を開けて。」
目を開ける。
そこは見覚えのない洞窟だった。
テントまで張ってある。
そして、眼の前にはフードを被った女が立っていた。
「危ない所だったな。」
「……あんたは?あいつらの仲間か?」
あまりにも突然の出来事に頭が整理できない。
「いいや、私達は魔王軍より派遣された隠密部隊。陽炎部隊だ。私は隊長のシャル。よろしくな。」
「……あの厩の奴らは?」
いきなり魔王軍とか言われても良く分からん。
シャルと名乗った女は付近の仲間に飲み物を持ってくるように指示する。
すると、すぐに出てきた。
「あれは王国軍の隠密部隊だな。いいスキルを持った奴がいるという情報を聞けばすぐに派遣されて状況を把握する部隊だ。」
飲み物を受け取り、一口飲む。
暖かく、おいしい。
眼の前の女、シャルは魔王軍と言っていたが、魔物のようには見えない。
だが、黒髪だ。
「……まぁ、いきなりのことで良くわかってないだろ。取り敢えず今夜は休んでくれ。ここは安全だからな。」
「……あんたらを信用しきれないんだが。」
すると、シャルは暫く考える。
そして、すぐに何かを閃いたようだった。
「そうだな。私達の昔の隊長の名前を教えてやろう。それは、アーロンだ。」
「……父さんの名前といっしょだ……。」
シャルは少し笑って見せる。
「そう。私達の前の隊長は君の父親だ。ま、昔話は後にして今は休みなさい。」
頭をポンポンと撫でられる。
すこし、父を思い出した。
……まだ信用し切れないが、ここまでどうやって来たのか想像はつく。
恐らく、転移系のスキルを持つやつがいるのだろう。
仕方がないので、眠ることにした。
一人は弓を構えている。
俺は咄嗟にスキル『俊足』を発動し、その場を離れ、物陰に身を潜める。
そして、矢が放たれる。
矢はフレンの肩を貫いた。
すぐに意識を失ったようだった。
「あらら、やっちゃった。」
「死んでないなら問題無い。スキルさえ使えればそれで良い。」
「でも隊長、記憶無い状態でまともに動けるの?」
数名のフードの集団は何やら話し込んでいる。
話から察するにあの矢に当たれば記憶を失うらしい。
(主様。逃げるべきです。フレンは記憶を失うようですし、『回復』も手に入れました。無駄ではありません。数で負けていますし、危険です。)
「分かってる。でも逃げられそうには無いな。」
気が付けば四方の塀の上に同じようなフードの者達がいた。
囲まれていた。
全員が手練れだ。
それくらいは分かる。
「なぁ少年。大人しく降伏してくれないか?そのナイフも気になる。投降して、ナイフを渡してくれれば身の安全は保証しよう。」
「……あんたら、村の人間じゃないな。」
フードの者達は微動だにしない。
隙もない。
ならば、話をして隙を探るしか無い。
「どうしてそう思う?」
「この村は狭い。そして、俺は悪い意味で有名人だ。俺の顔を知らない奴はこの村には居ない。さらに、さっきそこの男が隊長とよんでいた。隊長と呼ばれるような役職はこの村には存在しないからな。」
先程隊長と呼んだ男は睨まれる。
正直、こいつらが誰でも良い。
俺を虐めた奴等に復讐さえできればそれで良い。
「何の目的でこの村に来た!?お前達は何者だ!」
「……中々鋭いね。面白い。でも、今の所我々の存在を認識しているものがここにいてはいけないんだ。悪いけど、記憶を失ってもらうよ。」
フードの者達は武器を一斉に構えた。
スキルのクールタイムは過ぎた。
いつでも発動は可能だが、相手の数が多すぎる。
探知系のスキルが向こうにあれば負ける。
「目と鼻を塞げ!」
その声と共に何かが投げ込まれる。
咄嗟に目と鼻を塞ぐ。
「っ!総員退避!」
その声と共に破裂音が響く。
そして、俺は誰かに首根っこを掴まれる。
「よし、もういいぞ。目を開けて。」
目を開ける。
そこは見覚えのない洞窟だった。
テントまで張ってある。
そして、眼の前にはフードを被った女が立っていた。
「危ない所だったな。」
「……あんたは?あいつらの仲間か?」
あまりにも突然の出来事に頭が整理できない。
「いいや、私達は魔王軍より派遣された隠密部隊。陽炎部隊だ。私は隊長のシャル。よろしくな。」
「……あの厩の奴らは?」
いきなり魔王軍とか言われても良く分からん。
シャルと名乗った女は付近の仲間に飲み物を持ってくるように指示する。
すると、すぐに出てきた。
「あれは王国軍の隠密部隊だな。いいスキルを持った奴がいるという情報を聞けばすぐに派遣されて状況を把握する部隊だ。」
飲み物を受け取り、一口飲む。
暖かく、おいしい。
眼の前の女、シャルは魔王軍と言っていたが、魔物のようには見えない。
だが、黒髪だ。
「……まぁ、いきなりのことで良くわかってないだろ。取り敢えず今夜は休んでくれ。ここは安全だからな。」
「……あんたらを信用しきれないんだが。」
すると、シャルは暫く考える。
そして、すぐに何かを閃いたようだった。
「そうだな。私達の昔の隊長の名前を教えてやろう。それは、アーロンだ。」
「……父さんの名前といっしょだ……。」
シャルは少し笑って見せる。
「そう。私達の前の隊長は君の父親だ。ま、昔話は後にして今は休みなさい。」
頭をポンポンと撫でられる。
すこし、父を思い出した。
……まだ信用し切れないが、ここまでどうやって来たのか想像はつく。
恐らく、転移系のスキルを持つやつがいるのだろう。
仕方がないので、眠ることにした。
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