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「はあっ!」
 
 スキルを授与されてから一月。
 クラスメイトの一人、真田護は異世界で得た新たな仲間達と共に冒険を続けていた。
 この日は、ゴブリンの集団が出没するということで対処にあたっていた。
 
「護! 最後の一匹そっち行ったよ!」
「おう! いつも通り行くぞ!」
 
 この世界で最弱とも言われるゴブリンが一匹真田の下へ迫る。
 
「よし! 『シールド』!」
 
 真田が手をかざすと、その方向に光の壁が現れ、ゴブリンはそれに阻まれる。
 
「ッ? ッ!?」
 
 ゴブリンは何も状況を把握出来ず、まるでパントマイムかのように壁を確かめる。
 
「おらぁ! 『斬撃』!」
 
 その背後を仲間の一人、ゴルドーが斬る。
 ゴルドーのスキル斬撃によって、ゴブリンの着ていた粗悪な防具の影響を無視してダメージを与えた。
 
「ナイスタイミングだ! 護!」
「お前もな! ゴルドー!」
 
 二人はまるで旧知の仲かのように仲が良かった。
 ゴルドーのスキルは最強と言えるようなスキルではなかったが、ゴルドー自身の強さによってそれを補っていた。
 
「きゃっ!」
 
 すると、一つの悲鳴が響く。
 そちらを振り向くと、死んだふりをしていたゴブリンが仲間の一人、ソフィアの足を掴み、剣を振りかざしていた。
 
「くっ! 間に合え! 『シールド』!」
 
 再度護が手をかざす。
 すると、ソフィアの足を掴んでいたゴブリンの腕が綺麗に切れる。
 そこには、護のスキルの『シールド』が展開されていた。
 
「グァッ!?」
 
 ゴブリンは腕を押さえ、痛みにもがく。
 
「燃えろ! 『ファイアー』!」
 
 その隙をつき、尻もちをついたソフィアがそのままゴブリンを燃やした。
 あの姫、エリスのスキル程では無いが、火球を飛ばす事が出来る。
 ゴブリン程度を殺すのには充分である。
 
「大丈夫か!?」
「あ、ありがとう……」
 
 護がソフィアのもとに駆け寄り、尻もちをつくソフィアに手を差し伸べる。
 
「安心しろ。俺が皆を守り抜いてやるからな!」
 
 俺が皆を守り抜く。
 それが護の口癖であった。
 
「さて、今度こそ全滅させたな」
「そうだな。王都へ戻るか」
 
 転移したクラスメイトはそれぞれスキル持ちの仲間が二人与えられた。
 そして、その二人とともに異世界での経験を積んでいた。
 それは、魔王軍を滅ぼす為の下準備であった。
 すると、三人のもとに騎馬が駆け寄る。
 
「失礼します! 真田護様ですね!?」
「あぁ。俺がそうだ」
「国王陛下より伝令です。こちらを」
 
 護は伝令から渡された文を受け取り、中身を確認する。
 
「……成る程」
「国王陛下は何だって?」
「俺達勇者の活動によって魔王軍は滅亡寸前である。魔王軍最後の要塞、ルヴァンニ要塞を攻め落とすための準備として、王国騎士団と合流して陽動せよ。要塞の戦力を分散させ、主力の援護をせよ、だとさ」
 
 護は文をゴルドーに渡す。
 
「成る程な……合流地点もそう遠くない。まだ少し猶予はあるな」
「良くわからんな……滅亡寸前なら全力で叩き潰せば良いだろ。というか、俺たちの活躍で魔王軍が滅亡寸前って……来た時点で風前の灯だっただろ……」
「既に魔王軍と戦い始めて五十年近く経ってるからね……まぁ、二十年目でほぼほぼ決着はついてたみたいだけど……生まれる前だから分かんないや。お国に従わなくっちゃどうなるかわからないんでしょ? やるしか無いでしょ」
 
 護は頷く。
 事実、護達クラスメイトらが召喚される三十年前に魔王軍の主力は壊滅し、魔族は各地でゲリラ活動を続けていた。
 かつては人類も反魔王連合を組み、連携して魔王を倒そうとしていたが、魔王軍に勢いがなくなってからは連携もせず、人間同士で争っていた。
 魔王軍もそのおかげで全滅は免れ、今代の魔王によって徐々に軍備が整い始めている状況であった。
 
「ま、とりあえず今回の依頼は完了した。依頼人に報告して、少し休むとするか」
 
 護達は国王の命令を果たす為、まずは依頼人のいる町へ歩みを進めるのであった。
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