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2章: リンドウの花に、口づけを

2-10 決着

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「いっててて・・・」



「すいません、ユズキさん・・・」



コンクリートの地面に2人重なる状態で横たわる。
ふと後ろを見ると、赤黒い、片腕の男だった『もの』たちが、無惨にも飛び散っていた。



地面や近くの塀に張り付いた肉片が、暗い夜の中薄暗く光る青い街灯に照らされ、てらてらと鈍く光を反射している



「おぇぇえ・・・エグい・・・。でも、どうしてだろう・・・?」



「当然の疑問です。でもそれは後にしましょう。取り敢えず、この場を離れないと。」



すでに周囲では先ほどの騒ぎを聞いた住人が、外の様子を見るため慌ただしくしている気配がする。お互い頷き、僕達2人はなるべく静かに走り出す。



そして、僕とユズキさんは取り敢えず近くの駅までその場から逃げ出してきた。



「ハァ・・・ハァ・・・で、結局あれナニ?」



膝に手をつき、肩で息をしながら彼女が質問する。



「・・・よくわかりませんが、恐らく自分の能力で殺されたんでしょう。状況的に見て。自分の能力で死ぬものなんですね・・・」



条件は封じたはずだった。僕達は彼に指一本触れられていない。しかし能力は発動した。

では、何故?

実は突き飛ばすことは発動条件ではなかった?いや違う。彼は間違いなく、僕達に触れようと立ち回っていた。突き飛ばすことは発動条件で間違い無い。と、いうことは。



「『突き飛ばさないと、自分も巻き込まれてしまう』ということだったんじゃ無いですかね。」



そう、僕はあの場で直感的にそう判断し、彼女を抱きしめたまま思い切り飛び退いた。被害者は皆電車で轢かれたようだった。というか、恐らく本当に電車に轢かれていたのだろう。電車に轢かせることが、彼の能力だった。で、あるなら、列車が進む軌道から逸れれば列車は回避できる。列車の進行方向が分からないから、正直言って斜めに飛んだのは賭けだったが。



「・・・そっ・・・か。ところで、それ、どうすんの?」



僕の手にある血濡れた布切れを指差して、彼女はひきつった顔でそう聞いてきた。



「いや・・・記憶を読み取ろうかなって。」



「なんで!?」



「・・・興味本位です。」



「捨てなよ・・・それ・・・ヤバいって。」



これは彼の服の一切れだ。それに彼自身の血が染み付いている。なんとなく、彼の人生が気になったので、あの場を離れる時に手癖で持ってきてしまった。こればかりは抗えない自分の性分らしい。

さて、彼は僕にどんな物語を語って聞かせてくれるのか。

ふと駅の方を見ると、確かにそこには青いライトが設置されていた。人の少ない駅のホームを、薄ぼんやりとした青色に染めている。列車に轢かれたくだんの彼女は、この駅のホームで亡くなったらしい。



「・・・蛍光灯の灯りに誘われて集まるって、まるで蛾みたいですね。」



ホームを眺めながら誰に言うでもなく、僕はそう呟いた。
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