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第4話 麗奈②side麗奈

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ベッドを濡らし続けて何時間経ったのかはもう分かんない
なんであんな風に言っちゃったの。なんで感情的になっちゃったんだろ。もっと上手く伝えれたはずなのに。絶対亮に嫌われた。今更後悔しても遅いはずなのに涙だけはどうしても止まらなかった
でも亮も悪いんだよ。私を男子と二人きりにさせたり、しかも告白の手伝いまでしてただなんて、亮って私のこと異性としては何とも思ってないのかな、ただの幼馴染?少しでも亮に好かれたくて可愛くなろうってメイク練習したり、髪とか肌もケアは欠かさず行ってきた。そして最近は亮も私達をほめてくれるようになって、もしかしたら両想いに近づいてると思ってたのに……
でも亮が私を褒めてる時はほとんど隣には乃愛がいた。もしかしたら亮は乃愛が好きなのかもしれない。そう思うと胸が苦しく、自分の中でいろんな感情が生まれてその半分以上が人には言えないようなことで、そんな自分が酷く惨めに感じた。乃愛は悪くないのにね。ごめん
そんなことを考えていても涙の量が増えるだけで
ここまで泣いたのはいつ振りかな?
私って小さい頃から泣かなかったからなー
泣いた記憶で覚えてるのは片手で数えられるくらい
最後に泣いたのは亮と出会ったあの頃だっけ
何年も前の話。でも私にとってそれは何年たっても変わらない大切な思い出

小学3年生の時、私達家族は今いる家に引っ越してきた
そして前いた学校には通えなくなり転校することになる
先生は私たちに気を使ってくれたのか乃愛とは同じクラスだった
新しい学校での生活は最初は上手く行ってた。私と乃愛は周りとは違う部分が多く、転校してからはよく髪色とか聞かれることが多かった。小さい頃からそういうことは何度もあったし、みんなが悪意をもって聞いてるわけじゃないって言うのを分かっていたから聞かれていたことには素直に答えて、そのおかげか友達もすぐにできた。クラスの女の子にお人形さんみたいに綺麗だねって言われてすごく嬉しかったのも覚えている
でもそれから少しして、そんな私が気に入らなかったのかクラスの一部の女子からいじめられることになった
いじめの内容はノートを隠したり、陰口を言ったりとしょうもないことばかりだった。でもそれもすぐに先生に相談していじめられることもなくなった
それから少ししたある日の朝。乃愛が突然学校に行きたくないと言い出した
お母さんたちは仕事に行ってて家におらず、私が何があったのかと聞くと泣きながらいじめられてたことを話してくれた
話をのなかで乃愛をいじめていた子たちは私をいじめてた時と同じ子たちで、私をいじめて怒られた腹いせにおとなしい乃愛をいじめていたことを知った
私は大切な双子の妹を傷つけられたことに腹が立ち、それからすぐに私は一人で学校まで行くといじめっ子たちに詰め寄った
「乃愛をいじめるなんて最低っ!乃愛に謝ってよ!」
私がそう言うといじめっ子のリーダーの女子は
「佐藤が先生に言いつけるからこうなったのよ」
悪いことをした自覚のなさそうな態度
「だからってなんでおとなしい乃愛をいじめるの?乃愛は何も悪いことしてないのに」
「いじめてもあんたみたいに先生に言いつけたりしないからよ!」
そう言われて私は我慢の限界に達した
「乃愛は傷付きやすい子なの!あなたみたいに心もブスな人はもう乃愛に関わらないで!先生に言うからっ」
私がそう言うと、その女子が顔を真っ赤にしていた
さすがにブスは言い過ぎだったのか、その子はプルプル震えたかと思えば私に向かって殴りかかってきた

「――きゃっ」

私もいきなりの事で目をつぶることしかできなかった
でもそれから数秒経っても痛みを感じなかった
それから目を開けると、一人の男子がその子の腕を掴んでいた
盛岡君だ。話したことは無いけど同じクラスなので名前は知っていた
「おい、殴るのはダメだろ。顔に傷でもついたらどうすんだ。というか話聞いてたけどお前の方が絶対悪い、謝れ」
盛岡君がそう言うと、いじめっ子は急に泣き出した
盛岡君も突然泣き出したことにびっくりしたのか
「お前が悪いんだろ!急に泣くなよ……きもちわりぃ」
するといじめっ子の女子はもっと泣き出して、誰も何も言えなくなった。
それからすぐに騒ぎを聞きつけた先生が駆けつけてきて、事情を私と盛岡君で説明した
いじめっ子たちは職員室に連れていかれた後、私に謝ってきて乃愛にも後日謝ると約束してくれた

私はどうしても助けてくれた盛岡君と話したかった
同じクラスだったので、普通に話しかければよかったのにその時の私はなんか恥ずかしくて
だから私は彼の後を付いて行って一人になるのを待っていた
でもなかなか一人になってくれなくて、今日は無理かななんて思っていたら、運がよかったのか彼の家はどうやら私の家と方向が同じらしく、下校中ようやく一人になったところを見つけることができた
「あのっ」
話しかけると彼は歩くのをやめて
「あ、クラスの……佐藤さんだっけ」
まずは名前を知ってくれてることに安堵を覚える
「うんっ」
「どうしたの?」
いきなり話しかけたせいか盛岡君は不思議そうな顔をしている
「今日は助けてくれてありがとう」
「お、おう!どういたしまして」
少し照れているのか盛岡君の顔が赤い
「というか、佐藤さんって家こっちなの?」
「うん!ここから10分くらいのとこ」
「まじか!仲良くしよーぜ!近所に遊べる奴いなくて困ってたんだよ」
私は昔から男子が苦手で男の子の友達はいなかった。でも盛岡君にそう言われて時はすごく嬉しくて、すぐに
「うん!私も盛岡君と仲良くなりたい!」
「おう!これからは俺の事は呼び捨てでいいから!俺も麗奈って呼ぶな!」
「分かった。よろしくね……亮!」
呼び捨てはちょっと恥ずかしいけど、仲良くなったって感じでいいかも……
それから亮に
「じゃあせっかくだしそこの公園で遊んでこうぜ!」
そう言われて断る訳もなく私はそのままついて行った
公園に着くと真っ先に目に着いたのが
「あっ私ブランコしたい!」
「いいぞー」
ランドセルを下すと二人で漕ぎ始める
最初は二人ともブランコに夢中で、それから少しすると亮が
「というか麗奈ってすごいよなー」
「なんで?」
「だって妹のためとはいえ複数人相手にあんな風にできるとかすごいだろ」
こういう風な褒め方をされるのは初めてで少し照れる
「でも結局亮に助けてもらったし……」
「俺が居なくてもどうにかなったと思うけどなー」
とは言っても亮がいなかったら私は殴られてたわけで……
「なんで助けてくれたの?」
私がそう聞くと亮は少し恥ずかしながら
「……綺麗な顔が傷ついたらもったいないから」
言い終わると亮は顔が赤く、それを聞いた私も頬を染めていた

それから少しの間微妙な雰囲気になっていたが、帰るころには元に戻っていた
そして私の家の前まで来ると
「今日はありがとっ。またね」
「またな!あ、後今度からはそういうことがあったら俺に言えよ!俺が守るから。大切な友達だしな!」
そう言って帰ってく亮
それを見届け終わるよりも先に私はその場でうずくまった。今まで感じだことのなかった初めての感情を抑えるために

気付いたときには昼になっていた
何時間寝てたんだろう
昨日はお風呂にも入らず泣いてたせいで鏡の前の私は最悪だ
でも良かったこともある
昔の夢を見た
好きな人を夢で見ると、前よりもさらにその人が愛おしく感じるのはなんでなんだろう
そして自分が昨日悩んでたこともばかみたいに思えてきた
異性として見られてない?亮に嫌われた?あんなに卑屈になって、そんなの聞かないと分かんないことだったのに
でもその前に亮に謝らないといけない。亮が私を大切にしてないわけがないんだ、そんなのあの頃からすでに分かってたはずなのに
とりあえずお風呂に入ろう
まずはいつもの自分に戻らないと

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