悪魔の誓い

再会

64

それから数日後、私達の姿はハバナ…セインと出会った街にあった。

「まさか、こんな形で戻ってくるなんてね…。」

シャーネさんから聞いた事件の詳細によると、どうやら私達が発ったすぐ後に流通し出した砂糖菓子があるらしい。そして、その時期と事件発生時期がピッタリ重なる。
しかし、言ってしまえばそれだけだ。その砂糖菓子は貴族家を中心とした販売経路で市場に流れているらしく、わざわざ地位のある者がこんな事をしでかす理由も特に見当たらなかった為、関連性は薄いとされていた。…ついこないだまでは。

『既に人間…それも貴族が悪魔と結託している前例が出てきた以上、今回もその可能性があるわ。だから、あなた達には街の様子を直に確かめてもらって、あわよくば貴族の情報を集められないか動いて欲しいの。』

正直大役が過ぎて足踏みしてしまう自分がいる。しかし、今こうしている間にもディルは戦っているのかもしれない。そう考えると、どんなプレッシャーにも恐怖にも打ち勝てる。そんな気がした。

「……。」

…それにしてもセインはどうしたのだろうか。シャーネさんから話を聞いた直後から、極端に口数が少なくなっている。それをディラン君も感じているのだろう。何とか会話を繰り広げようとするも、ずっと上の空というか、空返事ばかりしているのだ。そして諦めて口を閉ざすまでがここ数日の私達の一連の流れなのである。

「…ねぇ、セイン？」
「……。」
「ねぇっ！本当にどうしたの？」
「…あ、メノウ…何ですか？」
「どうしたのじゃないよ！最近ずっとそんな調子で！何か気になる事でもあるの？」
「いえ…その…。」

彼にしては珍しくもごもごと口を動かし、言葉を詰まらせている。余程言いたくないことなのだろうか。しかし、いつまでもこのままでは危険だ。

「セイン兄ちゃん、本当に大丈夫？」
「…はい、すみません二人とも。」

なら良いけど…。そう答えようとした、瞬間。

「ふざけんじゃねえぞこのアマッ！」
「ハッ！なんだってんだい！そっちがぶつかってきたのが悪いんだろう！？」

そんな怒声が街中に響き渡る。顔を見合せた私は、一つ頷くと、その声のした方に向かって走り出した。