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カネール
55(side.セイン)
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地面に魔法陣を敷いて、水の中に飛び込んだメノウ…いや、ディルの影を目で追いながら、俺は隣に立つディランになんとはなしに話しかける。
「さっきの話ですが…悪魔の身体が魔力で保たれているのは分かりました。しかしそうなると、仮の話なんですが、悪魔と人間の間に子が産まれる事はないんでしょうか?」
「え?何言ってるの?僕が居るじゃん。」
「え?」
「ん?…あれ、言ってなかった?僕の母親は人間だったんだよ。だから…よく他の悪魔からは“混じり”だって除け者にされてた。」
そう言って彼は俯いた。身長の差もあってか、俺の目線からではその顔色を窺い知る事は出来ない。
「まぁ、それはともかく!普通に子供だって産まれるよ。ただ、身体の作りは限りなく人間に近くなる。そしてその子がまた人間とくっついたら、その人との間に出来た子の性質はほぼ人間と同じ。」
けど、と一度上げた顔をまた若干俯かせ、ディランはこう続ける。
「理屈はよく分からないんだけど、身体の性質は人間と同等になっても、たまに悪魔の固有能力が遺伝して使える様になる事があるんだ。確率的にはそんなに高くないけど。僕は母親が人間ってだけだからまだ悪魔の血が濃いし、普通に能力も使えるけどね。」
「なるほど…。因みになんですが、魔眼というのは主にどの様な能力なのでしょうか?」
「そんなの個体によって様々だよ。遠くの景色を視たり、魔法を使わず物を動かしたり…。後はそうだなぁ、魔力を可視化して動きを操作するなんてものもあった気がする。」
思わず息を呑んだ。しかし表には感情を出さない。クビになったとは言え、そうするのが当然の環境にいたのだからこの位は朝飯前だ。
「でも、魔眼持ちって他の個体に比べて魔力量が低かったりするんだよねー。瞳自体に魔力が溜まってる状態だから、魔法に回せる容量自体が少ないんだって。それに…っ!?」
「ディランさん?」
唐突に口を噤む様子に首を傾げたが、後ろから近付いてくる足音が耳に届いた瞬間腑に落ちた。同時に、激しく胸を叩く心臓を自制させながら銃を構え振り返る。
「へぇ…様子を見に来てみれば、好き勝手やってくれてるじゃんか。」
ローブを目深に被った男が、唯一見える口元の端をつりあげながら言葉を吐いた。どことなく苛立っている印象を受ける。
「貴方は…いえ、聞いてもしょうがないですね。この騒動に関わっている人物の一人でしょうから。」
「はぁ…あのジジイ、こうも簡単に見抜かれやがって…。使えねぇな。」
「…随分な言い草だね、一応はお仲間なのに。でも、何だろう…この感じ…。」
横に並び立つディランが何かを感じたのか、首を傾げているが、正直気にしている余裕は無い。
「まぁ、良い。お前らを片付ければ済む話だ。」
そう言って目の前の男はレイピアを腰から抜き、こちらに向けて構えた。
(…レイピア?)
まさか…いや、考えている時間は無い。ディルが戻ってくるまで、魔法陣を守りながら耐えなければ。
「ディランさん、行きますよ!」
「うん!」
「さっきの話ですが…悪魔の身体が魔力で保たれているのは分かりました。しかしそうなると、仮の話なんですが、悪魔と人間の間に子が産まれる事はないんでしょうか?」
「え?何言ってるの?僕が居るじゃん。」
「え?」
「ん?…あれ、言ってなかった?僕の母親は人間だったんだよ。だから…よく他の悪魔からは“混じり”だって除け者にされてた。」
そう言って彼は俯いた。身長の差もあってか、俺の目線からではその顔色を窺い知る事は出来ない。
「まぁ、それはともかく!普通に子供だって産まれるよ。ただ、身体の作りは限りなく人間に近くなる。そしてその子がまた人間とくっついたら、その人との間に出来た子の性質はほぼ人間と同じ。」
けど、と一度上げた顔をまた若干俯かせ、ディランはこう続ける。
「理屈はよく分からないんだけど、身体の性質は人間と同等になっても、たまに悪魔の固有能力が遺伝して使える様になる事があるんだ。確率的にはそんなに高くないけど。僕は母親が人間ってだけだからまだ悪魔の血が濃いし、普通に能力も使えるけどね。」
「なるほど…。因みになんですが、魔眼というのは主にどの様な能力なのでしょうか?」
「そんなの個体によって様々だよ。遠くの景色を視たり、魔法を使わず物を動かしたり…。後はそうだなぁ、魔力を可視化して動きを操作するなんてものもあった気がする。」
思わず息を呑んだ。しかし表には感情を出さない。クビになったとは言え、そうするのが当然の環境にいたのだからこの位は朝飯前だ。
「でも、魔眼持ちって他の個体に比べて魔力量が低かったりするんだよねー。瞳自体に魔力が溜まってる状態だから、魔法に回せる容量自体が少ないんだって。それに…っ!?」
「ディランさん?」
唐突に口を噤む様子に首を傾げたが、後ろから近付いてくる足音が耳に届いた瞬間腑に落ちた。同時に、激しく胸を叩く心臓を自制させながら銃を構え振り返る。
「へぇ…様子を見に来てみれば、好き勝手やってくれてるじゃんか。」
ローブを目深に被った男が、唯一見える口元の端をつりあげながら言葉を吐いた。どことなく苛立っている印象を受ける。
「貴方は…いえ、聞いてもしょうがないですね。この騒動に関わっている人物の一人でしょうから。」
「はぁ…あのジジイ、こうも簡単に見抜かれやがって…。使えねぇな。」
「…随分な言い草だね、一応はお仲間なのに。でも、何だろう…この感じ…。」
横に並び立つディランが何かを感じたのか、首を傾げているが、正直気にしている余裕は無い。
「まぁ、良い。お前らを片付ければ済む話だ。」
そう言って目の前の男はレイピアを腰から抜き、こちらに向けて構えた。
(…レイピア?)
まさか…いや、考えている時間は無い。ディルが戻ってくるまで、魔法陣を守りながら耐えなければ。
「ディランさん、行きますよ!」
「うん!」
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