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カネール
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一人、二人…十四人目まで落札された所で、何やら言い争う声が聞こえた。
「やめろ!離せ!」
「こら!大人しくしろ!パラライズ!」
「うぐ…っ!」
麻痺魔法を掛けられ、引き摺られて来た子は黒髪に魔封じの首輪をした…ディランだった。
「さあさあお待ちかねの目玉商品!顔のパーツも美しく魔法も使える奴隷です!今はまだ生意気ですが、主人自ら調教するのもまた一興!お求めは五十万シルドから!」
「六十万!」
「八十万!」
我こそはとどんどん札を挙げる客達。その中でも一際大きな声で掲げたのは…。
「三百万!」
ハジュワー子爵だった。奴隷に三百万もつぎ込むなんて、という声が周りから聞こえてきそうだ。
「…胸糞悪いですね。メノウ、そろそろ行きましょう。」
「分かった。…スリープウェル。」
今回の魔法は会場の人間全員だ。その分効果も薄くなる。しかし、なんの対策もしていない一般人には抗いようがない。全員が眠りについたことを確認した後、同じく意識を失っているディランを救出した。
「一刻も早くここを離れましょう。」
「うん。この子にもステルスをかけるね。」
そうして私達は会場を後にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「う、ううん…。」
「あ、気が付いた?」
現在、宿屋の一角。ベッドに寝かせたディランが目を覚ました。暫しボーッと天井を眺めていた彼だが、次の瞬間ガバッと上半身を起こす。
「な!?こ、ここは?」
「私達が泊まってる宿屋の一室だよ。気分はどう?」
「お前は…!くっ、僕…俺の事まで殺す気なのか!?」
「あのねぇ…。」
『メノウ、代わって。』
「あ、うん。分かった。」
「…?」
いきなり独り言を呟いた私を訝しげに睨んだディラン。意識を入れ替え、私は内から様子を伺う。
「久しぶりだね、ディラン。」
「は?何を…いや、この気配…まさか、兄さん…!?」
「うん。どうやら未だに勘違いしている様だけど、僕は死んでない。」
「え…?で、でも、姉さんが…。」
「それがそもそもの間違いなんだ。第一、僕を瀕死にまで追い込んだのは人間じゃない。」
「じゃ、じゃあ誰だって言うんだよ!?」
「…カリアとカーツだよ。僕は、その二人に罠に嵌められた。」
瞬間、空気が凍った…気がした。
「やめろ!離せ!」
「こら!大人しくしろ!パラライズ!」
「うぐ…っ!」
麻痺魔法を掛けられ、引き摺られて来た子は黒髪に魔封じの首輪をした…ディランだった。
「さあさあお待ちかねの目玉商品!顔のパーツも美しく魔法も使える奴隷です!今はまだ生意気ですが、主人自ら調教するのもまた一興!お求めは五十万シルドから!」
「六十万!」
「八十万!」
我こそはとどんどん札を挙げる客達。その中でも一際大きな声で掲げたのは…。
「三百万!」
ハジュワー子爵だった。奴隷に三百万もつぎ込むなんて、という声が周りから聞こえてきそうだ。
「…胸糞悪いですね。メノウ、そろそろ行きましょう。」
「分かった。…スリープウェル。」
今回の魔法は会場の人間全員だ。その分効果も薄くなる。しかし、なんの対策もしていない一般人には抗いようがない。全員が眠りについたことを確認した後、同じく意識を失っているディランを救出した。
「一刻も早くここを離れましょう。」
「うん。この子にもステルスをかけるね。」
そうして私達は会場を後にした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「う、ううん…。」
「あ、気が付いた?」
現在、宿屋の一角。ベッドに寝かせたディランが目を覚ました。暫しボーッと天井を眺めていた彼だが、次の瞬間ガバッと上半身を起こす。
「な!?こ、ここは?」
「私達が泊まってる宿屋の一室だよ。気分はどう?」
「お前は…!くっ、僕…俺の事まで殺す気なのか!?」
「あのねぇ…。」
『メノウ、代わって。』
「あ、うん。分かった。」
「…?」
いきなり独り言を呟いた私を訝しげに睨んだディラン。意識を入れ替え、私は内から様子を伺う。
「久しぶりだね、ディラン。」
「は?何を…いや、この気配…まさか、兄さん…!?」
「うん。どうやら未だに勘違いしている様だけど、僕は死んでない。」
「え…?で、でも、姉さんが…。」
「それがそもそもの間違いなんだ。第一、僕を瀕死にまで追い込んだのは人間じゃない。」
「じゃ、じゃあ誰だって言うんだよ!?」
「…カリアとカーツだよ。僕は、その二人に罠に嵌められた。」
瞬間、空気が凍った…気がした。
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