悪魔の誓い

カネール

36

「最近使用人を雇うにもお金がかかって…。」
「あそこのお宅はオークションで買った奴隷を使用人として働かせてると言う話ですわよ？」
「まあ、奴隷を家に入れるなんて…汚らわしい。」
「あらでも、ハジュワー子爵はよく奴隷オークションに顔を出していると言う噂が…。」

この街には奴隷が横行しているらしい。綺麗な見た目の裏には、汚いものが常に蔓延ってるものなのだろうか。
遠い目になりながらも、次のターゲットである女性達に近付き、エアピックを使い素知らぬ顔をして通り過ぎる。

「聞きました？ハジュワー子爵がまた新たな愛玩奴隷を仕入れたと…。」
「まあ。そう言えば、今度のオークションには目玉商品が…。」
「どうやら見た目が綺麗な黒髪の男の子の様ですわね。何でも魔封じの首輪をしているとか…。」

その瞬間、ピタッと足が縫い付けられたように動かなくなった。
黒髪、男の子、魔封じの首輪。合致する符号が多すぎる。しかし、全く関係ない他人かもしれない。だが、何だか嫌な予感がする。

（…ディル。今のって。）
『…もしかしたらディランかもね。あいつ、何やってんだか…。』
「…どうかしましたか？」
「セイン…。今までの情報を掻い摘んで伝えるね。」

要約すると、
・ハジュワー子爵は奴隷オークションに度々顔を出している。
・次の奴隷オークションには目玉商品がいる。
・特徴的にその目玉商品はディランの可能性がある。
こんな所だろうか。

「ふむ…。なら、その奴隷オークションに赴く必要がありますね。」
「うん…。でも、お金の余裕なんて…。」
「作戦を立てましょう。落札しなくても、救う手立てがあるはずです。」
「…分かった。じゃあ、まずは開催日時と場所を調べなきゃね。」
「依頼所に戻ってみましょう。」
「…うん！」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

「奴隷オークション？うーん…まあ、いっか…。場所はこの街の西にある廃教会。日時は…三日後の深夜二時。」
「やけに詳しいですね。」
「…こういう仕事をしている以上、嫌でも内情には詳しくなるのよ。表にも、裏にもね。」
「…なるほど。」

苦虫を噛み潰したような顔をして答える受付の女性。セインは気まずそうに視線を逸らす。確かに今の聞き方は良くなかったかもしれない。

「あ、あの！先程に加えてオークションについても教えてくれてありがとうございました！」
「ええ。事情は知らないけど、頑張ってね。」

集めた情報を頭の中で整理しながら、廃教会を視察しつつ私達は宿に向かった。