悪魔の誓い

遠月 詩葉

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カネール

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「わあ!ここがカネール…!」

綺麗な噴水に整備された水路。水は透き通り、太陽光をキラキラと反射している。

「…あれ?」
「どうかしましたか?」
「うん…なんか、街の人達、元気なくない?」

何だか、どんよりしていると言うか、明らかに体調が悪そうに見える。それも一人や二人なら分かるが、目に映る人ほぼ全員なのだ。

「これは…。」
「うーん…。とりあえず、依頼所に行ってみようか…?あ、すみませーん!」

道を歩いていた人に声をかけ、依頼所の場所を教えてもらう。が、やはり元気がない。一体どうしたと言うのだろう。

「セイン…。」
「用心していた方が良さそうですね…。」

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

依頼所の扉を開けると、やはり皆一様に顔色が悪かった。ここまで来ると事態は深刻だ。私はすぐさま受付の女性に声をかける。

「あの、すみません。今日この街に来たばかりなんですけど、何で皆さんこんなに元気がないんですか?」
「ああ…。それがよく分からないのよね…。六日ほど前からチラホラと、何となく倦怠感を感じる方が居たんだけど、今では街のほとんどの人がこうなのよ。何か疫病じゃないかって、お医者様や学者さんに調査を依頼してるんだけど、なかなか良い報告がなくて…。」
「そうですか…。」

原因がわからないようでは対処のしようも無いだろう。心苦しいが、私達ではどうすることも出来ない。専門家でさえ解明できないことを一般人が分かるはずもない。

「それじゃあ、あの、人探しをしているんですが…。私と同じ髪色と目をした男の子で、銀色のレイピアを持ってるんですが…。」
「うーん…有り触れている特徴だから確証はないけど、それなら丁度六日前までここに出入りしてたわよ?」
「…え!?」

なんと、今まで全く手がかりがなかったのにここに来て大当たりを引いたらしい。

「その子、何処に行くとか言ってませんでしたか!?」
「いいえ、何も聞いてないわ。ただ…以前ハジュワー子爵家に入る所を見たって話を聞いたわね。」
「子爵家、ですか?」
「ええ。ハジュワー子爵なら、何か知ってるかもしれないわね。でも、そう簡単には会えないわよ?」
「…そうですよね…。でも、情報ありがとうございます!」
「ええ、頑張ってね。」

やっと、やっとだ。リュセの手がかりが目の前にぶら下がっている。貴族家相手だからと言って退く道理はない。

「セイン、ハジュワー子爵について調べてみよう。」
「そう言うと思いました。子爵について調べるなら、高級住宅街に行った方が良いかもしれませんね。あそこは噂好きの女性の巣窟ですから。」

巣窟って…。でもまあ、確かに。納得した私は、エアピックで会話を盗み聞くことにした。
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